AIに任せる業務の選び方|負荷と貢献度の2軸で決める優先順位と全業務をAI化しない理由
「どの業務からAIを入れればいいですか」。AX支援の初回でいちばん多い質問がこれです。そして多くの場合、その前に「まず全業務を対象に検討したい」という前提が置かれています。
全部を対象にすると決まりません。AIの利用料は使った量で変わり、事前に総額を読めないためです。対象を広げるほど、いくらかかるのか分からないまま話が進み、決裁の手前で止まります。
必要なのは、どこまでを対象にするかの基準。この記事では、業務を2つの軸で仕分けて着手順を決める方法と、浮いた時間の使い道を先に決めておく理由を扱います。
対象の業務を洗い出すところから始めたい場合は、業務棚卸しの粒度の決め方で、どこまで書き出せば足りるかを扱っています。
記事の後半には、業務の一覧を2軸へ仕分けるプロンプトを載せました。手元の一覧を貼り付ければ、4象限に振り分けた表と着手順の候補が出てくるので、検討会の材料としてお使いください。
全業務を対象にすると決まらない
止まる理由は、検討する人の能力ではありません。費用が読めないことにあります。
AIの利用料は、処理した文字数や回数で決まります。システムの導入のように「初期いくら、月額いくら」と先に確定するものではありません。対象が100業務なら、100業務ぶんの不確実性を抱えたまま見積もることになる。しかもその不確実性は、業務ごとに幅が違います。
もうひとつ厄介なのが、効果も読めないこと。
どの業務でどれだけ時間が浮くかは、やってみないと分かりません。費用も効果も不確実なものを100個並べて比べる。これで結論が出るほうが不思議です。
対象を絞れば、費用の幅は小さくなる。効果も1業務なら実測できます。絞ることは妥協ではなく、判断の前提。
負荷と貢献度の2軸で仕分ける
では、何を基準に絞るのか。リデザインワークのAX支援では、次の2軸を使っています。
縦軸 業務の負荷
その業務に、月あたり何時間かかっているか。人数と頻度と所要時間の掛け算で出します。
負荷が高いほど、削ったときの効果は大きい。ここは直感どおり。ただし負荷だけで選ぶと、削ってはいけない業務まで対象に入ります。そこで2つ目の軸が要ります。
横軸 自社の価値提供への貢献度
その業務が、顧客に渡す価値をどれだけ作っているか。判定は1問で足ります。「この業務の質が上がったら、顧客は違いに気づくか」。
気づくなら高い。気づかないなら低い。
請求書の処理は、正確であることが前提で、早くても遅くても顧客は違いに気づきません。一方、提案の中身は質が上がれば顧客に伝わります。
この軸を入れると、同じ「負荷が高い業務」でも扱いが分かれます。
4象限のうち最初に着手するのは1つだけ
2軸で分けると4つに分かれます。着手するのは左上の1つだけ。
| 貢献度が低い | 貢献度が高い | |
|---|---|---|
| 負荷が高い | 最初に着手する。自動化して人の手から外す | 人が担う。AIは下書きや調査の補助にとどめる |
| 負荷が低い | 後回し。削っても浮く時間が小さい | 触らない。件数が少なく、質が要る |
左上に入るのは、請求書の処理・勤怠の確認・データの転記・定型の報告書といった業務です。量が多く、正確であることが求められ、質が上がっても顧客は気づかない。ここから外していきます。
右上を自動化しようとすると失敗します。提案書や面談の記録のように、質がそのまま価値になる業務は、AIに下書きを作らせ、判断は人が持つ形が上限。任せきると、顧客が気づく水準で質が落ちます。
迷ったときは貢献度の側を疑う
仕分けで迷うのは、たいてい横軸です。社内では「重要な業務」と呼ばれていても、顧客から見れば違いが分からない業務は珍しくありません。
判定を担当者に任せると、自分の業務を高めに置きがちです。顧客に近い部門の人へ1問だけ聞くと、ずれが早く見つかる。
浮いた時間の使い道を先に決める
仕分けが終わったら、着手の前にもう1つ決めることがあります。浮いた時間をどこへ回すか。
ここを決めずに始めると、現場には人員削減の話として伝わります。協力は得られません。言葉の受け取られ方の問題は省人化と省力化の違いで扱っています。
回し先は、2軸の表の右側です。負荷が高く貢献度も高い業務、つまり人が担うべき業務に時間を寄せる。左上を削って右上へ移す、という設計になります。
この形にすると、説明が1本で通ります。削るのは顧客が違いに気づかない業務で、増やすのは顧客に伝わる業務。現場にとっても、仕事の中身が良くなる話になります。
業務を5つの観点で分解し、AIに任せる範囲と人が確認する範囲まで決める手順をまとめたのが資料『業務棚卸しフレームワーク』です。

資料をダウンロード ↗
業務の一覧を2軸へ仕分けるプロンプト
棚卸しで作った一覧を、そのまま貼り付けて使います。
あなたは業務改善の専門家です。以下は当社の業務一覧です。
列は「業務名・担当部署・月間の件数・1件あたりの所要時間」です。
[ここに業務の一覧を貼り付ける]
次の4点を出してください。
1. 各業務の月間の負荷(件数×所要時間)を計算し、多い順に並べる
2. 各業務について「この業務の質が上がったら顧客は違いに気づくか」を
気づく/気づかない/判断できない の3つで判定し、理由を1行
3. 負荷と判定の組み合わせで4象限に振り分けた表
4. 「負荷が高い×顧客は気づかない」に入った業務を、負荷の多い順に上位5件
判断できないと答えた業務は、誰に確認すべきかを書いてください。
人員削減を前提とした提案は含めないでください。
4番に出てきた5件が着手の候補。そのまま計画に入れず、件数と所要時間が実態と合っているかを担当者と確認します。
2番で「判断できない」が多く出る場合は、顧客に渡している価値そのものが社内で共有されていません。仕分けより前に、そちらの整理が要ります。
2軸の判定を、手元の業務一覧に当てる
リデザインワークのAX支援では、業務の仕分けについて無料でご相談を承っています。現在の業務一覧と体制をお聞きして、最初に着手する業務をご一緒に決めます。
基準がないと費用も効果も読めないまま止まる
AIに任せる業務を決める作業は、AIでできることを調べる作業とは別物です。できることを広げるほど、対象が増えて決まらなくなります。
負荷と貢献度で仕分け、左上の1象限から着手し、浮いた時間を右上へ回す。この順で置くと、費用の幅も効果の見込みも1業務ぶんに収まります。





