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シャドーAI対策|7割が無防備な現状と止めずに安全にする設計

社内で生成AIの利用を認めていない会社の担当者から、「たぶん、何人かは自分のアカウントで使っています」という話を聞くことがあります。禁止したのに使われている、という状態です。

この、会社が把握していないまま業務でAIが使われている状態をシャドーAIと呼びます。そして、これは一部の会社の問題ではありません。

ガートナージャパンが2026年6月に国内企業へ行った調査では、シャドーAIについて「把握し、有効な対策を取れている」と答えた企業は24%にとどまりました。把握できていないが43%、把握しているが対策できていないが30%で、合わせて73%が無防備な状態にあります出典:日経クロステック)。

そこでこの記事では、禁止しても使われる理由を構造から整理し、起きるリスクの中身、止めずに安全にするための5つの設計、そして発覚したときの初動までを扱います。

記事の後半には、自社の状態を確かめる12項目のチェックリストを載せました。情報システム部門と人事で分担する形にしてあるので、そのまま次の打ち合わせに持ち込めます。

シャドーAIとは会社が把握していないAI利用のこと

シャドーAIとは、会社が審査も承認もしていないAIサービスを、従業員が業務目的で使っている状態を指します。個人で契約した対話型AIに業務の文章を貼り付ける行為が、もっとも多い形です。

以前から使われてきたシャドーITと似ていますが、性質が2つ違います。

一つは、持ち込みの敷居が低いことです。無料でアカウントを作れて、ブラウザで開くだけで使えます。ソフトをインストールする必要がないため、資産管理の仕組みでは見つかりません。

もう一つは、入力した情報が外に出ることです。ファイルを社外へ送るのではなく、本文を貼り付けるという形で情報が渡ります。送信ログには残らず、本人にも情報を渡したという自覚が薄いのが特徴です。

生成AIを禁止しても使われる理由

対策として最初に出てくるのは、全面禁止です。ところが、禁止は多くの場合うまくいきません。理由は3つあります。

  1. 業務の締切は変わらないから。手元の仕事が楽になる道具があるのに使うなと言われても、締切が延びるわけではありません。
  2. 個人の端末で使えてしまうから。会社の端末で塞いでも、私物のスマートフォンで同じことができます。
  3. 禁止の理由が伝わっていないから。何が危険なのかを説明せずに禁止すると、過剰な規制だと受け取られます。

そして禁止の副作用は、利用が止まることではなく、見えなくなることです。使っている本人が申告しなくなるため、どの業務でどんな情報が渡っているかを会社が知る手段がなくなります。

問題が起きたときに把握が遅れるのは、この構造によるものです。禁止した会社ほど発覚が遅れる、という関係になります。

シャドーAIで起きる5つのリスク

何が起きるのかを具体的に押さえます。リスクは、情報・法務・品質・監査・人材の5つに分かれます。

リスク 起きること 実務で表れる形
情報漏洩 個人情報や未公開情報が外部に渡る 学習に使われる設定のまま顧客名を貼り付ける
法令や契約への抵触 秘密保持契約や個人情報の取扱いに反する 顧客から預かったデータを外部サービスに入力する
出力品質の低下 誤った内容がそのまま社外に出る 事実確認をせずに提案資料へ転記する
監査対応の困難 誰が何に使ったかを説明できない 監査で利用実態を問われて答えられない
ノウハウの分散 良い使い方が個人の中に閉じる 担当者が異動すると業務が元に戻る

上の3つは事故のリスクですが、下の2つは事故が起きなくても確実に損失になっています。とくに5番目は、シャドーAIを放置している間ずっと発生し続けます。

人事の領域では、リスクの重みが変わります。採用の合否や評価に関わる情報は、外れたときに個人の不利益へ直結するためです。この線引きは生成AI導入ガイドラインの作り方で青・黄・赤の仕分け表として整理しています。

シャドーAIを止めずに安全にする5つの設計

対策の方向は、使わせないことではなく、見える形で使ってもらうことです。次の5つを順に整えます。

  1. 会社として使える道具を用意する。受け皿がないまま禁止しても、個人の契約に流れるだけです。まず1つ、法人契約の生成AIを配ります。
  2. 入れてよい情報の線を引く。禁止する情報を具体的に挙げます。個人情報、未公開の経営情報、顧客から預かったデータの3つが最低限です。
  3. 学習に使われない設定を確認する。法人向けの契約では、入力内容を学習に使わない扱いが既定になっていることが多くあります。設定の名称は製品ごとに違うので、実際の画面で確認します。
  4. 申告と相談の窓口を1つ決める。新しい使い方を試したいときに、どこへ相談すればよいかを明示します。窓口が複数あると誰も使いません。
  5. 使った記録が残る形にする。簡単な申請フォームや一覧で足ります。誰が何に使ったかを後から振り返れる状態にします。

