事務職のChatGPT活用法|コピペで使える指示文8例・個人情報を入れてはいけない作業の見分け方
部長から「事務の作業をChatGPTで減らしてほしい」と言われたら、今日やることは3つです。
- 会社がChatGPTかCopilotを契約しているかを、情報システムの担当者に聞く
- 毎週くり返している事務作業を3つ選び、1回にかかっている時間をメモする
- そのうち個人情報を含まない作業を1つ選び、この記事の指示文を貼って試す
1と2を飛ばすと、後で困ります。会社が認めていない無料版に取引先や社員の情報を入れてしまうと、取り消せない。使う前の時間を測っていなければ、部長に「どれだけ減ったか」を数字で返せません。
この記事では、ChatGPTで減らせる事務作業の一覧、指示文8例、入れてはいけない情報の見分け方、答えの見直し方、削減時間の測り方を順に説明します。
記事の最後には、部長への報告に使える1枚のひな形も載せました。この記事を読み終えると、今週中に1つの作業でChatGPTを試し、減った時間を数字で報告できます。
部署の業務全体から減らす対象を先に決めたい場合は、AIに任せる業務の選び方が先です。
ChatGPTで減らせる事務作業8つの一覧
ChatGPTは、文章で頼むと文章で答えを返すAIです。得意なのは、文章を作る・直す・まとめる・並べ替える作業。事務の仕事に当てはめると、次の8つが減らしやすい作業です。
| 事務作業 | ChatGPTに頼むこと | 個人情報 |
|---|---|---|
| メールの返信 | 用件の箇条書きを敬語の文面にする | 入りやすい(相手の名前と会社名) |
| 議事録 | 会議中のメモを、決まったこと・次にやること・期限に分ける | 入りやすい(発言者の名前) |
| 社内のお知らせ文 | 日付と要点から案内文を作る | 入りにくい |
| Excelの関数 | やりたい計算を日本語で伝えて関数を書かせる | 列名だけ渡せば入らない |
| Excelの集計手順 | 作りたい表を伝えてピボットテーブルの手順を出させる | 列名だけ渡せば入らない |
| 手順書(マニュアル) | 自分の作業メモを番号付きの手順書にする | 入りにくい |
| 問い合わせへの回答案 | 規程の条文と質問から回答の下書きを作る | 入りやすい(質問した社員の事情) |
| データの整形 | ばらばらな日付や表記を統一する方法を出させる | 入りやすい(氏名や住所の一覧) |
最初に試すなら、右の列が「入りにくい」か「入らない」作業です。個人情報を伏せる手間がなく、1件目で迷わない。
給与額の計算や、規程に書かれていないことの判断は、表から外しました。ChatGPTは計算を間違えることがあり、自社の事情も知らないためです。
ChatGPTに個人情報を入れてはいけない作業は会社の契約・個人情報・社外秘の3点で見分ける
一覧で「入りやすい」とした作業に指示文を貼る前に、次の3つの質問に順に答えます。1つでも「はい」なら、そのまま貼らない。
| 質問 | 「はい」のときの扱い |
|---|---|
| 1 会社が契約していない無料版や、個人のアカウントで使うか | 業務の情報は入れない。公開済みの情報か、架空の例に置き換えた文章だけを使う |
| 2 氏名・社員番号・住所・電話番号・口座番号など、個人が分かる情報が入っているか | 氏名は「Aさん」、会社名は「B社」に置き換える。健康診断の結果・病歴・マイナンバーは置き換えても入れない |
| 3 取引先との金額・契約の中身・発表前の人事異動など、社外に出ていない情報が入っているか | 会社が契約した環境で、社内のルールが認める範囲だけ入れる。無料版には入れない |
最も大事なのは1つ目です。無料版や個人で契約した有料版(Plus)は、初期設定のままだと、入力した文章がAIの性能を上げる材料(学習)に使われることがあります。
設定の「データコントロール」で「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすれば、学習には使われない。ただし、オフにしたからといって、会社が認めていないサービスに業務の情報を送ってよいことにはなりません。
