エンゲージメントサーベイの質問項目|設問例30とアクションにつながる12問の選び方
「今年のサーベイ、設問を見直しておいて」と言われて、去年の設問一覧を開いた。48問あり、どれも間違ってはいない。ただ、どれを削ってよいのかも分からない。
設問はいちど作ると増える一方。リデザインワークのサーベイ活用支援でも、設問一覧が40問を超えている会社は珍しくありません。経営から「理念の浸透も見たい」、現場から「上司との関係も聞いてほしい」と要望が来るたびに1問ずつ足され、削る理由は誰も持っていません。
ところが、設問を減らせば解決するかというと、そうでもありません。数を絞った会社の設問一覧を見ると、今度は「働きがいを感じていますか」のような広い問いが並びます。点数が低く出ても、何を直せばよいのかが分からない。
設問数の議論が毎年終わらないのは、増やす側にも減らす側にも、それぞれ別の失敗があるからです。
そこでこの記事では、まずカテゴリ別の設問例を一覧で示し、そのうえで増やしても減らしても外れる理由、他社平均との比較を前提にした固定設問をどう扱うか、残す設問を選ぶ基準、避けるべき書き方までを整理します。ツールを乗り換えなくても、今の設問のまま直せる内容です。
記事の後半には、手元の設問一覧を貼り付けるだけで残す設問と削る設問を仕分けさせるプロンプトを載せました。48問が12問になるまでの過程を、その場で確認できます。
エンゲージメントサーベイの質問項目は9カテゴリに分かれる
設問を見直す前に、全体の地割りから押さえます。エンゲージメントサーベイの設問は、おおむね次の9つに分類できます。
| カテゴリ | 何を測るか | 経営判断への効き方 |
|---|---|---|
| 理念・ビジョンへの共感 | 会社の方向性を理解し納得しているか | 方針の伝達経路の問題を切り分ける |
| 仕事のやりがい | 業務そのものに意味を感じているか | 配置と役割設計の見直しにつながる |
| 上司との関係 | 相談でき、支援を受けられているか | 管理職の育成投資の判断材料になる |
| 同僚との関係 | 協力して仕事を進められているか | チーム編成や連携の設計に効く |
| 評価への納得感 | 基準が明確で公正だと感じているか | 制度改定の優先順位を決める |
| 報酬・待遇への納得感 | 仕事の量と対価が釣り合っているか | 賃金原資の配分判断に使う |
| 成長とキャリア | 成長実感と将来像を持てているか | 育成制度と配置転換の設計に効く |
| 働く環境 | 集中できる環境と両立のしやすさ | 制度と設備への投資判断に使う |
| 心身の状態 | 業務量と回復のバランス | 労務リスクの早期発見につながる |
この9つを全部そろえる必要はない。今年の経営課題に関係しないカテゴリは、丸ごと外して構いません。
多くの会社の設問一覧が膨らんでいるのは、9つすべてを毎回聞いているからです。まずは、自社の設問がどのカテゴリに何問ずつ配分されているかを数えてみてください。
エンゲージメントサーベイの質問項目の設問例30
カテゴリごとの代表的な設問を挙げます。自社の設問と見比べ、聞き方の違いを確認する材料としてお使いください。
理念・ビジョンへの共感
- 会社が目指している方向に共感していますか
- 会社の方針が、自分の仕事とどうつながるか理解できていますか
- 経営陣の意思決定について、納得できる説明を受けていますか
仕事のやりがい
- いまの仕事に、やりがいを感じていますか
- 自分の強みを活かせていると感じますか
- 自分の仕事が、誰かの役に立っている実感がありますか
上司との関係
- 上司に業務上の相談をしやすいと感じますか
- 上司から、仕事に必要な支援や助言を受けられていますか
- 上司は、あなたの成果や取り組みを把握していると感じますか
同僚との関係
- 困ったときに、周囲へ相談できる関係がありますか
- チームで協力しながら仕事を進められていますか
- 部署をまたいだ連携が、必要なときに取れていますか
評価への納得感
- 自分に対する評価に納得していますか
- 評価の基準が明確だと感じますか
- 昇進や昇給の考え方について、十分な説明を受けていますか
報酬・待遇への納得感
- いまの報酬に納得していますか
- 業務量と待遇のバランスは適切だと感じますか
- 同じ仕事をしている人との間で、不公平を感じることはありませんか
成長とキャリア
- 仕事を通じて成長している実感がありますか
- 成長につながる仕事を任されていると感じますか
- この会社で、数年先のキャリアを描けていますか
働く環境
- 業務に集中できる環境が整っていますか
- 必要な設備やシステムが用意されていますか
- 休暇を取得しやすい雰囲気がありますか
心身の状態
- いまの業務量は適切だと感じますか
- 心身の疲れを回復できていますか
- 自分のペースで仕事を進める裁量がありますか
自由記述
- 仕事を進めるうえで困っていることがあれば教えてください
- 改善してほしいことがあれば、具体的に教えてください
- 上司やチームから、どのような支援があると働きやすくなりますか
