従業員エンゲージメント向上の施策12選|効果が出る順番と選び方
サーベイの結果が出て、経営会議で「で、何をするんだ」と聞かれた。用意した資料には課題が5つ並んでいるが、どれから手をつけるかは書けていない。
施策の候補は、探せばいくらでも出てきます。リデザインワークのサーベイ活用支援でも、結果は出たが打ち手が決まらないという相談がもっとも多く来ます。1on1、社内表彰、社内報、キャリア面談、研修の拡充。問題は選択肢が少ないことではなく、どれが自社に効くのかを決める基準がないことです。
そこでこの記事では、まず施策を12に整理して費用と効果が出るまでの期間で並べ、そのうえでサーベイの結果から施策を選ぶ手順、着手する順番、効果の測り方までを扱います。
記事の後半には、自社のサーベイ結果を貼り付けるだけで施策の候補を優先順位つきで出させるプロンプトを載せました。会議に持ち込む案の下書きとしてお使いください。
従業員エンゲージメント向上の施策12選
まず全体を並べます。施策は目的別に、伝える・関係をつくる・報いる・育てる・整えるの5群に分かれます。この分類で見ると、自社がどの群に偏っているかが分かります。
| 群 | 施策 | 費用の目安 | 効果が出るまで |
|---|---|---|---|
| 伝える | 1. 経営方針の定期的な発信 | 低 | 3か月 |
| 伝える | 2. 事業計画と個人目標のつなぎ直し | 低 | 6か月 |
| 関係をつくる | 3. 1on1の制度化 | 中 | 6か月 |
| 関係をつくる | 4. 管理職のマネジメント研修 | 中 | 12か月 |
| 関係をつくる | 5. 部署をまたぐ交流の場づくり | 低 | 6か月 |
| 報いる | 6. 評価基準の明確化と説明 | 中 | 12か月 |
| 報いる | 7. 表彰や称賛の仕組み | 低 | 3か月 |
| 報いる | 8. 報酬制度の見直し | 高 | 12か月以上 |
| 育てる | 9. キャリア面談の定例化 | 低 | 6か月 |
| 育てる | 10. 学び直しと資格取得の支援 | 中 | 12か月 |
| 整える | 11. 業務量の平準化と削減 | 中 | 3か月 |
| 整える | 12. 働き方と環境の整備 | 高 | 6か月 |
費用は、低が既存の人員で回せるもの、中が制度設計や外部の支援を要するもの、高が予算措置を要するものです。
表を見て分かるとおり、効果が早く出る施策は費用が低いものに偏っています。予算がつくのを待たずに着手できる打ち手が、実は多く残っています。
予算がない年は、業務量の削減・称賛の仕組み・経営方針の発信の3つから始めてください。いずれも既存の人員で回せて、3か月で反応が出ます。
従業員エンゲージメント向上の施策を選ぶ3つの基準
12から自社の打ち手を選ぶとき、判断は次の3つで行います。施策そのものの良し悪しではなく、自社の課題との対応で選びます。
- サーベイで低かった項目と、その施策が直接つながっているか。上司との関係が低いのに社内報を増やしても、数字は動きません。
- 効果が出るまでの期間が、次のサーベイまでに収まるか。12か月かかる施策だけを選ぶと、次回も同じ点数が出て推進力を失います。
- その施策を回す人の工数が確保されているか。1on1の制度化は費用は中程度ですが、管理職の時間を毎月使います。
3番が見落とされがちです。制度をつくっても、回す人の時間が空いていなければ形だけが残ります。
サーベイの結果から施策を決める4つの手順
基準が決まったら、実際の手順です。
- 低い項目を、層で切り直す。全社平均で低い項目より、特定の層だけが極端に低い項目のほうが打ち手を決めやすくなります。
- その層の担当者に話を聞く。数字だけで施策を決めると外します。5人でよいので、心当たりがあるかを確認します。
- 施策を2つか3つに絞る。5つ以上を並行すると、どれも中途半端になり、効いた施策も分からなくなります。
