
サーベイスコアの犯人捜しをやめる|低スコアの本当の原因を決定木で見つける方法
サーベイの結果が返ってきて、営業2課のスコアが全社平均を下回っていた。
会議では自然と「2課で何が起きているのか」という話になり、課長が説明を求められる。
「エース社員Aさんが抜けて、営業スキルの低いBさんが立ち上がっておらず、目標達成のためにチーム全体に無理をさせていたことが原因ですかね…」と弁明。
心当たりのある光景ではないでしょうか。
この流れには一つ問題があります。低い部署を名指ししても、原因は分からないままだということです。名指しされた側は身構え、翌年から回答は当たり障りのない中央値に寄っていきます。スコアは上がったように見えて、実態は見えなくなります。
犯人捜しと原因究明は、似ているようでまったく別の作業です。この記事では、平均点の比較がなぜ原因にたどり着けないのかを解説した上で、低スコアの理由を本当に説明している要因を見つける方法を紹介します。今日から実務で使える分析プロンプトもご紹介。
なぜ平均点の比較は犯人捜しで終わるのか
部署別の平均を並べて低い順に見る。この見方は、原因ではなく「結果が出た場所」を教えているだけです。営業2課が低いのは事実でも、なぜ低いのかは平均点のどこにも書かれていません。
しかも部署という切り口は、たまたま目に入りやすいから使われているに過ぎません。実際の原因は、勤続年数かもしれないし、直属の上司との関係かもしれないし、部署をまたいで働く一部の役割に集中しているのかもしれない。部署で切った瞬間に、それ以外の切り口が視界から消えます。
犯人捜しが起きるのは、担当者に悪意があるからではありません。手元にある道具が平均点の比較しかないから、目に見える単位で犯人を探すしかなくなるのです。道具を変えれば、話は原因に向かいます。
「どこが低いか」ではなく「何が低スコアを説明するか」
問いの立て方を変えます。「どの部署が低いか」ではなく、「回答者が低スコアをつけるとき、何が共通しているか」を問います。前者は場所を特定し、後者は条件を特定します。
たとえば低スコアの回答者を集めてみると、部署はばらばらでも「上司との1on1が月1回未満」という条件で7割が説明できる、といったことが起きます。この場合の打ち手は「2課をなんとかする」ではなく「1on1の頻度を全社で見直す」になります。名指しされる人はいなくなり、手を打つ場所がはっきりします。
この「低スコアを最もよく説明する条件」を見つける手法が、決定木分析という手法です。
決定木で「効く一手」を見つける
「決定木分析」という聞き馴染みがない名前が出てきましたが、ご安心ください。
決定木分析とは、データを条件で枝分かれさせて、結果を最もよく分ける条件から順に並べる手法です。
厳密には異なりますが簡単に表現すると、明らかにしたいもの(目的変数)に一番効く要因(説明変数)が、枝分かれ図で表現されたものが得られます。
統計の専門知識がなくても、「設問Aが〇〇で設問Bが△△の人は、スコアが低い傾向」と結果を把握しやすいのが特徴です。
やることは、低スコアかどうかを予測する形でデータを渡し、どの条件が効いているかを枝の上から読むだけです。
最近は生成AIが優秀なので、以前はデータアナリストやデータサイエンティストに高額の費用を払って分析依頼していましたが、最近ではAIに任せれば簡易的な結果は得られます。
分析プロンプト
あなたはHRデータアナリストです。添付のサーベイ回答データ(CSV)で、
「エンゲージメント総合スコア」を目的変数とする決定木を作成してください。
説明変数は、部署・役職・勤続年数・年代・各設問カテゴリのスコアを使ってください。
出力は次の形でお願いします。
1. 低スコアを最もよく説明する条件を、枝の上位から3つ、文章で説明する。
2. それぞれの条件に当てはまる人数と、低スコア率を添える。
3. この結果から考えられる打ち手の候補を、条件ごとに1つずつ挙げる。
専門用語は使わず、人事担当者が読める言葉で書いてください。
出力結果は下記画像のような形で、枝分かれした図として出てきます。

例えば、「成長実感」という設問が上位に出てきていたら、サーベイの総合スコアにインパクトがあるのはワークライフバランスや報酬への納得感とかよりも、従業員に成長実感を付与できるような環境なのかもしれません。
原因が分かった後にやること
条件が見えたら、打ち手はほぼ自動的に決まります。
例えば、成長実感・上司と率直に話せることが重要そうであれば、1on1の頻度や質はどうであるか実態を見直し、設計し直す。
例えば、特定の勤続年数帯(2〜3年目)という属性データが総合スコアに寄与するのであれば、その時期のフォローアップを手厚くする仕組みにする。
このように決定木分析の結果を使えば、犯人探しをしていたときと違い、誰かを責める必要がなく、構造的に問題解決を行える可能性が高くなります。
そして、その打ち手を経営に報告するときも、話が通りやすくなります。「2課が低いです」ではなく「1on1頻度が低スコアを説明していて、ここに手を打つと全社に効きます」と言えるからです。分析が、現場の対話と経営の意思決定の両方につながります。
犯人捜しをやめる決断は、実は担当者を守る決断でもあります。名指しの会議を主催する役から、原因と打ち手を提示する役に立場が変わるからです。
決定木は、組織の構造を読む6つの分析手法のうちの1つです。残りの5つ、全体比分析やヒートマップ分析、力学分析、クロス分析、パス解析までを、サーベイデータの読み解き実例付きでまとめたのが『組織課題が分かるサーベイの分析方法 6選』です。
この分析の手引書さえあれば、サーベイデータから経営陣にとって示唆深い内容を抽出して示すことができること間違いなしです。

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次のサーベイから、問いを変える
低いのはどこか、ではなく、何が低さを説明するか。問いを一つ変えるだけで、サーベイは犯人捜しの道具から原因究明の道具に変わります。
分析の全体像を先に押さえたい方は、単純集計から自由記述の要約までの流れをまとめたエンゲージメントサーベイの分析方法を先にご覧ください。
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