この5つのうち、1番を飛ばして2番から始める会社が多くあります。ルールだけが先に来ると、現場は「使うなということだ」と受け取り、結局は見えないところで使われます。

罰則を整えるのは、この5つが回り始めてからです。報告しやすい仕組みを先に置く理由は、生成AI導入ガイドラインの作り方で詳しく扱っています。

シャドーAIが発覚したときの初動

実際に、入れてはいけない情報が入力されていたと分かったとき、何をするか。順番を決めておくと対応が早くなります。

  1. 何を入力したかを本人から聞き取る。責める場ではないと先に伝えます。ここで正確に把握できるかどうかで、その後の対応が変わります。
  2. 利用したサービスの契約種別を確認する。法人契約か個人契約か。学習に使われる設定だったかどうかを確認します。
  3. 会話履歴の削除を申請する。サービスによって手順が違います。事前に調べておくと、この工程が半日短縮できます。
  4. 影響範囲を判定する。個人情報が含まれるか、顧客との契約に触れるかで、報告義務の有無が変わります。
  5. 同じことが起きない設計に直す。個人の注意ではなく、道具と手順の側を直します。

3番は、起きてから調べ始めると必ず遅れます。使っているサービスの削除申請の手順は、平時のうちに一覧にしておいてください。

シャドーAI対策のチェックリスト

情報システム部門と人事で分担して確認してください。「いいえ」がついた場所が、次に手をつける場所です。

道具と設定

  • 会社として使える生成AIを、少なくとも1つ用意しているか
  • その契約で、入力内容が学習に使われない設定になっているか
  • 誰がその設定を確認したか、記録が残っているか
  • 会話履歴の削除申請の手順を、平時に調べてあるか

ルールと運用

  • 入れてはいけない情報を、具体的な項目で挙げているか
  • 外れたときの影響が大きい用途(採用の合否・評価・懲戒)を別扱いにしているか
  • 新しい使い方の相談先を1つに決めているか
  • 誰が何に使ったかを残す仕組みがあるか

人と伝え方

  • 禁止する理由を、危険の中身とともに説明しているか
  • 速やかに申告した場合の扱いを、あらかじめ明記しているか
  • 良い使い方を社内で共有する場があるか
  • 私物の端末での利用について、方針を伝えているか

4つ以上に「いいえ」がつくなら、まだ禁止の段階にいます。上から順に、道具と設定から手をつけてください。

対策を進めるときに必ず出る3つの論点

私物の端末での利用まで管理できるか。技術的に完全に防ぐことは困難です。だからこそ、会社の道具を使うほうが便利な状態をつくることが実質的な対策になります。

全面禁止のままでよい会社はあるか。顧客との契約で外部サービスの利用が禁じられている場合など、実際にあります。その場合も、なぜ禁止なのかの説明と、代わりに使える手段の提示はセットで行ってください。

ルールを作ったのに守られない場合は。守られないルールは、たいてい業務の実態と合っていません。何をしようとして違反が起きたのかを聞き、その業務を安全にできる手順に直してください。

シャドーAI対策は見えるようにすることから始まる

シャドーAIは、従業員の規律の問題ではなく、会社が受け皿を用意していないことから生じます。禁止すれば利用は止まらず、把握だけができなくなります。

対策できている企業が24%という数字は、裏を返せば、ここを整えるだけで多くの会社より前に出られるということです。

使ってよい範囲を決めたあと、実際にどの業務から任せていくかは業務の棚卸しから始めるAXで、導入から定着までの全体像は生成AI導入の進め方で扱っています。

利用範囲や承認・記録の設計を、AI活用の全体像の中に位置づけて整理したのが、資料『AX戦略を考えるときに抑えるべき6つの考え方』です。

AX戦略を考えるときに抑えるべき6つの考え方
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まずは、自社で使える生成AIが1つあるかどうかを確かめてください。そこが空欄なら、ルールを作る前にやることがあります。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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