自由記述は3問も不要。1問に絞ったほうが、書かれる分量は増えます。
エンゲージメントサーベイの質問項目は増やしても減らしても外れる
設問例を並べると、次に出てくるのは何問にするかという議論です。この議論が終わらないのは、数の決め方が難しいからではありません。増やす方向にも減らす方向にも、それぞれ別の失敗が待っているからです。理由は大きく二つ。
一つ目は、網羅しようとすると現場の負担が上がること。組織の課題を漏れなく見ようとすれば、9つのカテゴリすべてに複数の設問を置くことになります。1カテゴリ4問なら36問、これに総合設問と自由記述を足して40問前後です。
回答時間は1問15秒として10分を超えます。締切のある業務の合間に10分を割くのは重く、後半の設問ほど内容を読まずに真ん中を選ぶ回答が増えます。集計するとどのカテゴリも似た点数で並び、差の出ない一覧が残ります。
二つ目は、負担を抑えて設問を減らすと、設問が抽象的になること。10問で9カテゴリを覆おうとすると、1カテゴリあたり1問しか置けません。1問で領域全体を代表させるには、問いを広く書くしかありません。
その結果「働きがいを感じていますか」「会社の将来に期待できますか」といった設問が並びます。これらは点数が低く出ても、直す場所が決まりません。配置の問題なのか、上司との対話の量なのか、評価への納得なのか、設問からは特定できないためです。
つまり、設問数の議論は網羅性と現場負荷のどちらを取るかの話に見えて、実際にはどちらに寄せても打ち手に届かない構造になっています。逃げ道は数の側にはありません。
判断の基準は一つです。その設問の点数が低かったとき、誰が何を動かすのかが決まっているか。リデザインワークのサーベイ活用支援で設問一覧を見直すと、この基準で残るのは12問から15問に落ち着きます。
実施の頻度によって上限は変わります。目安は次のとおり。
| 実施の型 | 設問数の目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 年1〜2回の本調査 | 20〜30問 | 制度や配置の見直しにつなげたいとき |
| 四半期ごとの定点観測 | 10〜15問 | 打った施策の効き目を追いたいとき |
| 月次以上のパルスサーベイ | 5問以下 | 変化の兆しを早く拾いたいとき |
上限を超えて聞きたくなったときは、設問を足すのではなく、対象を絞った追加のヒアリングに回すほうが確実です。
他社平均との比較は質問項目を固定する理由にならない
設問を自社の判断基準で選ぼうとすると、必ず外部との比較の話が出てきます。ここは整理しておく価値があります。
サーベイを提供する側の多くは、他社平均と比べられることを価値の中心に置いています。比較するには全社共通の固定設問が要り、その設問で集めた回答が長年蓄積されているほど基準として信頼できる、という説明です。
この説明は筋が通っているように見えますが、打ち手を決める場面では働きません。理由は三つ。
平均との差は、施策ではなく背景で説明がついてしまいます。自社の成長実感が平均より0.3低いとして、その差は業種の労働時間の水準、平均年齢、直近の組織変更の有無で説明できることがほとんどです。差の理由が自社の施策の外にあるなら、施策を変えても差は縮みません。
固定設問は比較のために設計されており、自社の事業課題を直接聞く枠を奪います。どの会社にも当てはまる問いにするほど、問いは抽象的になります。来期に新規事業へ人を動かす会社と、既存事業の生産性を上げる会社では、確かめたいことが違います。共通設問では、その違いを聞けない。
データの蓄積量は、設問を固定した結果であって、示唆の質を保証しません。回答が100万件あっても、そこから出るのは自社が平均より上か下かという位置の情報までです。どの設問を動かせば総合スコアが上がるのかは、自社のデータの中の関係を見ないと分かりません。
では何を見るか。二つです。
- 自社の中の差。部署・階層・在籍年数で切ったときに、どこが極端に低いか。打ち手を当てる相手はここで決まります。
- 結果指標への効き方。どの設問が総合スコアや離職に効いているか。着手する順番はここで決まります。
外部との比較をすべてやめる必要はありません。経営に現在地を示す1枚としては有効です。ただし比較用の設問は数問にとどめ、残りは自社の判断に使う設問へ充てる。この配分が、リデザインワークのサーベイ活用支援で実際に機能している形です。
残す12問を選ぶ4つの基準
では、48問をどう削るか。判断は、設問そのものの良し悪しではなく、その設問が打ち手につながるかどうかで行います。次の4つを順に当てはめてください。
- その設問が低かったとき、来期の予算か制度が動くか。動かないなら、聞いても報告書の行が増えるだけです。
- その設問の答えを、他のデータで代替できないか。残業時間や有給取得率で分かることは、設問で聞く必要がありません。
- 同じことを別の言い方で聞いていないか。「上司に相談しやすいか」と「上司は話を聞いてくれるか」は、ほぼ同じ数字が出ます。
