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業務棚卸しをAIで進める|音声で喋って任せる業務を洗い出す手順

「業務を棚卸ししてください」と部下に頼んで、二週間たっても表がほとんど埋まっていなかった。そんな経験のある方は少なくないはずです。

本人にやる気がないわけではありません。日々の仕事を止めて、頭の中の手順を文章に起こす作業が、想像以上に重いのです。

業務効率化を目的にAIを導入する会社は増えています。中小企業がAIに期待することの第一位は業務効率化で、8割を超えるという調査もあります。ところが、その手前にある業務棚卸しが進まないために、どの仕事をAIに任せればいいのかが決められないまま止まってしまう。相談を受ける現場で、よく見かける詰まり方です。

この記事では、その棚卸しそのものをAIで進める方法を扱います。読み終えると、担当者に長い作業をお願いしなくても、一つの業務あたり数分の音声入力で、任せる範囲と人が確認する範囲まで見える棚卸しの進め方が分かります。

具体的な手順に加えて、そのまま貼り付けて使えるプロンプトと、AIが返してくる分解結果の記入例も載せました。手元の業務ですぐ試せます。

棚卸しが途中で止まる理由は「分解」の手間にある

まず、棚卸しが止まる原因を、担当者のやる気ではなく作業の中身から見ておきます。

業務棚卸しとは、日々の仕事を一つずつ書き出し、頻度や所要時間、判断の内容で整理して全体像を見えるようにする作業です。このうち「書き出す」までは、多くの人がなんとか進められます。止まるのは、その先の「分解」です。

たとえば「請求書のチェック」という一行を、AIに任せられる形にするには、何と何を照合し、どうなったら間違いで、どこからは人が確認するのかまで、言葉にしなければなりません。ここを飛ばした一覧は、眺めても「で、どれをAIに渡せるのか」が判断できません。

つまり棚卸しの本当の負荷は、業務の数を並べることではなく、一つひとつの業務を判断の手順まで言葉にすることにあります。ここをAIに肩代わりさせるのが、この記事の考え方です。

書き出すのをやめて音声で喋る

では、その分解の手間をどう軽くするか。答えは単純で、キーボードで書くのをやめて、音声で喋ることです。

頭の中にある手順は、文章にしようとすると固まります。文末をどうするか、順番はこれでいいかと気にした瞬間に、手が止まるからです。ところが、同じ内容を口に出すなら、後輩に仕事を教えるときの説明そのままで出てきます。

そこで、任せたい業務を一つ選び、その進め方を普段の言葉で喋ります。スマートフォンやパソコンの音声入力で構いません。「まず経理システムから請求データを開いて、注文書のこの列と金額を突き合わせて、違っていたら担当に差し戻して」という具合に、思いつくままで大丈夫です。

きれいにまとめる必要はありません。喋った雑多な内容を、AIが決まった観点に整理してくれます。その整理の枠組みが、次の5つの観点です。

AIに業務を分解させる5つの観点

喋った内容を渡すとき、AIに「この5つの観点で整理して」と指示します。この枠組みが、棚卸しをAIに任せる中心です。

  • 業務概要 そのチェックの目的(何のために、何を確かめているか)
  • 参照箇所 比べる元と先のファイル名やシート名、該当する行や列
  • 判断条件 どうなれば正常・異常(間違い)・要確認(人が見る)か、のルール
  • 判断(分岐) 条件に合うか合わないか、閾値を超えたときに何を決めるか
  • 後続処理 結果に応じた次の動き(修正・保留・通知・次工程へ渡す)

この5つは、照合やチェックといった定型業務を、AIに渡せる粒度まで分解するための最小の項目です。実際にAIが返してくる分解結果は、次のような形になります。

観点 記入例(請求書と注文書の金額照合)
業務概要 請求書の金額が注文書と一致しているかを確認し、支払処理に回してよいか判断する
参照箇所 請求書PDFの「合計金額」、注文管理表の「発注金額」列
判断条件 金額が一致すれば正常、不一致は異常、注文書が見つからない場合は要確認
判断(分岐) 一致は承認へ、不一致は差額を明記して差し戻し、要確認は担当者へ回す
後続処理 承認分は支払一覧へ転記、差し戻し分は取引先へ連絡、要確認分は保留リストへ

