バックオフィスの業務効率化|増員せずAIで省力化する方法と着手順の考え方
バックオフィスの効率化に取り組む会社は多く、ツールの導入も進んでいます。それでも人員が減らない。この差がどこから生まれるのかを見ていくと、手をつける順番より前の段階に行き当たります。
分かれ目は1つ。人員の上限を先に決めているかどうかです。
この記事では、上限を先に置く進め方と、着手する業務の選び方を整理します。読み終えると、効率化の企画を立てる際に、経営層と何を合意しておくべきかが分かります。
バックオフィスの効率化とは間接部門の処理量を減らすこと
範囲を先に決めます。バックオフィスとは、経理・人事・総務・法務・情報システムなど、売上を直接つくらない部門のこと。効率化の対象は、それらの部門が日々行っている処理です。
効率化には3つの段階があります。段階を混ぜて議論すると、話が進みません。
| 段階 | やること | 効果の出方 |
|---|---|---|
| 1 なくす | その処理自体をやめる | 最も大きい。合意に時間がかかる |
| 2 移す | 担当や組織を変える | 総量は変わらない |
| 3 速くする | 道具で処理時間を短くする | 確実だが上限がある |
多くの企画は3から始まります。道具の導入は決裁が通りやすく、効果も測りやすい。ただし3だけでは、削減できる時間に上限があります。
1の「なくす」が最も効きますが、やめる判断には権限が要ります。だからこそ、経営層との合意が先に要る。
増員しない前提を置くと議論の中身が変わる
効率化が進む会社に共通するのは、目標の置き方です。
リデザインワークのAX支援で、ある医療機器メーカーの経営層から次のように聞いています。バックオフィスの人員に上限を設け、退職者を補充しなくても回る体制を目標にしている。売上が増えても人員を増やさない前提で、まず事務業務を自動化し、次に営業業務の効率化へ進む順序を取っていました。
この設定には2つの効き目があります。
1つ目は、やめる判断ができるようになること。人員が増やせないと決まっていれば、処理を減らすしかありません。「この帳票は本当に要るのか」という議論が、現場から出てきます。上限がないと、同じ議論は「忙しいので人を増やしてほしい」で終わります。
2つ目は、効果の測り方が定まること。削減した時間を何に使うかを決めなくても、人員が増えていないこと自体が成果になります。時間削減を目標にすると、削減した時間を何に充てたのかを毎回説明することになります。
退職者を補充しない形は、解雇を伴いません。この点は現場への説明で重要です。今いる人の職を減らす話ではなく、増やさないという話。順序として、この前提を先に共有します。
着手する業務は量と判断の単純さで決める
前提が決まったら、どの業務から手をつけるか。基準は2つで足ります。
- 量が多いか 月あたりの件数と、1件あたりの処理時間
- 判断が単純か 条件が決まっていて、例外が少ないか
2軸で並べると、着手の順番が決まります。
| 判断が単純 | 判断が複雑 | |
|---|---|---|
| 量が多い | 最優先。請求書の処理・勤怠の確認・定型の問い合わせ | 2番目。判断部分を人が持ち、前後を自動化する |
| 量が少ない | 3番目。まとめて片づく | 手をつけない。労力に見合わない |
右下に時間を使わないことが要点です。珍しくて難しい業務ほど現場の不満は大きいのですが、全体の処理量に占める割合は小さい。
部門ごとの着手先は、次が目安です。
- 経理 請求書の処理・仕訳・月次決算の資料作成。詳しくは経理業務のAI活用
- 人事 問い合わせ対応・入社手続き・勤怠の確認。人事への問い合わせを減らすで扱っています
- 総務 証明書の発行・文書作成・申請の受付。総務のAI活用にまとめました
- 情報システム アカウント管理・ヘルプデスク。情シスのAI活用で整理しています
業務を工程に分けないと自動化の対象が決まらない
「請求書の処理を自動化する」という粒度では、まだ着手できません。業務を工程に分けて、工程ごとに任せるかどうかを決めます。
請求書の処理を例にすると、次のように分かれます。
| 工程 | 中身 | 任せられるか |
|---|---|---|
| 受領 | メールや郵送で受け取る | 任せられる |
| 読み取り | 金額・日付・取引先を取り出す | 任せられる |
| 照合 | 発注の内容と突き合わせる | 条件が決まっていれば任せられる |
| 例外の判断 | 金額が合わない場合の扱いを決める | 人が持つ |
| 承認 | 支払いを決裁する | 人が持つ |
照合の工程で分かれます。「何円以上の差額なら差し戻すか」が決まっていれば任せられ、決まっていなければ人が見ることになる。
つまり、自動化の可否は道具の性能ではなく、自社のルールが言葉になっているかどうかで決まります。工程に分ける具体的な手順は業務棚卸しのやり方でまとめています。
効果を測る3つの指標
企画を通す段階で、測る指標を決めておく。3つで足ります。
- 部門の人員数 増員しない前提を置いた場合、これが主指標になる
- 対象業務の処理件数と所要時間 着手前に数えておく。後から遡って数えられない
- 例外として人が判断した件数 自動化した工程のうち、人に戻った割合
3番が運用の健全性を示します。戻る割合が高いなら、任せる条件の設定が粗い。ルールを直せば下がります。
2番は着手前に数えることが条件です。多くの企画で抜けるのがこれで、後から効果を説明できなくなります。
費用と回収の考え方までを含めて整理したのが、資料『DXやAIによる業務効率化の費用とROI』です。
バックオフィスの効率化が進むかどうかは、道具の選定より前の段階で決まります。人員の上限を先に置くと、やめる判断ができるようになり、効果の測り方も定まる。そのうえで量と判断の単純さで着手先を選び、工程に分けて任せる範囲を決める。
まず、経営層と「増やさない」を合意するところからです。この一文があるかどうかで、現場から出てくる案が変わります。