- 回答者が答えを持っているか。「経営戦略は妥当だと思うか」は、一般社員に判断材料がありません。
この4つで削ると、48問はおおむね12問から15問に落ち着きます。1と2で全体の3割、3で2割ほどが消えるためです。
残す12問は、総合設問1問、カテゴリごとの代表設問9問、自由記述1問、そして前回からの変化を見る継続設問1問という配分が使いやすい形です。
削った設問は、捨てずに別の一覧に残しておいてください。翌年に経営課題が変われば、また使う設問が出てきます。
避けるべきエンゲージメントサーベイの設問の書き方
設問数を絞ったら、次は書き方です。同じことを聞いていても、聞き方で回答は変わります。
| 避けたい書き方 | 直した書き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 上司に不満はありますか | 上司に業務上の相談をしやすいと感じますか | 不満を聞くと、答える側が身構える |
| あなたの部署の問題点は何ですか | 業務を進めるうえで改善してほしい点はありますか | 犯人捜しの質問になっている |
| 職場に満足していますか | 業務に集中できる環境が整っていますか | 対象が広すぎて打ち手に落ちない |
| なぜ成果が出せていないと思いますか | 目標達成に必要な支援を受けられていますか | 個人の責任を問う形になっている |
| 給与とやりがいに満足していますか | 報酬と、仕事のやりがいをそれぞれ分けて聞く | 2つのことを1問で聞いている |
| 働きがいを感じていますか | いまの担当業務は、自分の強みを活かせていると感じますか | 領域が広すぎて、低くても直す場所が決まらない |
| 会社の将来に期待できますか | 自部門の来期の方針を、自分の言葉で説明できますか | 期待の有無ではなく、伝わっているかを見る |
最後の行は見落とされがちです。1つの設問で2つのことを聞くと、どちらに対する回答なのか分からなくなります。「上司は適切に指示し、成長を支援していますか」のような設問は、指示と支援に分けてください。
尺度は5段階が扱いやすい形です。4段階にして中央を消す方法もありますが、無理に選ばせた回答は分析の精度を下げます。中央が多すぎる設問は、尺度ではなく設問文の問題であることがほとんどです。
設問の絞り込みをAIに任せるプロンプト
手元の設問一覧があれば、1回目の仕分けはAIに任せられます。次のプロンプトに、いまの設問をそのまま貼り付けてください。
あなたは組織サーベイの設計者です。以下は当社のエンゲージメントサーベイの設問一覧です。
1. 各設問を、次の9カテゴリのどれかに分類してください。
理念・ビジョンへの共感/仕事のやりがい/上司との関係/同僚との関係/評価への納得感/
報酬・待遇への納得感/成長とキャリア/働く環境/心身の状態
2. 内容が重複している設問の組を指摘し、どちらを残すべきか理由とともに書いてください。
3. 1つの設問で2つ以上のことを聞いている設問を指摘し、分割案を示してください。
4. 回答者が判断材料を持っていない可能性がある設問を指摘してください。
5. 以上を踏まえ、12問に絞る案を提示してください。カテゴリの偏りがない配分にしてください。
専門用語は使わず、人事担当者が読んで判断できる言葉で書いてください。
(ここに設問一覧を貼り付け)
出てきた案は、そのまま採用するものではありません。担当者が「これは残したい」と反応した設問にこそ、一覧には書かれていない社内の事情があります。その対話をするために案を出させる、という使い方をしてください。
設問を減らすときに必ず出てくる反対意見
設問を絞る案を持っていくと、社内から次の3つが返ってきます。あらかじめ答えを用意しておいてください。
去年と比較できなくなるのでは。残す12問のうち、前年と同じ設問を数問入れておけば、その設問では比較できます。全問を固定する必要はありません。
経営に報告する材料が減らないか。減りません。報告で使うのは総合設問と、その背景を説明する数問です。残りの36問は、報告書に載っても読まれていないのが実情です。
他社と比較できる標準設問を外してよいのか。全部は外しません。経営に現在地を示す用途で数問だけ残します。ただし前述のとおり、平均との差は業種や人員構成で説明がつくことが多く、そこから打ち手は出てきません。残りの枠は自社の中の差を見る設問に充ててください。
設問を絞ってから分析の設計に進む
設問を12問に絞ると、分析の設計も軽くなります。見るべき軸が減り、どの数字が動いたら何を判断するかを事前に決められるからです。
分析の進め方そのものは、エンゲージメントサーベイの分析方法で6ステップに整理しています。低スコアの原因を部署の名指しで終わらせない読み方は、サーベイの決定木分析で扱っています。
なお、自社の設問一覧を前提にした絞り込みについては、リデザインワークのサーベイ活用支援でも無料でご相談を承っています。
まずは今年の設問一覧を開き、4つの基準を上から当ててみてください。半分が消える会社は珍しくありません。







