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総務のAI活用|問い合わせ・文書・申請の3領域と、なんでも屋から抜けるための順番

「総務は何をしている部門なのか、社内に説明できない」。月刊総務の調査では、約8割の総務担当者が自部門を社内にアピールできていないと答えています。なんでも屋や雑用係として扱われる、という声も同じ調査に並びます。

理由ははっきりしています。各部門からの問い合わせと事務依頼に追われ、手元の仕事を片付けるだけで一日が終わるためです。年に数回しか発生しない業務も特定の担当者が抱えており、引き継ぎもできない。

AIで最初に効くのは、この「追われている部分」です。ただし、ツールを入れれば問い合わせが減るわけではありません。順番を間違えると、導入したのに件数が変わらないという結果になります。

この記事では、総務業務のうちAIに任せられる3領域を整理したうえで、問い合わせを実際に減らすために先に行う棚卸しと、なんでも屋から抜けるために何を測るかを扱います。

総務のAI活用は3領域に分けて考える

総務の業務範囲は広く、まとめて議論すると進まない。AIに任せられるものは、性質で3つに分かれます。

領域 AIに任せる範囲 人が残す判断 効果の出方
社内問い合わせ 質問の分類・社内文書からの回答・証明書の発行 規程の解釈が割れる案件・苦情対応 件数が多いほど効く。日々効く
文書作成 通知文・規程改訂案・議事録・マニュアルの下書き 表現と公開範囲の決定 作成のたびに効く
申請と承認 記載漏れと添付漏れの検出・進捗の督促 差し戻しの判断・承認 申請が集中する時期に効く

着手する順番は問い合わせからです。件数が多く、かかっている時間を数えやすいためです。デジタル化したい業務を聞いた調査でも、社内問い合わせ対応が46.2%で1位に挙がっています(Safe AI)。

公開されている導入報告では、削減幅に幅があります。LINEヤフーは社内問い合わせ対応の自動化で年1,600時間の削減を公表しています(AINOW)。近畿大学は7万件の質問にAIが対応し、窓口への来訪が5〜6割減ったとしています(officebot)。

いずれも、問い合わせの中身が整理されたうえでの数字です。

社内問い合わせは棚卸しを先に行う

チャットボットや社内文書を読ませる仕組みを先に入れても、問い合わせは減りません。答えの元になる文書が社内に無ければ、AIは答えようがないためです。

DeNAが社内AIヘルプデスクで公表している正答率は80%です(DeNA)。裏を返せば、2割は答えられていない。この2割がどこから来るのかを先に把握します。

直近3か月の問い合わせを、3つに分けてください。

  1. 文書に答えがあるもの すぐ任せられます。ここが多いほど導入は早い。
  2. 文書はあるが古いもの 文書を直すのが先。古い答えを返す仕組みは、一度使われなくなると戻りません。
  3. 文書が無く、担当者の頭の中にあるもの 実際にはこれが最も多い。書き起こす作業が必要です。

3つ目を書き出す工程が、総務のAI活用で最も時間のかかる部分です。同時に、属人化を解消する工程そのものでもあります。年に数回しか発生しない業務が特定の担当者に残っているなら、ここで表に出します。

書き出しの手順と列の設計は、業務棚卸しとはにまとめました。

人事AXに取り組む業務を整理するフレームワーク
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証明書の発行は問い合わせと分けて考える

在職証明書や退職証明書の発行は、問い合わせの中でも性質が違う。判断がほとんど入らず、様式が決まっているためです。

依頼を受けて様式に転記し、内容を確認して渡す。この一連のうち、転記までは任せられる。人が残すのは最終確認だけです。

効果が見えやすいのはリードタイムです。申請から受け取りまで2日かかっていたものが当日になれば、社員から見た総務の印象は変わります。件数の削減より、この速さのほうが社内に伝わります。

文書作成は型のあるものから任せる

通知文・議事録・マニュアル・規程の改訂案は、いずれも下書きを任せられる。ただし、型が決まっているものから始めてください。

パナソニック コネクトは、全社で使うAIアシスタントにより資料作成・検索・翻訳で年44.8万時間を削減したと公表しています(初年度は18.6万時間。Admina)。約11,600人が使った規模での数字です。

総務の文書で型があるのは、次のものです。

  • 社内通知文 過去の通知をそのまま材料にできます。表現の統一も同時に進みます。
  • 議事録 録音から要点と決定事項、次のアクションまで出せます。
  • マニュアル 既存の手順書と実際の操作から下書きを作り、担当者が直します。

