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シェアードサービスとは|集約で人が減らない3つの理由と、分散へ戻した会社の教訓

「間接業務を1か所に集めたのに、人員が減っていない」。シェアードサービスを導入して数年たった会社から、この相談をいただくことがあります。

コスト削減を目的に始めた取り組みが、数字として表れない。原因を担当部署の習熟度に求めても、打ち手は出てきません。実際に起きているのは、移した先と移した元の両方で作業が残るという構造の問題です。

この記事では、集約しても総量が減らない理由を3つに分け、設計の段階で何を決めておくべきかを整理します。読み終えると、導入の是非を検討する際や、すでにある組織を見直す際に、確認すべき点が分かります。

シェアードサービスとは間接業務を1か所に集める組織の形

言葉を先にそろえます。シェアードサービスとは、グループや複数拠点に分散している間接業務を1つの組織に集約し、各社・各拠点へ提供する形のこと。対象になるのは経理・人事・総務・情報システムなど、どの事業でも似た手順で行われる業務です。

似た言葉との違いを整理します。

シェアードサービス BPO アウトソーシング
担い手 自社またはグループ内の組織 社外の事業者 社外の事業者
業務の設計 自社で持つ 委託先と共同で決める 委託先の標準に合わせる
知見の蓄積 社内に残る 委託先に残る 委託先に残る
主な狙い 重複の排除と標準化 変動費化と専門性の活用 コスト削減

知見がどこに残るかが最大の違いです。将来的に業務を作り替えたい場合、社外に出した業務は自社で設計できなくなります。

集約しても人員が減らない3つの理由

導入の効果が数字に出ない会社には、共通する構造がある。

理由1 移した先で新しい手作業が生まれる

1つ目が最も多い。集約した業務そのものは移っても、移した先で元の形式へ戻す作業が発生することがあります。

リデザインワークのAX支援で、ある旅行業の人事部門から次のように聞いています。給与や異動の手続きをシェアードサービス部門へ移したのに、企画や制度運用の部門で本来不要なデータ加工と事務作業が再び発生し、人員が減っていない。移した先で新しい手作業が生まれていました。

起きているのは、こういうことです。集約先は複数社の標準形式で処理する。一方、依頼元の企画部門は自社の形式で資料を作る。両者の形式が違うため、どちらかが変換する。この変換作業は移管の対象に入っていません。

理由2 判断を伴う業務が元の部署に残る

2つ目は業務の切り分け。移せるのは手順が決まっている作業で、判断を伴う部分は元の部署に残る。

問題は、残った判断部分だけでは1人分の仕事にならないこと。担当者は従来の業務を続けながら、集約先とのやり取りが加わります。件数で見ると業務は減っていても、担当者の頭数は減りません。

理由3 問い合わせ対応が新たに発生する

3つ目が窓口の業務。集約前は隣の席で済んでいた確認が、集約後は問い合わせという形になります。

問い合わせは集約先と依頼元の双方に時間を使わせます。依頼元は聞く時間、集約先は答える時間。この往復は移管前には存在しなかった業務で、削減の試算には入っていません。

集約と分散のどちらにも副作用がある

理由が分かっても、では分散へ戻せばよいかというと、そうはならない。

リデザインワークの人事制度設計支援で、ある造船・重工業の人事部門から実例を共有いただきました。人事機能をシェアードサービスに集約していたが、事業現場とのやり取りが薄くなるため各事業会社へ分散させた。

その結果、本社人事は現場への決定権を持ちにくくなり、グループ全体最適より個社最適が優先される構造になっていました。

集約した場合 分散した場合
手順の統一 しやすい 各社で分かれる
現場との距離 遠くなる 近い
全体最適の判断 本社が持てる 個社最適が優先される
人件費 単価の低い拠点へ寄せられる 各社の水準のまま
起きやすい失敗 現場の実態と合わない運用 同じ業務を各社が別々に作る