- やらないことを明示する。今期は手をつけないと決めた課題を、理由とともに伝えます。
2番を飛ばした施策は、たいてい外れます。たとえば成長実感が低い層に研修を足したところ、実際の不満は「任される仕事が変わらないこと」だった、という食い違いはよく起きます。
低スコアの原因を層と条件で特定する方法は、サーベイの決定木分析で具体的に扱っています。
効果が出る施策の着手順
絞った施策を、どの順で始めるか。順番は、効果が出るまでの期間で決めます。
最初の3か月は、効果が早い施策から始めてください。業務量の削減、称賛の仕組み、経営方針の発信の3つは、いずれも3か月で反応が出ます。早い反応が出ると、次の施策への社内の協力が得やすくなります。
次の6か月で、1on1やキャリア面談のように関係をつくる施策を制度に乗せます。ここは管理職の時間を使うため、業務量の削減を先に済ませておくと進みます。
12か月以上かかる評価制度や報酬制度の見直しは、並行して設計を始めておきます。設計に時間がかかる施策ほど、着手だけは早めるという順番です。
順番を逆にすると、制度設計に半年を使ったところで現場の関心が切れます。
従業員エンゲージメント向上の効果を測る3つの指標
施策を打ったら、効いたかどうかを測ります。追う指標は3つで足ります。
- 対象とした設問のスコア。全項目の平均ではなく、狙いを定めた設問だけを見ます。
- その施策の実施率。1on1なら実施回数、研修なら受講率。打ち手が届いていないのか、届いたが効かないのかを切り分けるために要ります。
- 対象層の離職率。スコアより遅れて動きますが、経営に説明するときに必要な数字です。
1と2をセットで見るのが要点です。スコアが動かなかったとき、2が低ければ施策自体が実行されていないと分かります。2が高いのに1が動かないなら、施策の選び方が外れています。
なお、全社平均のスコアを目標にするのは避けてください。平均は動きにくいうえに、動いても何が効いたかが分かりません。
施策の候補をAIに出させるプロンプト
会議に持ち込む案の下書きは、AIに出させると早く進みます。手元の結果を貼り付けて使ってください。
あなたは組織開発の専門家です。以下は当社のエンゲージメントサーベイの結果です。
1. スコアが低い項目のうち、層による差が大きいものを3つ挙げてください。
2. それぞれについて、考えられる背景の仮説を2つずつ書いてください。
3. 各仮説に対する施策の候補を挙げ、費用の目安(低・中・高)と、効果が出るまでの期間の目安を添えてください。
4. 3か月で反応が出る施策と、12か月かかる施策に分けて並べてください。
5. 施策を選ぶ前に、現場の誰に何を確認すべきかを、質問の形で3つ挙げてください。
専門用語は使わず、人事担当者が経営会議でそのまま説明できる言葉で書いてください。
(ここにサーベイの集計結果を貼り付け)
5番を必ず入れてください。AIが出した施策をそのまま実行するのではなく、現場に当てて確かめるための質問を先に手に入れる、という使い方です。
施策は課題との対応で選ぶ
エンゲージメント向上の施策に、どの会社にも効く正解はありません。効くかどうかは、自社のどの層の何が低いかとの対応で決まります。
まずは低い項目を層で切り直し、その層に話を聞く。ここまでやれば、12の中から選ぶ2つか3つは自然と決まります。
サーベイの結果を読み解く手順はエンゲージメントサーベイの分析方法に、実施そのものが形だけになっている場合の直し方はエンゲージメントサーベイは意味ない?にまとめています。
分析から施策の検討、経営への報告までを実際のデータの読み解きつきで整理したのが、資料『組織課題が分かるサーベイの分析方法 6選』です。

資料ダウンロード ↗
次の会議までに、低い項目を1つだけ選び、その層の5人に話を聞いてみてください。施策の候補は、そこでほぼ決まります。





