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人事戦略とは|経営戦略との接続・人材戦略との違い・人材版伊藤レポートの3視点で解説

「来期から人事戦略を作ってほしい」と経営から言われたものの、何から手をつけるか決まらない。中期経営計画は手元にあるが、そこから人事の打ち手をどう導けばよいのかが見えない。人事制度の改定を支援していると、この状態からご相談をいただくことがよくあります。

人的資本の情報開示が義務化されて以降、人事戦略という言葉は経営会議でも使われるようになりました。一方で、採用計画や研修計画を並べたものを人事戦略と呼んでいる会社も少なくありません。

両者を分けているのは、経営戦略から逆算しているかどうかです。逆算していない打ち手の一覧は、施策集ではあっても戦略ではありません。

この記事では、人事戦略の定義、人材戦略や戦略人事との違い、国が示している枠組み、人事戦略に含まれる領域、そして経営戦略とつながらなくなる構造を順に整理します。

記事の最後には、自社の中期経営計画から人事戦略の骨子を作るプロンプトを掲載しました。計画の本文を貼り付ければ、必要な人材の質と量、現状とのギャップ、優先すべき打ち手の案までが出るので、たたき台としてお使いください。

人事戦略とは経営戦略を人の面から実現する方針

人事戦略とは、経営戦略の達成に必要な人材を、どう確保し・配置し・育て・処遇するかを決めた中長期の方針を指します。単年度の採用計画や研修計画とは、時間軸と出発点が違います。

出発点は経営戦略です。「3年後にこの事業をこの規模にする」という計画があり、そこから逆算して「そのとき何人の、どういう人材が、どこに必要か」を出す。その必要量と現状の差を埋める方針が人事戦略にあたります。

したがって人事戦略は、人事部門だけで完結しません。事業計画の前提を経営から引き出せていなければ、逆算の起点が存在しないことになります。

人事戦略と人材戦略と戦略人事の違い

3つの言葉は現場でほぼ同じ意味で使われますが、指している範囲が違います。会議で話が噛み合わない原因になりやすいので、最初に整理します。

用語 指している範囲 主な中身
人事戦略 人に関する方針の全体 採用・配置・育成・評価・報酬・働き方の6領域
人材戦略 人材の確保と育成に絞った方針 採用計画・育成プログラム・人材ポートフォリオ
戦略人事 人事部門の役割のあり方 経営の意思決定に人事が関与する体制

人事戦略は方針の中身を指し、戦略人事は人事部門の立ち位置を指します。評価制度や報酬制度の設計は人事戦略に含まれますが、人材戦略では採用と育成の設計が中心になります。

なお、人材版伊藤レポートでは人材戦略という語が使われています。国の文脈で人材戦略と言うときは、ここでいう人事戦略とほぼ同じ範囲を指していると考えて差し支えありません。

人材版伊藤レポート2.0が示す3つの視点と5つの共通要素

人事戦略を組み立てる枠組みとして、実務でよく参照されるのが経済産業省の人材版伊藤レポート2.0です。2022年5月に公表され、人的資本経営の実践に必要な要素を3つの視点と5つの共通要素に整理しています。

区分 内容
視点1 経営戦略と人材戦略の連動
視点2 現状と目指す姿のギャップの定量把握
視点3 企業文化への定着
要素1 動的な人材ポートフォリオ
要素2 知と経験のダイバーシティとインクルージョン
要素3 リスキルと学び直し
要素4 従業員エンゲージメント
要素5 時間と場所にとらわれない働き方

実務で最初に効くのは視点2。現状と目指す姿の差を数字で押さえていないと、施策の優先順位が主観で決まります。3年後に必要な人数と、いまの人数と年齢構成を並べるだけでも、議論の質が変わります。

視点3の企業文化への定着は、制度を作った後の話に見えますが、実際には設計段階で効きます。自社で通らない制度を他社事例から持ち込むと、運用が始まった時点で止まるためです。

人事戦略に含まれる6つの領域

人事戦略の対象範囲は広く、ここを曖昧にしたまま議論を始めると、採用の話と評価の話が同じ会議で混ざります。次の6領域に分けると整理しやすくなります。

領域 決めること 経営戦略との接点
採用 誰を何人、いつまでに入れるか 事業の立ち上げ時期と規模
配置 誰をどこに置くか 注力事業への人の寄せ方
育成 何をできるようにするか 新規事業に必要な能力
評価 何を評価するか 求める行動の方向づけ
報酬 どこに厚く払うか 確保したい人材層の相場
働き方 どう働ける状態にするか 採用競争力と定着率

