業務改善を上司に相談する方法|業務削減を任されたら1枚で通す報告の構成・例文・工数の計算
部長から業務削減を任されたら、今日やることは2つです。担当している業務を思いつく順に書き出すこと。そして、部長の予定に1週間後の30分を入れてもらうこと。
1週間後の相談に持っていくのは、A4で1枚の報告。今の業務と件数、削減の候補、減る見込みの時間、部長に判断してほしいこと。この4つが書いてあれば、最初の相談としては足ります。
「人事と総務の事務、もう少し減らせないか考えてみて」。部長から言われたのはこの一言だけで、何をどこまで調べればよいのかは誰も教えてくれない。指示を受けた係長や主任の多くが、ここで手が止まります。
この記事を読み終えると、1回目の相談で何を見せ、部長に何を決めてもらえばよいかが分かります。報告の構成と例文から始め、月の作業時間の計算、指示を受けた日に確認する質問、相談の時期と順番、差し戻される書き方の直し方へと進みます。
業務を書き出す表の列は、業務棚卸しのフォーマットにそのまま使える形で載せています。
記事の後半には、ChatGPTへの指示文を3つ載せました。書き出したメモを貼れば、月の作業時間の表と報告の下書きが出てくる。部長から聞き返されそうな質問も、相談の前に洗い出せます。
業務改善を上司に相談するときは報告1枚に4項目を書く
冒頭で触れた1枚の報告には、次の4項目を上から順に書きます。並びは、今どうなっているか、何をするか、どれくらい減るか、部長は何をすればよいか。部長が知りたい順番です。
| 項目 | 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 1 現状の業務と件数 | 業務名・月の件数・1件あたりの時間・月の合計時間 | 入社手続きの書類確認 月20件×40分=月約13時間 |
| 2 削減の候補 | どの業務を、やめる・減らす・まとめる・任せるのどれにするか | よくある質問を社内ポータルに載せ、回答の件数を減らす |
| 3 見込みの時間 | 候補ごとに月に何時間減るか。幅をもたせて書く | 月3〜5時間 |
| 4 協力と判断のお願い | 誰に何を頼みたいか。部長に何を決めてほしいか | 総務課長への声かけ。目標を作業時間で置くか残業時間で置くか |
部長は、部下が1件の手続きに何分かけているかまでは把握していません。そのため、1番目の件数と時間が報告の中で最も読まれる箇所になる。パワーポイントで作る場合も、スライド1枚にこの4項目を載せれば足ります。
次の例文は、人事・総務のチーム3名が1週間かけて数えた想定です。業務名と数字を、自分のチームのものに書き換えて使えます。
件名:人事・総務の業務の見直しについて(1回目のご相談)
1. 現状の業務と件数(過去3か月の記録から算出)
・入社手続きの書類確認 月20件 × 40分 = 月約13時間
・勤怠の打刻漏れの確認と連絡 月60件 × 10分 = 月10時間
・給与と休暇の問い合わせ回答 月80件 × 8分 = 月約11時間
・月次の残業集計表の作成 月1回 × 6時間 = 月6時間
合計 月約40時間(3名分)
2. 削減の候補(上位3つ)
① 問い合わせ回答を減らす:よくある質問20件を社内ポータルに載せる
② 打刻漏れの個別連絡をやめる:勤怠システムの自動通知に任せる
③ 残業集計の手作業をまとめる:毎月同じ手順の集計を表計算の関数で自動にする
3. 見込みの時間
① 月3〜5時間 ② 月4〜6時間 ③ 月3〜4時間 合計 月10〜15時間
11月に①から試し、11月の件数で効果を確かめます
4. ご協力とご判断のお願い
・①の掲載について、総務課長にひと声かけていただけますか
・削減の目標は「月の作業時間」と「残業時間」のどちらで置けばよいでしょうか
・ChatGPTなどの生成AIを、個人情報を入れない範囲で使ってよいでしょうか
業務削減の候補はやめる・減らす・まとめる・任せるの4つで書く
2番目の削減の候補で手が止まるのは、何を書けば候補になるのかが分からないため。候補は、次の4つの動詞のどれかに当てはめると書けます。
- やめる 作業そのものをなくす。誰も読んでいない報告書や、二重に取っている記録
