エンゲージメントが低い会社の特徴|調査の対象範囲・階層の見誤り・打ち手の偏り
「うちはエンゲージメントが低いので、何か施策を打ちたいんです」。サーベイの結果を持って、そうご相談に来られることがあります。数字は確かに低い。ところが、話を伺っていくと数字そのものより前の段階で止まっていることが少なくありません。
誰を対象に測ったのか。どの階層が最も低いのか。この2つが曖昧なまま施策の検討に入ると、効かない打ち手に予算がつきます。
この記事では、エンゲージメントが低い会社に共通する3つの原因を挙げたうえで、スコアを上げる施策を打つ前に確認する順番を扱います。
そもそもサーベイで何を測っているのかから確認したい場合は、エンゲージメントサーベイとはで、他の調査との違いと実施の手順を整理しています。
記事の最後には、自社の原因がこの3つのどれに当たるかを判定する9項目のチェックリストを載せました。施策の検討に入る前の確認としてお使いください。
共通するのは調査の対象範囲・階層の見誤り・打ち手の偏り
低いスコアの背景には、性質の違う3つの原因があります。いずれもスコアそのものではなく、測り方と読み方で起きています。
原因1 契約社員や派遣社員が調査の対象に入っていない
最も見落とされるのがこれです。全社調査と呼びながら、実際には一部の雇用区分しか対象に入っていない。
リデザインワークのサーベイ活用支援でお会いしたある1,000名超の企業では、約2万人の従業員のうち9割が契約社員と派遣社員で、全社調査の対象外になっていました。正社員だけを対象にした調査を、全社の数字として扱っていた。
この状態では、現場の実感とスコアがずれます。実際に業務を回している層の声が、そもそも入っていないためです。対象を広げると平均は下がるかもしれません。ただし、下がった数字のほうが実態に近い。
原因2 最も低いのは担当者ではなくリーダー層
2つ目は、低い層の想定が外れている場合。多くの会社は、現場の担当者層が最も低いと想定して集計します。
ところが実際に階層別で分析すると、その上のリーダー層が最も低いという結果が出ることがあります。先ほどの企業がまさにこれで、負荷がリーダー層に集中していました。担当者と経営の間で、両方向の要求を受けている層です。
担当者層を想定した施策を打っても、この場合は効きません。対象が違うためです。
原因3 打ち手が研修と社内イベントに偏っている
3つ目は、結果を受けた打ち手の選び方。低い項目が分かったあと、出てくる施策が研修とイベントに寄ります。
個人の意識や知識に働きかける施策は、企画しやすく実施もしやすい。一方で、負荷の配分や権限の範囲といったマネジメントの条件は変わりません。条件が同じまま個人に働きかけても、翌年のスコアは戻ります。
対象範囲を広げると平均は下がって見える
3つのうち、最初に手を付けるのは対象範囲です。対象が違えば、そのあとの分析がすべてずれるため。
ただし、ここには抵抗があります。対象を広げると平均が下がり、前年比が悪化して見えるためです。
対処は2つあります。
- 初年度は2つの数字を並べる 従来の対象での平均と、拡大後の対象での平均を両方出す。前年比は従来の対象で追い、実態は拡大後で見る
- 拡大の理由を先に説明する スコアが下がったのではなく、これまで数えていなかった層が入ったことを、報告の冒頭で明示する
対象範囲の拡大は、経営への説明を先に済ませておけば通ります。数字が下がってから理由を説明する順番にすると、調査そのものの信頼が落ちる。
階層別に分析すると負荷が集中している層が分かる
対象範囲を整えたら、次は階層です。部署別に分析する会社は多い一方、階層別は抜けがちです。
| 階層 | 見るべき設問 | 低いときに疑う条件 |
|---|---|---|
| 担当者 | 仕事の裁量・成長の実感 | 判断の権限が与えられていない |
| リーダー | 業務量の適正・上長の支援 | プレイングと管理の両方を担っている |
| 管理職 | 経営の方針理解・意思決定への関与 | 方針が下りてくるのが遅い |
リーダー層が低い場合、担当者向けの施策では動きません。必要なのは業務量の再配分と、判断してよい範囲の明文化。
切り方の手順はサーベイのクロス集計へ。表計算ソフトだけで進む5ステップに分けた。
業務量と権限を変える施策に予算を回す
打ち手の偏りへの対処が、最後の論点です。研修とイベントをやめる話ではありません。同じ予算のうち、マネジメントの条件を変える施策に一定の割合を回します。
条件側の施策として選べるのは、次の3つ。
- 業務量の再配分 リーダー層が担っている実務のうち、担当者へ移せるものを棚卸しする。移せない理由が権限なら、権限の範囲を先に直す
- 判断してよい範囲の明文化 金額・人数・対外の3区分で、どこまでを本人が決めてよいかを1枚にする
- 会議と報告の削減 同じ内容を複数の会議で報告している箇所を特定し、1つにまとめる
いずれも予算をほとんど使いません。効果が出るまでの期間も研修より短く、次の調査までに間に合います。
スコアが低いまま動かない仕組みはエンゲージメントサーベイは意味ないと言われる理由、結果から施策を組み立てる順番は従業員エンゲージメント向上の施策12選へ。
サーベイの結果を経営会議でどう報告するかを整理したのが資料『サーベイ結果の経営報告会で押さえるポイント』です。

資料をダウンロード ↗
自社の原因が対象範囲・階層・打ち手のどれかを判定する9項目
施策の検討に入る前に確認します。当てはまる項目にチェックを入れてください。
1つ目 調査の対象範囲
- 契約社員・派遣社員・パートが調査の対象に入っていない
- 対象者数と全従業員数を並べて確認したことがない
- 海外拠点や子会社が対象外のまま全社と呼んでいる
2つ目 階層の見誤り
- 部署別には切っているが、階層別には切っていない
- リーダー層を独立した階層として集計していない
- 低い層の想定を、集計の前に決めてしまっている
3つ目 打ち手の偏り
- 昨年の施策が研修と社内イベントだけだった
- 業務量の配分を変える施策を検討したことがない
- 判断してよい範囲が文書になっていない
1つ目に1つでも当てはまる場合、着手はそこから。対象が違うまま階層別に分析しても、出てくる差は本物ではありません。
対象範囲と階層の切り方を、現在の設問に合わせて決める
リデザインワークのサーベイ活用支援では、調査の設計について無料でご相談を承っています。現在の対象者と設問をお聞きして、次回の調査で変える箇所をご一緒に決めます。
スコアが低いのか測り方が粗いのかを先に分ける
エンゲージメントが低いという言葉には、実態が低い場合と、測り方が実態を捉えていない場合の2つが混ざります。区別しないまま施策を打つと、効かない打ち手に予算がつく。
対象範囲を確認し、階層で切り、打ち手の半分を条件側へ回す。どれも次回の調査を待たず、手元の結果から始められる。