会社がChatGPT Business(旧Team)やEnterpriseを契約していれば、入力した内容は初期設定で学習に使われないとOpenAIは説明しています。何も契約していない場合は、部長に「無料版では個人情報と社外秘を含まない作業だけ試します」と先に伝えておきます。
2つ目の質問では、氏名を消すだけでは足りない場合がある。少人数の部署だと、部署・役職・入社年の3つで誰のことか分かってしまうためです。
個人情報保護委員会も、2023年6月の生成AIサービスの利用に関する注意喚起等で、個人情報を含む指示文を入れるときは利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう求めています。評価や面談の記録まで扱う場合の区分は、人事部の生成AI導入で整理しました。
会社がMicrosoft 365 Copilotを入れている場合
会社がMicrosoft 365を使っていれば、職場のアカウントでCopilot Chatを使えることがあります。職場のアカウントで使う場合、入力と回答はAIの学習に使われないとMicrosoftは説明しています。
この記事の指示文は、ChatGPTをCopilotに読み替えればそのまま貼れる。無償版と、社内のファイルを読んで答える有償版の違いは、Copilotの使い方で扱っています。
コピペで使えるChatGPTの指示文8例
8つとも、ChatGPTの立場・やってほしいこと・条件・出してほしい形の4つで書いています。【 】の中を自分の作業に差し替えて貼ってください。
各例の下には、貼る前に伏せるものと、答えが出た後に確かめることを付けました。
メールの返信文をChatGPTで作る
あなたは会社の総務担当者です。
次の用件で、取引先への返信メールを書いてください。
用件:【例 請求書の再発行の依頼を受けた。10月10日までに再送する】
相手:【例 B社のご担当者様】
条件:
・200字以内。敬語はていねいすぎない程度
・お詫びの言葉は1回だけ
・件名を1つ付ける
- 貼る前 相手の氏名と会社名は「B社のご担当者様」のように置き換える
- 確かめること 日付と約束した内容が、用件と同じになっているか
議事録をChatGPTで会議メモから作る
あなたは会議の記録係です。
次の会議メモを、議事録にまとめてください。
出してほしい形:
1. 決まったこと
2. 次にやること(担当と期限を付ける)
3. 決まらなかったこと
条件:
・メモにない内容は書かない
・担当や期限がメモにない場合は「未定」と書く
会議メモ:
【ここにメモを貼る】
- 貼る前 発言者の名前は「課長」「営業担当」のように役職に置き換える
- 確かめること 「決まったこと」に、まだ決まっていないことが混ざっていないか
社内のお知らせ文をChatGPTで作る
あなたは総務の担当者です。
次の内容で、社員向けのお知らせ文を作ってください。
内容:【例 年末調整の書類を11月13日(金)までに提出。提出先は総務部】
条件:
・最初の1行で、何をいつまでにすればよいかが分かるようにする
・300字以内で、箇条書きを使う
- 貼る前 個人名が入らない作業なので、そのまま貼れる
- 確かめること 日付と曜日の組み合わせが正しいか(ChatGPTは曜日を間違えることがある)
Excelの関数をChatGPTに書いてもらう
あなたはExcelに詳しい事務担当者です。
次の表で、【例 部署ごとの残業時間の合計】を出す関数を書いてください。
表の列:
A列 社員番号 B列 部署 C列 日付 D列 残業時間
データは2行目から500行目まで入っています。
条件:
・どのセルに入力するかと、そのまま貼れる関数を示す
・関数の意味を1行で説明する
- 貼る前 表の中身は貼らない。列名と、データが何行あるかだけを書く
- 確かめること 手で計算できる3行だけで試し、答えが合うか