一つの業務を喋って、この表が一枚埋まる。これを任せたい業務の分だけ繰り返せば、棚卸しの中身が実装できる粒度でそろっていきます。

足りない観点はAIに聞き返させる

観点を一覧で渡すだけでは、喋り忘れた項目が空欄のまま残ります。そこで、プロンプトに一言足しておきます。5つの観点で埋まらないところがあれば、AIの側から質問して、と指示するのです。

こうしておくと、たとえば判断条件を言い忘れたときに、AIが「金額が一致しなかった場合、いくら以上の差なら差し戻しますか」と聞き返してくれます。担当者は、その問いに口頭で答えるだけでいい。

空欄を自分で見つけて埋める作業が、AIとの短い問答に変わります。うまく喋れなくても、対話しているうちに抜け漏れが埋まっていく。これが、白紙の表を前に固まってしまうのとの、いちばんの違いです。

ここまでをまとめたプロンプトが次です。任せたい業務を音声入力したあと、このまま貼り付けて使えます。

音声入力のテキストから各要素を抽出・整理する際は、以下の5つの観点で整理・分解を進めてください。

業務分解の5つの観点
• 業務概要: そのチェック作業の目的(何のために、何を検証しているのか)
• 参照箇所(ファイル・行名/列名): データの比較元・比較先となるファイル名やシート名、該当する項目(行タイトル・列名)
• 判断条件(ルール・ロジック): どのような条件を満たせば「正常」でどうなれば「異常(間違いあり)」、「要確認(人による確認が必要)」とするかの明確なロジック
• 判断(分岐): 条件の一致・不一致や、閾値を超えた際に行う意思決定の内容
• 後続処理: チェック結果に応じた次のアクション(修正、保留、通知、次行程へのデータ引き渡しなど)

なお、5観点で不足している観点があったら、聞き返して。

埋まった5観点は任せる範囲の設計図になる

5つの観点がそろうと、棚卸しの一覧が手に入るだけではありません。どこまでをAIが判断し、どこからを人が確認するかの線が、この5つの中に現れます。

判断条件がルールとして書ける部分は、AIに任せられます。金額の一致や日付の前後のように、条件で白黒がつくからです。一方、要確認に振り分けた分岐や、例外への対応は人が持つ。5観点を埋める作業は、この線引きを自然と済ませてくれます。

そしてこの5つの項目は、実際にAIで自動化するときに必要な情報と、そのまま重なります。何を見て(参照箇所)、どう判断し(判断条件)、分かれたら何をするか(判断・後続処理)。棚卸しで書き出したものが、次の実装の材料に直結するわけです。

棚卸しから、着手する業務の見極め、任せる範囲と人が残す範囲の線引きまで含めて整理したのが、資料『AX戦略を考えるときに抑えるべき6つの考え方』です。

AX戦略を考えるときに抑えるべき6つの考え方
資料をダウンロード

一つの業務から始める進め方

最後に、実際に着手する手順を並べます。全部署を一度にやろうとせず、一つの業務から始めるのが続けるコツです。

  1. 任せたい業務を一つ選ぶ。頻度が高く、判断がルールで書けそうな定型業務が向きます。
  2. その進め方を音声で喋る。後輩に教えるつもりで、思いつく順に話して構いません。
  3. 喋ったテキストに、上のプロンプトを付けてAIに渡す。
  4. AIの聞き返しに口頭で答え、5つの観点を埋める。
  5. 出てきた5観点を、業務ごとに一枚の表として残す。表の列の決め方は業務棚卸しフォーマットの列設計にまとめています。
  6. 次の業務で1から繰り返す。

一つの業務は、慣れれば数分で一枚になります。一週間で数件も回せば、任せられる業務とその範囲が、目に見える形でたまっていきます。

完璧な一覧を最初から目指す必要はありません。喋って叩き台を出させ、直しながら進める。この軽い回し方こそが、二週間動かなかった棚卸しを前に進めます。棚卸しの列の作り方や、任せる業務と人が残す業務の線引きは、業務の棚卸しから始めるAXでも具体的に扱っています。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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