どちらを選んでも副作用が出ます。集約か分散かという二択で議論すると、数年ごとに揺り戻しが起きます。実際、前出の会社は集約から分散へ戻し、いま再び全体最適の観点で見直しを検討しています。

決めるべきは集約の範囲でなく業務の作り替え

揺り戻しを止めるには、問いを変える必要があります。どこに置くかではなく、その業務を残すかどうか。

集約は業務の置き場所を変える施策です。置き場所を変えても、業務そのものの量は変わりません。理由1で見たとおり、むしろ変換作業のぶん増えることがあります。

先に行うのは、業務を工程に分けて、なくせる工程を特定することです。手順が決まっている工程はAIや自動化に任せ、判断の工程だけを人が持つ。そのうえで、残った判断を誰がどこで行うかを決める。この順序なら、置き場所の議論は最後の1ステップになります。

業務を工程に分ける具体的な手順は業務棚卸しのやり方でまとめています。

設計の前に決める4項目

導入または見直しを検討する際に、先に文書化しておく項目。

項目 決める内容 決めていない場合に起きること
1 形式の主導権 集約先と依頼元のどちらの形式にそろえるか 変換作業が残り、人員が減らない
2 判断の所在 判断を伴う工程を、集約先と依頼元のどちらが持つか 両方が少しずつ持ち、どちらも減らない
3 問い合わせの扱い 想定件数と応答の期限。よくある質問の公開 往復が増え、双方の時間を使う
4 評価の指標 何が下がれば成功か。件数か、人員か、処理時間か 数年後に効果を説明できない

1番が最も効きます。依頼元の形式に合わせる設計にすると、集約先の標準化が進まず、規模の効果が出ません。逆に集約先の形式へそろえるなら、依頼元の帳票と手順を先に変えておく必要があります。

4番も後回しにされがちです。人員の削減を指標に置くなら、いつ時点の何人と比べるのかまで決めておかないと、判断ができません。

人事機能を集約する場合に特有の論点

人事は経理と違い、業務の中に個人の事情が入る。ここが集約の難所です。

  • 手続きは集約できるが、相談は集約しにくい。育児や介護の相談は、制度の説明だけでは終わりません。相談を受ける役割を残すかどうかを先に決めます。
  • 制度の運用は各社で違うことがある。グループ内で等級や評価の仕組みが揃っていないと、集約先は会社ごとに別の処理を持つことになります。制度の統一が先か、集約が先かという順序の問題が出ます。
  • 現場との距離が離れると、制度の実態が見えなくなる。前出の造船・重工業の事例がこれにあたります。

人事の業務をどこまで自動化できるかは人事のAI活用はどこまで任せるかで扱っています。

AIに任せる業務の選び方と、空いた時間の使い道までを整理したのが、資料『AIによる業務効率化が進まない理由 〜業務設計編〜』です。

AIによる業務効率化が進まない理由 ~業務設計編~
お役立ち資料|AX(AI活用)推進

AIによる業務効率化が進まない理由 ~業務設計編~

AIを入れて作業は速くなったのに、月末の残業は減らない。切り出した業務の前後に、AIを使うための新しい仕事が生まれているからです。AX推進責任者が着手前に必ず押さえるべき、手戻りを生まない業務の切り分け方を解説します。

資料をダウンロード

集約すべきか、業務そのものを作り替えるべきかは、いまの業務の中身によって変わります。

対象業務の工程と、集約先と依頼元それぞれの作業量をお聞きして、どこから手をつけるかまで一緒に決めます。

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シェアードサービスは、業務の置き場所を変える施策です。置き場所を変えただけでは総量は減らず、変換作業のぶん増えることさえあります。集約と分散のどちらにも副作用があり、二択で議論すると数年ごとに揺り戻しが起きる。

先に決めるのは、なくせる工程はどれかです。そのうえで残った業務の置き場所を決める。この順序にすると、集約の議論は最後の1ステップになります。

まず、対象にしている業務を1つ選び、集約先と依頼元それぞれで何時間かかっているかを数えるところからです。合計が移管前より増えているなら、変換作業が残っています。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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