- 減らす 回数や件数を減らす。同じ質問への回答や、書類の差し戻しの往復
- まとめる 別々の作業を1回で済ませる。部署ごとに作っている集計表
- 任せる 道具や他の部署に移す。勤怠システムの通知・表計算の関数・ChatGPT
上にあるものほど、減る時間は大きい。逆に任せるから考え始めると、道具を入れても前後の確認や入力が残り、思ったほど時間は減りません。
もう1つ避けたいのが、新しく始める作業だけを候補に並べることです。
リデザインワークの人事制度設計支援で、ある情報サービス業の人事部門から次のように聞いています。新しい施策を入れる前に、重要でないのに続けている業務を減らしておかないと、その施策は人事からの追加作業と見なされ、現場に受け入れられない。
業務削減の報告でも同じことが起きます。社員に提出前のチェック表を書いてもらう案は、人事の時間は減っても、社員の作業は増える。3つの候補のうち1つは、やめる作業にしておくこと。
削減の候補は月の時間が大きい順に3つに絞る
候補が15個並んだ報告を渡されても、部長はどれから手をつけるかを判断できません。月の作業時間が大きい順に並べ、上から3つを残す。残りは別紙で十分です。
時間の大きさに加えて、顧客に渡す価値への影響まで含めて着手順を決める方法は、AIに任せる業務の選び方で負荷と貢献度の2つの軸として整理しています。
業務削減の見込みは件数×1件あたりの時間で計算する
報告の1番目と3番目に入れる数字は、どちらも同じ計算式で出します。工数(作業にかかる時間の合計)の計算と呼ばれるものです。
月の作業時間=月の件数×1件あたりの時間×担当する人数
数字は次の3つの手順で集めます。
- 件数を集める 勤怠システム・問い合わせのメール・申請の記録から、過去3か月分を数えて月の平均を出す。記録のない業務は、1週間だけ件数を書き留めて4倍する
- 1件あたりの時間を計る 担当者が普段どおりに処理し、3件分の時間を計って平均する。2人で同じ書類を確認している業務は、人数も掛ける
- 削減の見込みを出す 候補を実行した後の件数と1件あたりの時間を置き、今の時間との差を出す
例文の候補①(問い合わせ回答)で計算すると、次の表のとおり。
| 今 | 候補を実行した後 | |
|---|---|---|
| 月の件数 | 80件 | 50件(よくある質問の30件がポータルで解決) |
| 1件あたりの時間 | 8分 | 8分 |
| 月の作業時間 | 約11時間 | 約7時間 |
| 削減の見込み | 月約4時間 |
見込みは、実行するまで分かりません。1つの数字で書くと、外れたときに報告全体の数字まで疑われる。少なく見た場合と多く見た場合の2つを出し、月3〜5時間のように幅で書きます。
工数の計算でよく起きる3つの間違い
数え方が分かっていても、次の3つは見落としやすい。
- 担当する人数の掛け忘れ 2人で同じ書類を確認しているなら、時間は2倍になる
- 手戻りの時間の数え漏れ 不備のある書類を本人に戻し、再提出を確認し直す往復の時間
- 年に1回の業務の見落とし 年末調整や賞与の計算は月の平均にすると小さく見えるため、別の行に書く
部長から金額で聞かれたら、削減した時間に1時間あたりの人件費を掛けます。ただし1回目の報告では、時間だけで十分。業務をどこまで細かく分けて書き出すかで迷う場合は、業務棚卸しのやり方で手順を3つに分けて解説しています。
数えた業務のうち、どの作業を道具に任せ、どこを人が確認するかまで分けて決める手順は、資料『人事AXに取り組む業務を整理するフレームワーク』にまとめました。
なお、業務削減の進め方は、リデザインワークのAX支援(AIを使った業務の見直しの支援)でも無料でご相談を承っています。
指示を受けた日に上司へ確認する5つの質問
数える作業に入る前に、部長に確認しておくことが5つあります。指示が「業務を減らして」の一言だけでは、何を目標に、どこまでを数えればよいかが決まらないためです。
ただし「何から決めればよいですか」とそのまま聞くと、部長も答えに困る。部長自身も、まだ決めていないことが多いからです。自分の案を添え、はいかいいえで答えられる形で聞きます。
| 確認すること | 聞き方の例 | 聞かないと起きること |
