お問い合わせ
サービス紹介 HRコンサルティング AX推進支援コンサルティング AIプロダクト 支援事例 お役立ち資料 コラム記事 セミナー情報 お問い合わせ
catch-img

製造業の生成AI活用|暗黙知の言語化を工場より先に間接部門で始める理由と手順

ベテランが定年で抜ける。その人の判断が、どこにも書かれていない。製造業でAIの相談が出てくる背景には、たいていこの事情があります。

技能継承にAIを使う取り組みは進んでいます。デンソーやJFEスチールでは、ベテラン技術者の暗黙知をデジタル化し、従来は年単位だった技術の習得期間が数か月に短縮したという報告が出ています(AI新聞)。

社内マニュアルを読ませる仕組みによって、経験の浅い作業者でも判断の精度を保てるようになった事例もあります(cloudpack)。

ただし、これらはすべて「読ませる文書がある」ことが前提です。暗黙知という言葉のとおり、その判断はまだ文書になっていません。ここが製造業でAI活用が止まる最大の理由です。

この記事では、製造業の生成AI活用を3領域で整理したうえで、文書が無い状態から言語化を始める手順と、工場より間接部門から着手するほうが早い理由を扱います。

製造業で生成AIが効く3領域

製造業の業務は幅が広く、まとめて議論すると進まない。必要なデータの種類で3つに分かれます。

領域 AIに任せる範囲 必要なもの 効果の出方
技能継承 マニュアルと過去事例からの回答・判断根拠の提示 文書化された判断基準 人の入れ替わりが多いほど効く
品質と保全 検査画像の判定補助・異常の予兆検出 蓄積されたセンサーと検査のデータ データが揃っていれば大きい
間接業務 文書作成・問い合わせ対応・集計 既存の社内文書 すぐ効く。日々効く

着手しやすい順は逆からです。間接業務は既存の文書がそのまま材料になり、今日から始められます。品質と保全はデータの蓄積が前提。技能継承は、材料そのものを作るところから始まります。

暗黙知の言語化が止まるのは工数ではなく難易度

「ベテランの判断を書き出してください」と依頼して、二週間たっても進んでいない。製造業に限らず、よくある光景です。

原因は本人のやる気でも、時間が無いことでもありません。書き出す作業そのものに、複数のスキルが同時に要ります。

業務プロセス分解スキル 作業を工程に分けて捉える力。どこからどこまでを一つの判断として切り出すかを決める。

ロジカルシンキングスキル 水準をそろえて情報を構造的に整理する力。粒度がばらついた記述は、後から使えません。

暗黙知の言語化スキル 無意識にやっていることを言葉にする力。熟練しているほど、手順は習慣になっていて、なぜそうするのかを意識せずに処理できます。

3つ目が最も難しい部分です。「音がいつもと違ったら止める」という判断を、どう違うのか、何と比べているのかまで下ろす。これは本人ひとりでは出てきません。

言語化はAIに聞き出させる

この3つのスキルを全員に求めるのは現実的でない。言語化そのものを、AIに支援させます。

リデザインワークのAX支援でも、業務の言語化ができずに止まっていた例があります。担当者に書き出させるのではなく、言語化をフォローするAIエージェントを用意したところ、進んでいなかった業務ルールの言語化が一気に進みました。そこから先の自動化も動き出しています。

やり方は単純。本人に文章を書かせるのではなく、AIに質問させて、本人は口頭で答える。

  • 「この工程で、やり直しになるのはどんなときですか」
  • 「そのとき、何を見て判断していますか」
  • 「新人がよく間違えるのはどこですか」

答えた内容をAIが整理し、抜けている観点を追加で聞き返す。書く作業がなくなり、答える作業だけが残ります。

このとき、完璧な文書を最初から作ろうとしないでください。着手が速い会社ほど、叩き台を出して直しながら進めます。逆に、完成度の高い手順書を先に作ろうとする会社ほど、着手そのものが遅れます。

手順と列の設計は業務棚卸しをAIで進めるにまとめました。

人事AXに取り組む業務を整理するフレームワーク
資料をダウンロード

工場より間接部門から着手するほうが早い

技能継承が本丸だと分かっていても、そこから始めると最初の成果まで時間がかかります。言語化の工程が入るためです。

先に間接部門で1件を通しておくほうが、結果として工場へ早く届きます。理由は3つあります。

1 既存の文書がそのまま材料になる。規程・社内通知・議事録・過去の報告書。言語化の工程を飛ばして始められます。

2 件数と時間を数えやすい。問い合わせ件数、書類の作成時間。効果を数字で示せるため、次の予算が通ります。

3 進め方の型が社内に残る。どこまで任せてどこから人が確認するか、という線引きの感覚が、実際にやった人に残ります。この型は工場でも同じです。

間接部門での1件は、練習ではなく本番です。そこで出た数字が、技能継承へ投資する根拠になります。

製造業の生成AI活用で任せない3つの判断

領域を広げるときに、線を引いておくべきものが3つあります。

品質の合否 検査の判定補助は有効ですが、出荷可否の最終判断は人が持ちます。判定の根拠を記録に残せる形にしておいてください。

安全に関わる停止の判断 異常の予兆を検出するところまでは任せられます。設備を止めるかどうかは人が決めます。

設計上の妥当性 過去の設計から候補を出すことはできますが、その条件で成立するかの確認は技術者が行います。

製造業で生成AIを広げるときの順番

間接部門で1件が動き、工場へ広げる段になると、扱うデータの範囲が変わります。図面、検査記録、取引先の仕様。いずれも社外に出せない情報です。

どのデータをAIに読ませてよいか、作った仕組みをどこまで公開してよいかを、着手の前に情報システム部門と決めておいてください。決まらないまま進めると、完成してから止められます。逆に相談せずに広げると、後から問題になります。

決めておくべき範囲は情シスのAI活用で扱っています。

なお、製造業の間接部門のAI活用は、リデザインワークのAX支援でも無料でご相談を承っています。

製造業の生成AI活用は言語化から始まる

技能継承にAIを使う事例は増えており、習得期間が年単位から数か月へ短縮したという報告も出ています。ただしその前提は、判断が文書になっていることです。

暗黙知が書き出されない理由は、時間でも意欲でもなく、書き出す作業自体に複数のスキルが要ることにあります。だからこそ、言語化そのものをAIに支援させるという発想が効きます。本人は答えるだけでよく、書く作業はなくなります。

最初の1件は、既存の文書が揃っている間接部門で通す。そこで出た数字と、任せる範囲の線引きの感覚を持って工場へ移るほうが、結果として早く着きます。

業務の切り出し方から見直す場合は、業務の標準化とはもあわせてお読みください。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

運営会社を見る ›