表のデータではなく、列名だけを渡すのがこの例の要点です。氏名や給与額をChatGPTに入れずに、関数だけを手に入れられる。勤怠や給与のデータで使える指示文は、CopilotのExcelでの使い方にもまとめています。
Excelの集計手順をChatGPTに聞く
あなたはExcelに詳しい事務担当者です。
次の表から、【例 部署別・月別の残業時間の一覧】を作りたいです。
ピボットテーブルを使う手順を、画面で押す場所の順に書いてください。
表の列:
A列 社員番号 B列 部署 C列 日付 D列 残業時間
条件:
・手順は番号付きで10個以内
・使っているExcelは【例 Microsoft 365版】
- 貼る前 関数の例と同じく、中身は貼らずに列名だけを書く
- 確かめること 集計した表の合計が、元の表の合計と同じか
手順書(マニュアル)をChatGPTで作る
あなたは業務マニュアルを作る担当者です。
次の作業メモを、初めてこの作業をする人向けの手順書にしてください。
出してほしい形:
・番号付きの手順
・各手順で使うシステムやファイルの名前
・間違えやすい点を最後に3つまで
条件:
・メモにない手順は足さない。抜けている手順は「確認が必要」と書く
作業メモ:
【例 毎月5日までに前月分の交通費精算を締めて経理に送る流れを、思いつくまま書く】
- 貼る前 社内システムのURLやパスワードは書かない
- 確かめること 「確認が必要」と出た箇所を、自分で埋める
社内の問い合わせへの回答案をChatGPTで作る
あなたは人事・総務の担当者です。
社員から次の質問が届きました。下の規程だけを根拠に、回答の下書きを作ってください。
質問:【例 結婚したので、慶弔休暇は何日取れますか】
規程:【規程の該当する条文を貼る】
条件:
・規程に書かれていないことは答えず、「規程に定めがないため確認します」と書く
・回答の最後に、根拠にした条文の番号を書く
- 貼る前 質問した社員の氏名や家族の事情は消す。社外秘の規程は、会社が契約した環境でだけ貼る
- 確かめること 条文の番号と日数を、規程の原文で見直す
データの整形をChatGPTに頼む
あなたはExcelに詳しい事務担当者です。
【例 B列の日付】の書き方がばらばらです。
「2026/10/1」「10月1日」「R8.10.1」が混ざっています。
すべて「2026/10/01」の形に統一する方法を、関数か操作の手順で教えてください。
- 貼る前 氏名や住所の一覧は貼らず、架空の例を3つ書いて渡す
- 確かめること 変換した後の件数が、元の件数と同じか
ChatGPTで時間が減るのは答えを自分ですぐ確かめられる作業
8つの指示文すべてに確かめることを付けたのは、ChatGPTがもっともらしい誤りを書くためです。存在しない条文の番号や、ずれた曜日が、正しい文章と同じ調子で出てくる。
ただ、見直しにかかる時間は作業によって違います。出席した会議の議事録なら、見直しは数分。出ていない会議だと録音を聞き直すことになり、自分で書くより遅くなることもあります。
ChatGPTで時間が減るかどうかは、答えを作る速さではなく、答えの正しさを自分がすぐ判断できるかで決まります。最初に選ぶのは、中身を自分が一番よく知っている作業です。
見直す点は、次の3つに絞れます。
| 見直す点 | 起きやすい誤り | 見直し方 |
|---|---|---|
| 数字・日付・曜日 | 計算の誤りや、日付と曜日のずれ | 元の資料とカレンダーで突き合わせる |
| 名前・条文の番号 | 存在しない条文や、取り違えた名前 | 規程や名簿の原文を開いて見直す |
| 元の文章にない内容 | 気を利かせて、書いていない内容を足す | 指示文に「メモにない内容は書かない」と入れる |
答えが長く、どこを見直せばよいか分からないときは、答えが出た直後に次の指示を貼り、ChatGPT自身に挙げさせます。
今の回答のうち、事実かどうかを確認する必要がある箇所を、すべて箇条書きで挙げてください。
元の文章に書かれていない内容を足した箇所があれば、それも挙げてください。
挙がった箇所だけを原文と突き合わせれば、全文を読み直すより早く終わる。