6領域のうち、経営戦略の変更が最も早く波及するのは配置と報酬。注力事業を変えると、翌期には人の寄せ方と報酬の配分を変える必要が出ます。採用と育成は効果が出るまでに時間がかかるため、より早い段階から着手します。

評価と報酬の設計は、等級制度を土台にして組み立てます。等級・評価・報酬の3つをつなげる手順は、人事評価制度の作り方で解説しています。

経営戦略と人事戦略がつながらなくなる構造

人事戦略が施策の羅列に終わる原因は、人事部門の力量よりも、経営から方針が出てこない構造にあることが少なくありません。

リデザインワークの人事制度設計支援でよく遭遇するのが、グループ子会社に特有の構造。社長がグループ本体からの出向で3年ほどで交代するため、任期中に争いや面倒を起こしたくないという力学が働きます。現場の事情に詳しくないぶん、現場の役員や部長の発言力が相対的に強くなります。

その結果、改定に対する想いやビジョンが社長側から出てこないという状態が生まれます。人事担当者は逆算の起点を持てないまま、方針を作れと言われることになります。

この構造に当たった場合、経営から降ってくるのを待っても進みません。人事担当者が現場の役員と部長へのインタビューを行い、実現したい姿の案を先に描いて経営に当てる、という順番に切り替えることになります。

なお、この進め方自体はグループ子会社に限った特別な手法ではなく、人事制度設計の現場では一般的なものです。特徴的なのは、この構造では人事担当者が起点を作らなければ誰も作らないという点。

人事戦略を策定する5つの段階

策定の流れは、おおむね次の5段階。各段階の具体的な進め方は、人事戦略の立て方で詳しく扱います。

  1. 経営計画から、必要な人材の質と量を出す
  2. 現状の人材を可視化する
  3. 現状と必要量のギャップを数字で押さえる
  4. 打ち手を6領域に割り付け、優先順位をつける
  5. 指標と振り返りの間隔を決める

段階3で止まる会社が最も多くなります。必要量は経営計画から出せても、現状の可視化には人事データの整備が要るためです。年齢構成と等級分布だけでも先に出しておくと、議論を始められます。

自社の経営計画から人事戦略の骨子を作るプロンプト

手元の中期経営計画から、逆算の起点を作るための指示文。生成AIに貼り付けてお使いください。

あなたは人事制度設計のコンサルタントです。
以下の中期経営計画をもとに、人事戦略の骨子を作ってください。

【出力してほしいもの】
1. 3年後に必要な人材の質と量(職種別・階層別に、根拠つきで)
2. 現状を把握するために社内から集めるべきデータの一覧
3. 想定されるギャップと、その中で最も早く手を打つべきもの
4. 打ち手の候補を、採用・配置・育成・評価・報酬・働き方の6領域に割り付けた表
5. この計画から読み取れない前提のうち、経営に確認すべき事項

【中期経営計画】
(ここに本文を貼り付け)

出てきた5番目の「経営に確認すべき事項」が、実務では最も使えます。逆算の起点として足りていない情報が具体的に並ぶため、そのまま経営への質問リストになります。

人事戦略の検討でつまずいたときに

人事戦略は、経営計画の前提を引き出すところから始まります。その前提が明文化されていない場合、どこから手をつけるかで進み方が大きく変わります。

こうした進め方の整理を含めて、リデザインワークの人事制度設計支援では無料でのご相談を承っています。現状の経営計画と人事データを拝見して、最初に着手すべき領域と、経営に確認すべき事項まで一緒に決めます。

経営計画から人事戦略へ落とし込む段階で止まっている場合。

現状の計画と人事データを拝見し、最初に着手する領域と、経営へ確認すべき前提を整理してお渡しします。

無料で相談する

人事戦略から等級・評価・報酬の設計まで一貫して進める手順は、資料にまとめています。

AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか
お役立ち資料|人事評価制度

AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか

制度改定に費用と半年をかけたのに、出てきたのはどこかで見たことのある制度だった。AIに何を任せ、どこから人が引き取るかを決めないまま渡しているからです。人事責任者が押さえるべきAIに任せられる範囲と、浮いた原資の置き場所まで解説します。

資料をダウンロード

人事戦略で決めた方針は、最終的に等級制度の形で運用に載ります。等級の区分と昇格の基準をどう決めるかは、等級制度の作り方で整理しています。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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