サーベイのクロス集計とは|部署・役職など属性別で最初に分析する4軸
「全社平均は3.4です」。サーベイの結果報告で最初に出てくるのが、この1行。そして多くの場合、ここから先に進みません。
数字は出ています。前年との比較もできている。それでも、誰に何をするのかが決まらない。全社平均は、全社を対象にした施策にしか結びつかないためです。
打ち手を決めるには、どこが低いのかを取り出す必要があります。そのための集計がクロス集計です。
この記事では、クロス集計とは何かを単純集計との違いから整理し、最初に分析する4つの軸と、表計算ソフトだけで進める5ステップ、そして外注を検討する前に知っておきたい費用と期間の話まで扱います。
分析の全体像から確認したい場合は、エンゲージメントサーベイの分析方法で、集計から打ち手までの6ステップを扱っています。
記事の後半には、分析した表を貼り付けて解釈を出すAIプロンプトを載せました。属性別の表を貼り付ければ、差の大きい組み合わせと解釈の候補が出てくるので、報告資料の下書きとしてお使いください。
クロス集計とは部署や役職ごとに分けて差を出す集計
クロス集計とは、回答を部署や役職などの属性で分け、属性ごとのスコアを並べて差を見る集計方法です。全社を1つの数字にまとめる単純集計に対し、集団を分けたうえで比べます。
違いは次のとおりです。
| 単純集計 | クロス集計 | |
|---|---|---|
| 出るもの | 設問ごとの全社平均と分布 | 属性ごとの平均と、属性間の差 |
| 分かること | 全社として高い設問と低い設問 | どの集団で低いのか |
| つながる打ち手 | 全社施策 | 対象を絞った施策 |
| 集計の手間 | 数分 | 軸の数だけ増える |
単純集計が不要になるわけではありません。まず全社で低い設問を押さえ、その設問だけをクロス集計にかける。この順で進めると、軸の数が増えすぎずに済みます。
平均点では差が出ない理由
全社平均が動かないのに現場の実感が悪い、ということはよく起きます。原因は平均の性質にある。
高い集団と低い集団が同じ人数だけいると、平均は真ん中に落ち着きます。全社平均3.4は、全員が3.4だった場合と、半分が4.4で半分が2.4だった場合を区別しません。
前年比も同じです。ある部署が0.5下がり、別の部署が0.5上がれば、全社の数字は動かない。動いていないのではなく、動いた分が打ち消し合っているだけ。
この打ち消しを外すのがクロス集計の役割です。
最初に分析する4軸は部署・階層・勤続年数・雇用区分
軸は無限に作れます。ただし増やすほど1セルあたりの人数が減り、少人数の回答に引きずられる。最初は4つに絞ります。
| 軸 | 見えるもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 部署 | どの組織で低いか | 5名未満のセルは個人が特定されうる |
| 階層 | 担当者と管理職のどちらに負荷が寄っているか | 役職名でなく人数の多い層で分ける |
| 勤続年数 | 入社直後と中堅のどちらで下がるか | 1年未満・1から3年・3年以上の3区分で足りる |
| 雇用区分 | 正社員以外が対象に入っているか | そもそも配信されていない場合がある |
このうち階層は見落とされがちです。担当者層が低いと想定して集計すると、実際には管理職層が最も低いという結果がよく出ます。
雇用区分も先に確認します。リデザインワークのサーベイ活用支援でお会いしたある1,000名超の企業では、従業員の9割が契約社員と派遣社員で、全社調査の対象に入っていませんでした。この状態では、全社平均という言葉が1割の集団の平均を指すことになる。
属性を掛け合わせた人数は5名を下限にする
属性を掛け合わせると、1セルの人数はすぐに減ります。部署と階層を掛けると、多くのセルが数名になる。
5名を下回るセルは、個人が特定されうるため公表しません。集計はしてよいが、部門長への共有までにとどめます。これは回答率を守るうえでも重要で、特定されると次回から本音が出なくなる。
