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360度評価とは|意味ないと言われる3つの理由と、点数に頼らない運用方法を解説

「360度評価を入れたが、当たり障りのないコメントしか集まらない」。導入から1年か2年たった会社で、この状態になることがあります。

検索すると「360度評価 意味ない」「時代遅れ」「廃止」といった語が並びます。実際に廃止した会社もある。ただし、うまくいかない原因の大半は仕組みの設計にあり、手法そのものの限界ではありません。

この記事では、機能しなくなる理由を3つに分け、点数を使わない運用の設計を示します。読み終えると、導入を検討する際や、形だけになった制度を立て直す際に、何を変えるべきかが分かります。

360度評価とは上司以外からも評価を集める仕組み

言葉の範囲をそろえます。360度評価とは、上司だけでなく、同僚・部下・他部署など複数の立場から評価やフィードバックを集める仕組みを指します。多面評価とも呼ばれます。

目的は2つに分かれ、どちらを選ぶかで設計が変わります。

処遇に使う場合 育成に使う場合
結果の用途 昇格・賞与の判断材料 本人へのフィードバック
回答者への影響 同僚の処遇を左右する 影響しない
集まる回答 当たり障りのない内容に寄る 具体が出やすい
匿名性 強く求められる 強くは求められない
本人の受け止め 査定として構える 気づきとして受け取りやすい

混ぜて運用している会社が最も多く、最も機能しません。育成目的と説明しながら、結果を昇格の参考にする。回答者はそれを察知し、当たり障りのない回答に寄ります。

意味ないと言われる3つの理由

批判の中身を分解すると、3つに整理できる。

理由1 処遇に反映した瞬間に本音が出なくなる

1つ目が最大の原因。同僚の賞与や昇格に影響すると分かれば、厳しい指摘は書けません。書いた内容が本人に伝われば、日々の関係に影響します。

匿名にすれば解決するかというと、そうはならない。少人数のチームでは、書きぶりから誰の回答か推測できます。回答者もそれを分かっているため、結局は無難な内容に寄ります。

理由2 点数に意味を持たせすぎる

2つ目が数値の扱い。平均点を出して並べると、比較できるように見えます。ただし回答者の構成が人によって違うため、点数は本来比べられません。

部下が10人いる管理職と、2人の管理職。他部署との接点が多い職種と、少ない職種。母数も回答者の関係性も違う数字を並べて、「Aさんは3.8、Bさんは3.5」と評価するのは無理があります。

理由3 結果を渡して終わりにしている

3つ目が運用。集計結果を本人に渡すところまでは行われますが、そこから先が設計されていないことが多い。

リデザインワークの人事制度設計支援で、ある商社の人事担当者から次のように聞いています。越境学習や社外見学で得た気づきは、そのままでは社内に展開されない。ワークシート・上司との対話セッション・ファシリテーターの介入といった補助の仕組みがないと、個人の体験で終わる。

360度フィードバックも同じ構造です。同社では、点数ではなく自己認識と部下の評価のギャップを、問いの設計に使うという方針を採っていました。

点数でなくギャップを使う

理由2と理由3への対処は、ここに集約される。同じデータを、比較ではなく本人の気づきに使う。

具体的には、次の2つを並べて本人に返します。

  1. 本人が自分をどう評価したか(自己評価)
  2. 周囲がどう評価したか(他者評価の分布)

見るのは差の大きい項目です。

状態 差の向き 本人に渡す問い
自己評価が高く、周囲が低い 過大評価 その行動は、相手にどう見えていたと思うか
自己評価が低く、周囲が高い 過小評価 自分では足りないと感じている点を、周囲はどう補っているか
差が小さい 一致 一致している強みを、次の役割でどう使うか

1行目が最も価値があります。自分では十分できていると思っている領域で、周囲の見方が違う。この差は、上司からの指摘では伝わりにくいものです。

差の絶対値を点数として扱わないことが条件です。差そのものは良し悪しではなく、対話の材料として渡します。

結果を対話に変える3点セット

ギャップを渡すだけでは、理由3の状態に戻ります。前出の商社の事例にあった補助の仕組みを、360度評価に当てはめると3つです。

  1. 記入用のワークシート 結果を見て何に気づいたか、次に何を試すかを本人が書く
  2. 上司との対話の場 結果そのものではなく、ワークシートの内容について話す
  3. 進行役 最初の数回は人事または外部の進行役が入る

3番を省くと、対話が評価面談になります。上司が結果を見て指導する形になると、本人は防御に回る。進行役の役割は、上司が結果を判定に使わないようにすることです。

対話の設計は、評価のフィードバック面談と考え方が共通しています。人事考課のやり方でも扱っています。

導入して効く組織と副作用が出る組織

すべての会社に向くわけではない。判断の材料を挙げます。

効きやすい 副作用が出やすい
組織の規模 1部署10人以上で、回答者を確保できる 少人数で回答者が特定される
評価との関係 育成に限定し、処遇と切り離している 昇格の参考にすると明示または黙示している
上司との関係 1on1が定着している 面談が年2回の評価時のみ
過去の経緯 初めて導入する 一度形骸化して再開する

4行目が難所です。一度形だけになった制度を再開すると、現場は「また同じことをやる」と受け取ります。再開する場合は、前回何が問題だったかを明示してから始めます。

管理職の側から見た人の評価についてはピープルマネジメントでも整理しています。

廃止する前に確認する4項目

「意味ない」という声が出ている場合、廃止の前に確認する。

  1. 処遇に使っていないか。参考程度でも、現場が知っていれば回答は変わる
  2. 点数を並べて比較していないか。母数の違う数字を比べていないか
  3. 結果を渡した後の設計があるか。ワークシート・対話・進行役の3つ
  4. 回答者が特定されない人数か。1人あたり5人以上の回答を確保できているか

4つとも満たしていて機能しないなら、手法が組織に合っていません。その場合は廃止が妥当です。1つでも欠けているなら、直す余地があります。

評価制度の全体設計と、360度評価をどこに位置づけるかを整理したのが、資料『AI時代の人事評価制度改定』です。

AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか
お役立ち資料|人事評価制度

AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか

制度改定に費用と半年をかけたのに、出てきたのはどこかで見たことのある制度だった。AIに何を任せ、どこから人が引き取るかを決めないまま渡しているからです。人事責任者が押さえるべきAIに任せられる範囲と、浮いた原資の置き場所まで解説します。

資料をダウンロード

立て直すか廃止するかは、いまの運用が4項目のどこを外しているかで判断できます。

現在の設問と結果の使い方をお聞きして、直す箇所と順番まで一緒に決めます。

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360度評価が機能しなくなるのは、手法が古いからではありません。処遇に使い、点数で比べ、渡して終わりにする。この3つが重なると、当たり障りのない回答しか集まらなくなります。

点数ではなく自己認識と周囲の見方の差を渡し、対話の材料にする。この形にすると、上司からは伝えにくかった気づきが本人に届きます。

まず、いまの運用が処遇と切り離されているかを確認するところからです。切り離されていないなら、他の3つを直しても回答の質は変わりません。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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