人事考課のやり方|評価基準の作り方4手順と、評価者が迷う場面での判断を実務で解説
評価者研修は毎年やっている。エラーの種類も説明した。それでも提出される評価は中央に集まり、部署間で甘辛の差が残る。人事制度の運用を支援していると、この状態のご相談をいただきます。
人事考課のやり方は、評価を付ける手順よりも、その手前の基準の作り方でほとんど決まります。基準が判定できる形になっていなければ、研修を重ねても評価者はそろいません。
そしてもう一つ、制度の設計とは別の要因があります。低い評価をつけると決めたのに、実際には誰もつけないという運用の問題です。
この記事では、評価基準を作る4つの手順、評価の付け方と分布の考え方、評価者が迷う場面での判断、フィードバック面談の進め方を扱います。
記事の最後には、評価の根拠を行動の事実で書き出すプロンプトを掲載しました。1on1の記録を貼り付ければ、評価の裏付けになる行動が抽出されるので、期末の作業にお使いください。
人事考課のやり方は評価基準の作り方で決まる
評価者がそろわない原因の大半は、基準が抽象的な形容詞で書かれていることにあります。「積極性がある」「責任感が強い」といった項目は、評価者ごとに思い浮かべる場面が違います。
基準を判定できる形にすると、研修の前に評価がそろい始めます。人事考課の定義や3つの評価基準については人事考課とはで整理しています。
評価基準を作る4つの手順
基準は、職務の中身から順に落としていきます。他社のシートを持ち込むと、自社の仕事と対応しない項目が残ります。
| 手順 | やること | 出力物 |
|---|---|---|
| 1 | 職務内容を分析する | 職種ごとの主要業務の一覧 |
| 2 | 必要な能力を洗い出す | 業務を担うのに要る力の一覧 |
| 3 | 評価項目を設定する | 等級ごとの項目と行動の水準 |
| 4 | 評価のウェイトを決める | 業績・能力・情意の配分表 |
手順3が最も時間のかかる部分。項目を書くだけでなく、等級ごとに行動の水準を書き分ける必要があります。同じ「折衝力」でも、3等級と5等級では期待する行動が違います。ここを分けないと、上位等級の評価が甘くなります。
書き分けの型は次のとおり。
- 3等級 相手の要望を確認し、上司に相談したうえで対応方針を決める
- 5等級 利害が対立する相手に対し、代案を用意して合意を作る
行動として書くと、評価者は記憶ではなく事実を探すようになります。この書き方の詳細はコンピテンシー評価で扱っています。
評価の付け方と分布の考え方
評価の段階は5段階を採る会社が多くなります。段階数そのものより、各段階の意味が定義されているかが重要です。
| 段階 | 意味 | 想定する割合 |
|---|---|---|
| S | 期待を大きく上回る | 5%程度 |
| A | 期待を上回る | 20%程度 |
| B | 期待どおり | 50%程度 |
| C | 期待を下回る | 20%程度 |
| D | 大きく下回る | 5%程度 |
割合を目安として示すか、厳密に守らせるかは制度の設計判断。厳密に守らせる方式は相対評価と呼ばれ、分布は保たれますが、部署の成果が全体的に高い場合でも誰かをCにする必要が出ます。
目安として示す方式では、分布は中央に寄る。その場合、二次評価の段階で部署間の調整を行い、偏りを是正します。
どちらを採る場合でも、評価者に自部署の分布を見せることが最も効きます。自分の評価が他部署と比べてどうかを知ると、評価者は自分で調整を始めます。
評価者が最も迷うのは低い評価をつける場面
制度の設計をどれだけ整えても、運用の段階で必ず出てくる場面があります。期待を下回る評価をつけるかどうかの判断。
リデザインワークが人事制度の改定を支援していると、脱年功序列でメリハリをつけると言って制度を改定したのに、実際には低い評価も年収が下がる査定もしない会社に繰り返し出会います。制度上はCやDが存在し、報酬への反映も設計されているのに、提出される評価はBから上に集中します。
評価者の気持ちは理解できる。相手は毎日顔を合わせる部下であり、低い評価を伝えれば関係が難しくなります。手間もかかります。
ただし、そう運用すると決めた以上は実行しないと、制度が形だけのものになります。メリハリをつけると宣言して改定した制度で誰も下がらなければ、高い評価を得た人から見て「頑張っても差がつかない」という結論になります。改定前より不信が強まることさえあります。
この状態への手当ては3つです。
- 評価の根拠を行動の事実で書かせる 印象ではなく事実なら、伝える側の負担が下がる
- 分布を評価者に開示する 自部署だけが甘いと分かると、評価者は自分で調整する
- 二次評価者が調整する責任を持つ 一次評価者に全ての判断を負わせない
3番が特に重要。低い評価を一次評価者だけの判断にすると、負担が集中して機能しません。二次評価者が部署間の分布を見て調整する役割を明確に持つと、一次評価者は事実の記録に集中できます。
評価エラーを減らす具体策
エラーの種類を知るだけでは減りません。運用の中に手当てを組み込みます。
| エラー | 手当て |
|---|---|
| 期末誤差 | 1on1の記録を半期分見ながら評価する |
| ハロー効果 | 項目ごとに根拠となる事実を書く欄を設ける |
| 中央化傾向 | 評価者に分布を開示する |
| 対比誤差 | 評価基準を行動の水準で書き、評価者の経験に依存させない |
共通しているのは、記憶ではなく記録で評価する形にすることです。評価の時期だけ思い出そうとすると、直近と印象に流れます。日常の1on1で行動を書き留めておく運用が土台になります。
フィードバック面談の進め方
評価を伝える面談は、納得を作る場。結果だけを伝えると、評価そのものへの不信につながります。
進め方は次の順序が扱いやすくなります。
- 本人の自己評価を先に聞く
- 評価が一致している項目から確認する
- 差がある項目について、評価の根拠となった行動の事実を伝える
- 次期に期待する行動を、水準まで具体化して伝える
- 本人の意見を聞き、記録に残す
3番で事実を出せるかどうかが分かれ目です。「積極性が足りない」ではなく、「この案件で相手からの依頼を待っていた場面が3回あった」と伝えられれば、議論が可能になります。
低い評価を伝える場合ほど、事実の準備が要ります。準備のない状態で伝えると、評価者自身が説明しきれず、次回から評価を甘くする動機が生まれます。
評価の根拠を行動の事実で書き出すプロンプト
1on1の記録から、評価の裏付けになる行動を抽出する指示文です。
あなたは人事評価の運用に詳しいコンサルタントです。
以下の1on1記録から、人事考課の根拠になる行動の事実を抽出してください。
【出力してほしいもの】
1. 評価項目ごとに、根拠となる行動の事実(日付と場面つき)
2. 期待を上回っている行動と、下回っている行動の区別
3. 事実が不足している評価項目の指摘
4. フィードバック面談で伝える際の言い方の案
(評価ではなく、観察された行動として伝える形で)
5. 次期に期待する行動を、水準まで具体化した文案
【1on1の記録】
(半期分を貼り付け)
【評価項目と等級ごとの行動水準】
(ここに貼り付け)
3番の指摘が実務で効きます。事実が足りない項目は、そもそも評価できていない項目。次期の1on1で意識して見る対象になります。
運用が続く形に整える
人事考課のやり方は、基準の作り方と、低い評価をつけられる運用の2つで決まります。どちらも制度の設計段階で手当てを組み込んでおく必要があります。
目標管理と組み合わせる場合の設計はMBOとはで扱っています。
なお、評価基準の作り込みと運用の立て直しは、リデザインワークの人事制度設計支援でも無料でご相談を承っています。