規程の改訂案は、型はあるが判断が重い部類です。法改正の影響範囲を特定させるところまでは任せられますが、改訂の可否と労使の手続きは人が決めます。

申請と承認は不備の検出から入る

申請業務でAIが効くのは、承認そのものではなく不備の検出。記載漏れ・添付漏れ・条件の不一致を出させて、申請者へ返す。

自治体の就学援助審査では、定型審査の自動化により処理が6割減り、残業が2,000時間減ったという報告があります(RPA×生成AI)。判断の基準が文書で決まっている業務ほど、この形は効きます。

逆に、基準が担当者の裁量で決まっている申請は先に基準を決める必要があります。ここを飛ばすと、AIが出す指摘と担当者の判断が食い違い、二重の確認が発生します。

総務のAI活用で人が残す3つの判断

3領域を任せていくと、どこまで委ねてよいかという問いが出てきます。総務で人に残るのは次の3つ。

規程の解釈 文書に書かれていない事態や、複数の規程が衝突する案件は人が判断します。AIは規程の本文を根拠に答えるため、書かれていないことには答えられません。

社員への伝え方 不利益変更の通知や、慶弔に関わる連絡は、内容が正しいだけでは足りません。

承認の責任 誰が承認したかの記録は、内部統制の根幹です。一次確認をAIが行っても、承認者は人の名前で残します。

社内にAIを広げるときは情シスに先に話を通す

総務が自部門でAIを使い始めると、次に出てくるのが「他部門にも広げたい」という話。ここで順番を間違えると、進んでいたものが止まります。

リデザインワークのAX支援では、プロジェクトに参加するメンバー自身がAIの使い方と業務の分解を学ぶため、メンバーだけで業務に使えるツールを作れるようになります。ここまでは狙いどおりです。

問題が起きるのは、その次の段。情シスがツール公開のチェックゲートを設けず、AIガバナンスを整理しないままだと、作った人がそのまま全社に公開してしまいます。情シス側からは「聞いていない」となり、調整にリソースが消えていきます。

さらに、慌てて作ったルールは複雑になりがちです。社員から見ると「難しいルールができて、勝手なAI活用を禁じられた」という受け取り方になる。そうなると業務改善を進める動機が弱まり、一度できたこの空気を戻すには、最初の導入より大きな労力がかかります。

総務がAIを広げる立場になるなら、着手の前に情シスへ一度話を通してください。扱うデータの範囲と、作ったものをどこまで広げる想定かを共有しておくだけで、後から止められる事態はほぼ避けられます。情シス側で決めておくべきルールは情シスのAI活用で扱っています。

総務がなんでも屋から抜けるために測る指標

冒頭の調査に戻ります。約8割の総務が自部門を社内に説明できていない。この状態は、測っている指標が「片付けた件数」だけであることと関係しています。

問い合わせを減らした、書類を早く出した。いずれも重要ですが、それだけでは「たくさん処理した部門」の説明にしかなりません。あわせて次を測ってください。

測る指標 意味 取り方
一次対応の自己解決率 社員が人に聞かずに済んだ割合 問い合わせ件数の推移と、AI経由の解決数
証明書のリードタイム 社員から見た速さ 申請から受け取りまでの日数
企画に使えた時間 総務が攻めに回れた量 月間の総務工数のうち、定型でない仕事の割合

3つ目が本命です。定型業務を圧縮して生まれた時間を何に使ったかを記録しておくと、次の投資を説明できます。制度の見直し、社内の働く環境の改善、全社のAI活用の推進。ここに時間を移せているかどうかが、なんでも屋から抜けられたかの判定になります。

なお、総務業務のAI活用は、リデザインワークのAX支援でも無料でご相談を承っています。

総務のAI活用は問い合わせの棚卸しから始まる

総務でAIが効くのは、問い合わせ・文書作成・申請の3領域です。最初に着手するのは問い合わせですが、仕組みを入れる前に、答えが社内文書のどこにあるのかを整理する工程が要ります。

この整理は、そのまま属人化の解消になります。担当者の頭の中にしかなかった手順が文書になれば、AIが答えられるだけでなく、引き継ぎもできるようになる。AI活用の準備として始めた作業が、総務の長年の課題を一緒に片付けます。

社内へ広げる段階でつまずいている場合は、生成AIを社内に浸透させる方法もあわせてお読みください。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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