それでも、見直しの時間を入れると思ったほど減らない作業は出てきます。作業そのものは速くなっても、その前後に確認や手直しの仕事が増えるためです。AIに任せる部分と人が見直す部分の切り分け方を、手戻りが出ない形で整理したのが、資料『AIによる業務効率化が進まない理由 ~業務設計編~』です。
部長に報告する削減時間はChatGPTを使う前と後で測る
見直しの時間まで含めると、どれだけ減るかは測ってみないと分かりません。そこで、同じ作業をChatGPTを使う前と後で測ります。
- 毎週くり返す作業から、測る作業を3つ選ぶ
- 使う前に、1回にかかる時間を3回測って平均を出す(始めた時刻と終えた時刻をメモする)
- 使った後も3回測る。指示文を書く時間と、確かめて直す時間を必ず含める
- 1回あたりの差に1か月の回数を掛けて、月の削減時間を出す
3の見直しの時間を抜くと、部長に出した数字ほどには実際の作業時間が減りません。後で「言うほど減っていない」と言われる原因は、たいていここにある。
記入の例です。数字は書き方を示すための例で、実際に測った値ではありません。
| 作業 | 月の回数 | 使う前(1回) | 使った後(1回・確認込み) | 月の削減時間 |
|---|---|---|---|---|
| 議事録 | 8回 | 45分 | 20分 | 200分 |
| メールの返信 | 40通 | 6分 | 4分 | 80分 |
| 手順書の作成 | 2本 | 120分 | 60分 | 120分 |
| 合計 | 400分(約6.7時間) |
部署の業務すべてを一覧にして時間を書き出す表は、業務棚卸しのフォーマットで紹介しています。
部長への報告に使う1枚のひな形
測り終えたら、次の形で部長に報告します。【 】の中を自分の内容に書き換えて使ってください。
【ChatGPTを使った事務作業の削減報告】
1. 対象にした作業 :議事録・メールの返信・手順書の作成
2. 測り方 :各作業を使う前と後で3回ずつ測定(確認と手直しの時間を含む)
3. 結果 :月400分(約6.7時間)の削減
4. 使った環境 :【例 会社が契約したChatGPT Business】。個人情報と社外秘は入力していない
5. 見つかった誤り :【例 曜日の誤り2件。いずれも確認の段階で修正済み】
6. 浮いた時間の使い道:【例 後回しになっていた申請書の様式の見直しに充てる】
7. 次に試す作業 :【例 社内の問い合わせへの回答案(規程の条文を根拠にする)】
6の使い道は空欄にしないでください。書かずにおくと浮いた時間は別の依頼で埋まり、部長から見ると何も減っていないことになる。部署全体の業務削減として部長に相談するときの1枚の組み立て方は、業務改善を上司に相談する方法で解説しています。
減らす業務と、浮いた時間の使い道は1組で決めるものです。AX支援(AIを使って業務の進め方を変える支援)を行うリデザインワーク社でも、減らす業務を決めるときは、浮いた時間を何に使うかを同時に決めています。
3つの作業を測り終えると、部長からは次に減らす業務を聞かれます。部署の業務全体からAIに任せる業務を決める2つの軸と、業務の仕分け方までを整理したのが、資料『人事AXに取り組む業務を整理するフレームワーク』です。
なお、事務作業のどこからChatGPTを使うかは、リデザインワークのAX支援でも無料でご相談を承っています。
事務職のChatGPT活用は1つの作業を測るところから始める
ChatGPTで事務作業を減らす手順は3つです。会社の契約を確かめ、個人情報と社外秘を入れずに試し、使う前と後の時間を測る。
最初の1件は、中身を自分が一番よく知っている作業から選びます。答えの正しさをすぐ判断できるぶん見直しが短く、減った時間がそのまま数字に出るからです。
8つの作業より先に部署の業務を洗い出したくなったら、業務棚卸しをAIで進めるが使えます。話した内容をAIが業務の手順に分けてくれる方法です。
今週は、お知らせ文か議事録のどちらか1つで、使う前の時間を測るところから始めてください。







