新卒採用のAI活用事例|母集団形成・スカウト・面接評価で変わった業務と、任せない判断
「採用にもAIを入れてほしい」。経営から言われた採用担当者が、まずツールの比較サイトを開く。そこには面接AI、スカウト自動化、適性検査と並んでいて、どれも良さそうに見える。ところが自社の何に効くのかは、比べても出てきません。
新卒採用は工程が多く、忙しさの中身も工程ごとに違います。母集団形成で困っている会社と、面接の日程調整で困っている会社では、入れるべきものが変わる。
ツールを比べる前に必要なのは、自社の採用業務のどこに時間がかかっているかを工程ごとに分けることです。
この記事では、新卒採用でAIが実際に使われている4つの場面を整理したうえで、各場面で任せられる業務と人が残す判断、採用チーム自身が業務を分解する手順を順に説明します。
記事の最後には、採用業務を工程ごとに分解するプロンプトを掲載しました。日常の作業を書き出して貼り付ければ、AIに任せる候補と人が残す判断が仕分けられた表が出るので、着手する工程を選ぶ材料としてお使いください。
新卒採用でAIが使われているのは4つの場面
公開されている導入事例をならすと、活用は次の4場面に集まります。まず全体を確認します。
| 場面 | AIに任せている業務 | 人が残している判断 |
|---|---|---|
| 母集団形成 | 求人票の下書き、説明会の告知文、SNS投稿の案作成 | 訴求する強みの決定、出す媒体の選定 |
| スカウト | 候補者プロフィールの要約、個別文面の下書き | 送る候補者の決定、文面の最終確認 |
| 書類選考 | 応募書類の要約、要件との突き合わせ | 合否の判定、基準に迷う案件の扱い |
| 面接 | 日程調整、面接記録の文字起こしと要約、評価コメントの下書き | 評価の確定、採否の決定 |
大手の事例では、面接そのものにAIを使う例も公開されています。ソフトバンクは2023年から新卒採用の動画面接にAIによる分析を導入したことを公表しています。
ただし、これは応募が数万人規模の会社の話。応募が数百人の会社が同じ形を追っても、費用に見合いません。
新卒採用の母集団形成でAIに任せられるのは文章の量産
母集団形成の作業を分けると、決めることと書くことに分かれます。AIが効くのは後者です。
求人票、説明会の告知、学生向けのメール、SNSの投稿。同じ内容を媒体ごとに書き分ける作業は、1シーズンで数十本になります。訴求する内容が決まっていれば、媒体ごとの書き分けは下書きまで任せられます。
一方、決めることは残ります。自社の何を強みとして出すか、どの層に届けたいか。ここを曖昧にしたままAIに書かせると、どこの会社の求人票にも見える文章が出てきます。
材料がなければ、出てくるものも一般論にしかならない。
スカウトと書類選考のAI活用は下書きまでにとどめる
スカウト文の作成は、1通あたり10分から30分かかると言われる作業です。候補者のプロフィールを読み、自社の求人と接点を探し、文面を組み立てる工程が積み上がるためです。
AIに任せると、プロフィールの要約と接点の抽出、文面の下書きまでが数十秒で出ます。担当者の作業は、出てきた文面を確認して直すところから始まる。
書類選考も構造は同じです。応募書類を要件と突き合わせて要約させ、担当者は要約と原本を見て判定します。
ここで守る線は1つ。合否の判定そのものをAIに確定させないことです。判定を任せると、なぜ落としたのかを説明できなくなります。学生からの問い合わせにも、社内の振り返りにも答えられません。
採用以外の人事業務でどこまで任せるかの線引きは、人事のAI活用はどこまで任せるかで整理しています。
新卒採用の面接でAIを使うのは記録と下書き
面接の場面で効果が大きいのは、面接そのものではなく前後の作業です。
日程調整は、候補者と面接官の予定を突き合わせる定型作業。面接記録は、話した内容を文字起こしして要点にまとめる作業です。どちらも判断を含まないため、任せても問題が起きにくい。
面接記録から評価コメントの下書きを作らせる使い方も広がっています。ただし、下書きは面接官が事実を確認してから使います。AIが記録にない内容を補って書くことがあるためです。
| 使い方 | 任せてよいか | 理由 |
|---|---|---|
| 日程の調整と案内 | 任せてよい | 判断を含まない定型作業 |
| 面接記録の文字起こしと要約 | 任せてよい | 事実の整理にとどまる |
| 評価コメントの下書き | 条件つき | 面接官が事実を確認してから使う |
| 評価点の確定 | 任せない | 根拠を説明できなくなる |
| 採否の決定 | 任せない | 採用は会社の判断 |
新卒採用のAI活用は採用チーム自身が業務を分解する
4場面を眺めても、自社でどこから着手するかは決まらない。時間のかかり方が会社ごとに違うためです。
リデザインワークのAX支援では、人事部の各チームリーダーと課のメンバーを集めた勉強会を実施しています。業務分解とAXの考え方をレクチャーしたうえで、各チームが自分たちの業務を分解し、どの工程をAIに任せる対象にするかをグループワークで議論する形です。
外部が業務一覧を作って渡す形にしていないのは、担当者が自分で分解できるようになると、次のテーマが社内から出てくるためです。1回の支援で終わらせず、AI活用の企画が自律的に立ち上がる状態までを対象にしています。
採用チームでこれをやると、たいてい想定と違う工程が出てきます。母集団形成だと思っていたのに、実際に時間を食っているのは面接の日程調整だった、という具合に。
業務の分け方そのものは業務の棚卸しから始めるAXで扱っています。
新卒採用の業務を分解するプロンプト
工程ごとの仕分けは、AIに下書きさせると速くなります。次の指示文をそのまま貼り付けて使えます。
あなたは人事業務のAI活用を支援するコンサルタントです。
以下の情報をもとに、新卒採用の業務をAIに任せる候補と人が残す判断に仕分けてください。
【採用の規模】
(年間の応募者数、採用人数、採用担当の人数を記入)
【1シーズンで行っている作業】
(母集団形成から内定フォローまで、日常の作業を思いつくまま箇条書きで貼り付け)
出力の条件:
1. 作業を「母集団形成」「スカウト」「書類選考」「面接」「内定フォロー」の
工程に分類し、工程ごとの表にしてください。
2. 各作業を「AIに任せられる」「AIの下書きを人が確認する」「人が判断する」の
3区分に仕分け、区分の理由を1行で添えてください。
3. 各作業の年間工数を、記入された規模から概算してください。前提も併記してください。
4. 着手する順番を3つ提案してください。工数が大きく、かつ判断を含まない作業を優先してください。
出てきた仕分けは、そのまま実行に移さないでください。年間工数の概算は前提しだいで大きく動くため、実際にかかっている時間を担当者に確認してから着手する工程を決めます。
自社の採用業務のどこから着手するか
リデザインワークのAX支援では、採用業務のAI活用について無料でご相談を承っています。現在の採用フローと担当者の人数をお聞きして、最初に取り組む1工程をご一緒に選びます。
新卒採用のAI活用は工程を分けた分だけ進む
採用のAI活用が進まない会社は、ツールの選定から入っています。採用という言葉が指す範囲が広すぎて、どのツールも自社に当てはまるように見えるためです。
工程に分けると、当てはまるものは一気に減る。
母集団形成で困っているのか、選考の事務で困っているのか。分けたうえで比べると、検討する候補は2つか3つに絞られます。中途採用での使い分けは中途採用のAI活用で扱っています。