表計算だけで進める5ステップ
専用のツールは要りません。回答のCSVがあれば、表計算ソフトのピボットテーブルで足ります。
- 回答データに属性列を結合する 人事システムから部署・階層・勤続年数・雇用区分を持ってきて、回答IDで突き合わせる
- 全社の単純集計で低い設問を3つ選ぶ いきなり全設問を切らない。低い順に3つで足りる
- 選んだ設問を4軸でクロスする ピボットテーブルの行に属性、値に平均を置く
- 差の大きい組み合わせを抜き出す 全社平均との差が0.4以上のセルに印を付ける。0.1や0.2の差は誤差の範囲として扱う
- 人数を併記する 差の大きいセルは人数が少ないことが多い。平均と人数を必ずセットで出す
4番の0.4という基準は、5段階の尺度を使っている場合の目安です。4段階なら0.3、7段階なら0.6で読み替えます。
差が出た部署を名指しすると次回の回答率が下がる
差が出た部署を名指しして終わる報告は、次回の回答率を確実に下げます。低いという事実は、その部署の管理職を評価する材料ではない。
低いスコアを部署の責任にせず構造として読む手順は、サーベイの決定木分析で扱っています。
外注すると費用とリードタイムが伸びる
ここまでの作業を外部に委託する選択肢もあります。ただし、実務上の制約が2つある。
リデザインワークのサーベイ活用支援でご相談をいただく中で多いのが、分析を外注すると費用が高く、結果が返ってくるまでの期間も長いという指摘です。現場が求めているのは、回答してから間を置かずに返ってくる結果。数か月前のデータで議論しても、状況が変わっています。
一方で自社でやろうとすると、データ分析とレポート作成の技術が必要になる。人事部門にこの2つが揃っている会社は多くありません。
| 外注 | 自社 | |
|---|---|---|
| 費用 | 1回あたり数十万円から | 人件費のみ |
| 期間 | 数週間から2か月 | 数日 |
| 必要なもの | 予算と仕様の説明 | 表計算とAIの操作 |
ここを埋めるのが、次に置くプロンプトです。集計そのものは表計算で行い、読み解きの下書きをAIに任せます。
サーベイの分析でよく使う6つの切り口を、実際のデータでの読み解きまで含めて整理したのが資料『エンゲージメントサーベイの分析方法6選』です。

資料をダウンロード ↗
クロス集計の表を貼り付けて解釈を出すプロンプト
ピボットテーブルで出した表を、そのまま貼り付けて使います。
あなたは組織人事のアナリストです。以下はエンゲージメントサーベイの
クロス集計結果です。5段階尺度で、括弧内は回答人数です。
[ここに属性別の表を貼り付ける]
次の4点を出してください。
1. 全社平均との差が0.4以上あるセルを、差の大きい順に最大5つ
2. そのうち回答人数が5名未満のものには「人数が少ないため参考値」と注記
3. 差が出た組み合わせについて、考えられる解釈を各2つ。
ただし断定はせず「〜の可能性がある」の形で書く
4. 次に追加で分析するとよい軸を1つと、その理由
部署名を挙げて評価する書き方はしないでください。
構造の説明として書いてください。
出てきた解釈は仮説であり、結論ではありません。確かめる方法まで決めてから、部門長との対話に持っていきます。
たとえば階層別で管理職層が低いという結果が出た場合、解釈の候補は負荷の集中と権限不足の2つ。どちらかは自由記述か、管理職への聞き取りで確かめます。
切る軸と読み方を、手元のデータに合わせて決める
リデザインワークのサーベイ活用支援では、集計の設計について無料でご相談を承っています。現在の設問と回答データの形をお聞きして、最初に分析する軸と、報告で使う図をご一緒に決めます。
クロス集計は誰に何をするかを決めるための集計
クロス集計は、分析の精度を上げるための作業ではありません。全社施策しか出てこない状態をやめて、誰に対して何をするかを決めるための集計です。
まず全社で低い設問を3つ選び、4つの軸で切り、差が0.4以上のセルを人数とともに出す。ここまでは表計算ソフトだけで、半日あれば終わります。