|---|---|---|
| 目的 | 残業を減らすためでしょうか。人を増やさずに新しい仕事を受けるためでしょうか | 選ぶ業務が変わり、候補を出し直す |
| 目標の大きさ | チームで月20時間ほどを考えていますが、足りますか | 部長の想定が月100時間だったと後で分かる |
| 対象の範囲 | 人事課の業務だけでよいでしょうか。総務の業務も入りますか | 範囲が違い、数え直しになる |
| 報告の期限 | 来週に現状の数字、月末に候補をお持ちする形でよいでしょうか | 部長が待つ時期と報告の時期がずれる |
| 使ってよい道具と費用 | ChatGPTなどの生成AIや、費用のかかる道具は使ってよいでしょうか | 候補を出した後で、使えない道具だと分かる |
5つのうち最も大事なのが1番目の目的。同じ月20時間の削減でも、残業を減らすのが目的なら、月末の締めや年末調整のように特定の時期に集中する業務から選ぶ。人を増やさないのが目的なら、毎月必ず発生する件数の多い業務が先になります。
当日に聞けなかった場合でも、1回目の相談で聞けば間に合います。例文の4番目に入れた質問は、そのためのものです。
業務改善の相談は指示を受けてから1週間以内に入れる
確認の質問が済んだら、1回目の相談までの段取りを決めます。目安は1週間。
2〜3週間かけて完成した資料を作ってから見せると、部長の想定と範囲や目標がずれていたときに、数え直しになります。粗くても1週間で見せて方向を確かめるほうが、結果として早く終わる。
| 日 | やること | 部長とのやり取り |
|---|---|---|
| 1日目 | 指示の内容を確認し、5つの質問をする | 1週間後に30分の予約を入れる |
| 2〜4日目 | 業務を書き出し、件数と1件あたりの時間を数える | なし |
| 5日目 | チームのメンバーに数字を見せ、実態と合っているか確かめる | なし |
| 6日目 | 1枚の報告にまとめ、候補を3つに絞る | 前日までに1枚を送る |
| 7日目 | 1回目の相談(30分) | 判断してほしいことを決めてもらう |
相談の順番はチームのメンバー・部長・他部署
部長に出す前に、数字をチームのメンバーに見せておきます。件数や時間の誤りを直せるうえ、自分の作業が削減の対象として出されたと後から知ったメンバーは、協力しにくくなるためです。
総務課長のような他部署への相談は、部長の了承を得てから。順番を飛ばすと、部長の知らない話が他部署から部長の耳に入ることになります。
上司への相談の切り出し方の例文
相談の予約は、チャットかメールで次のように頼みます。最初に書くのは、何の件か、何分ほしいか、何を判断してほしいかの3つ。
〇〇部長
先日ご指示いただいた人事・総務の業務の見直しについて、現状の件数と時間をまとめました。
進め方について2点ご判断いただきたく、来週どこかで30分お時間をいただけますか。
資料は前日までにお送りします。
日時は、月末の締め日や会議の直前を避けます。定例の1on1や週次の打ち合わせがあれば、その枠を使うのが確実です。
よく差し戻される業務改善の報告と直し方
1回目の相談で部長から「もう少し考えて」と返される報告には、共通する書き方があります。よく見る5つと、その直し方が次の表。
| 差し戻される書き方 | 部長が判断できない理由 | 直し方の例 |
|---|---|---|
| 業務量が多く、負担が大きい状況です | どれくらい多いのかが分からない | 問い合わせ回答が月80件あり、月約11時間かかっています |
| 〇〇というツールを導入したいです | 費用と効果が分からず、話が決裁の手続きから始まる | 今の時間を先に書き、ツールは候補の1つとして書く |
| 作業を50%削減できます | どうやって出した数字かが分からない | 月80件が50件に減り、月約11時間が約7時間になります |
| 〇〇さんの作業がなくなります | 人を減らす話に聞こえ、本人への説明が必要になる | 問い合わせ回答の時間を月4時間減らします |
| 検討しましたのでご確認ください | 部長が何を返せばよいのか分からない | ①から試してよいかをご判断ください |
1つ目と3つ目は、前の章の件数と時間の計算で直せます。2つ目のように道具の名前から書き始めると、部長はまず費用を聞き、話が決裁の手続きに移る。現状の時間が先に書いてあれば、道具はほかの候補と並べて比べられます。
4つ目は言葉の選び方の問題です。業務削減という言葉は、聞く人によっては人員を減らす話に聞こえる。件名やメンバーへの説明では、業務の見直し・作業時間の削減と書くほうが意図どおりに伝わります。
作業の手間を減らす省力化と、人を減らす省人化の違いは、省人化と省力化の違いで整理しています。
5つ目のように「ご確認ください」で終わる報告には、部長に決めてほしいことが書かれていません。部長は内容を読んでも返す言葉がなく、「検討しておいて」で終わる。判断してほしいことは、AかBかで答えられる形で1行にします。
ChatGPTに報告の下書きを頼む3つの指示文
1枚の報告を作る作業のうち、メモを表に整える・計算する・聞き返されそうな質問を挙げる、の3つはChatGPTに頼めます。使う前に、5つの質問の5番目で、会社のルール上使ってよいかを確かめておくこと。社員の名前・社員番号・給与の金額は貼り付けません。
報告以外の事務作業でのChatGPTの使い方は、事務職のChatGPT活用法にまとめています。
書き出したメモを月の作業時間の表にしたい
業務を思いつく順に書いたメモを、そのまま貼り付けて使います。
以下は、私のチームの業務のメモです。
業務ごとに「業務名・月の件数・1件あたりの時間・担当する人数・月の合計時間」の表にしてください。
月の合計時間は「件数×1件あたりの時間×人数」で計算し、途中の式も表に入れてください。
件数や時間が書かれていない業務があれば、表を作る前に質問してください。
[ここに業務のメモを貼る 例:入社手続きの書類確認 月20件くらい 1件40分 1人]
表を部長に出す1枚の報告にまとめたい
1つ目で作った表を、そのまま貼り付けます。
次の表をもとに、部長に出すA4で1枚の報告を作ってください。
見出しは「1. 現状の業務と件数」「2. 削減の候補(上位3つ)」「3. 見込みの時間」「4. ご協力とご判断のお願い」の4つにしてください。
削減の候補には、やめる・減らす・まとめる・任せるのどれに当たるかを書いてください。
見込みの時間は「月3〜5時間」のように幅で書き、人を減らす表現は使わないでください。
4番目には、部長にAかBかで答えてもらえる質問を2つ入れてください。
[ここに表を貼る]
部長から聞き返されそうな質問を先に知りたい
2つ目で作った報告を貼り付けて使う指示文です。
あなたは人事部長です。部下から次の報告を受け取りました。
この報告を読んで、部長として聞き返したくなる質問を5つ挙げてください。
それぞれの質問に答えるために、部下が事前に用意しておくべき数字や情報も書いてください。
[ここに報告を貼る]
ChatGPTは、掛け算や合計を間違えることがあります。合計の時間は、電卓か表計算で確かめてから報告に書く。3つ目で出てきた質問のうち答えられないものがあれば、相談の前に数えておきます。
2回目の相談では試した結果を数字で報告する
1回目の相談で部長の了承が取れたら、候補の1つ目を2〜4週間試します。2回目の相談で見せるのは、試す前と後の件数と時間。予定どおりに減らなかった業務があれば、その理由と次に試す候補も1行ずつ添えます。
2回目の相談の冒頭では、1回目に判断してもらったことへのお礼と、その結果を一言伝える。次の判断も頼みやすくなります。
費用のかかる道具を候補に入れる段階になると、時間を金額に直す必要が出てきます。費用の相場と、かけた費用を何か月で取り戻せるかの計算方法は、資料『DXやAIによる業務効率化の費用とROI』にまとめています。
業務改善の相談で部長が見ているのは、資料の見た目より、数字の出どころと、自分が何を決めればよいかの2点です。件数と時間を数え、候補を3つに絞り、判断してほしいことを1行で書く。この1枚を1週間で出せれば、2回目からは試した結果を持っていく相談に変わります。
バックオフィス全体で、どの業務から手をつけるかの決め方は、バックオフィスの業務効率化で扱っています。







