管理部門の適正人数とは|人事・経理・総務の人数比率の目安と、増員の前に業務量を測る方法
経理部長から「月末の締めが回らないので、もう1人増やしてほしい」と申請が上がってきた。管理部門は従業員の何%が普通で、自社は多いのか少ないのか。
調べると従業員の5〜10%が目安とよく書かれていますが、デロイト トーマツ グループが2026年3月に公表した調査では、人事・経理などの間接機能の人数の比率は中央値で11.8%でした。
この記事では、比率の目安から、業務量で必要人数を出す手順、増員とAI活用の費用の比べ方までを説明します。読了後は、どの業務で月に何時間足りないのか、その不足を採用とAIのどちらで補うのかを数字で判断できるようになる。
記事の最後には、業務一覧を貼ると部門ごとの必要人数の見積もりが出る、AIへの指示文を載せました。人を増やさずに業務を減らす進め方は、バックオフィスの業務効率化で整理しています。
管理部門の適正人数とは業務量を残業に頼らず処理できる人数
管理部門の適正人数とは、人事・経理・総務・法務・情報システムなど売上を直接つくらない部門が抱える業務量を、恒常的な残業に頼らずに処理できる人数を指します。課長・部長の割合を示す管理職比率とは別の数字です。
適正人数の出し方は、他社の比率との比較・払える人件費からの逆算・業務量からの積み上げの3つがある。増員の申請に根拠を示せるのは積み上げで、比率は見当をつけるため、逆算は上限を確かめるために使います。
管理部門の人数比率の目安は通説で5〜10%・調査の中央値で11.8%
比率の目安としてよく引かれる「管理部門は従業員の5〜10%」「人事は従業員100人に1人」は、調査に基づく数字ではなく通説です。
調査の数字は、この通説より高く出ています。
デロイト トーマツ グループの「要員・人件費の生産性に関するベンチマーク調査&診断 2025・2026年版」は、企業147社に、管理部門にあたる人事・財務経理・情報システムなど間接機能の人数と人件費を聞いた調査です。
間接機能の人数の比率は中央値で11.8%、製造業は11.0%、非製造業は14.3%でした。同社は7回の調査を通じて中央値が10〜12%程度で推移しているとしており、10%を超えていても、それだけで多すぎるとは言えない。
ただし参加147社のうち69社は正社員1,000名以上の大企業で、中堅・中小企業は自社の過去の比率とあわせて読む必要があります。
部門別の目安は人事・経理とも正社員約63人に1人・総務は担当範囲で決まる
部門別の数字は、同じ調査の2021・2022年版(180社)と規模別の調査から並べました。
| 部門 | 目安になる数字 | 出所と時点 |
|---|---|---|
| 人事 | 担当1人あたり正社員63.3人(中央値)。通説は100人に1人 | デロイト トーマツ(2022年4月公表) |
| 経理・財務 | 担当1人あたり正社員62.5人(中央値) | 同上 |
| 経理・財務 | 従業員100〜199人の会社では担当2〜3人が54.4%、4〜10人が39.7% | ミロク情報サービス(2024年6月調査) |
| 総務 | 担当2人〜5人未満の会社が39.1%、1人の会社が11.4% | インフォマート(2021年5月調査) |
人事は正社員100人あたり約1.6人と、通説より多い。採用や研修を社内でどこまで担うかで変わるため、目安にとどめます。
経理は規模で体制が変わる。ミロク情報サービスの税経システム研究所が経理担当者362人に聞いた調査では、経理を1人で担う会社が従業員50〜99人で15.8%、100〜199人で2.9%。回答者の50.3%は総務・人事も兼務しており、部門別の人数より業務ごとの時間で数える必要があります。
総務の比率を示した調査は、確かめた範囲では見つけられませんでした。インフォマートが総務担当343人に聞いた調査では、総務が給与計算や交通費の処理などの経理業務を担う割合が32.4%、社会保険の手続きが27.4%。総務の人数は、人事と経理の業務をどこまで引き受けているかで決まります。
管理部門の人数比率は事業形態・拠点数・上場準備・外部委託・システム化で変わる
中央値は真ん中の値にすぎず、会社ごとの差は大きい。デロイト トーマツの2023・2024年版では、比率の低い順に並べて4分の1の位置の会社が7.6%、4分の3の位置の会社が18.7%でした。差を生む主な要因は次の5つです。
| 要因 | 比率が高く出る会社 | 比率が低く出る会社 |
|---|---|---|
| 事業の形態 | 少ない社員で多くの取引や契約を扱う | 工場や店舗で多くの社員が働く |
| 拠点の数 | 拠点ごとに事務の担当を置く | 拠点の事務を本社にまとめる |
| 上場の有無と準備 | 決算短信などの開示と内部統制の評価(J-SOX)がある | 非上場で開示の義務がない |
| 外部委託の範囲 | 給与計算や記帳を社内で処理する | 給与計算や記帳を委託する |
| システム化の程度 | 紙の請求書や表計算ソフトでの集計が多い | 会計・勤怠・経費精算のシステムがつながっている |
外部委託の多い会社は、人数だけで比べると管理部門が少なく見えます。デロイト トーマツの調査も、間接機能の人件費と業務委託費の合計を人数とは別に出している(2021・2022年版で総人件費の12.9%)。委託の多い会社は費用で比べます。
上場の準備では、上場後も続く開示の業務と準備期間だけの業務を分けて見積もり、後者は外部の専門家に頼む選択肢もある。
比べる前に数え方も合わせておく。営業事務や事業部の経理担当を含めるかで比率は変わるため、他社の数字より、同じ数え方で追った自社の推移のほうが判断に使えます。
増員の前に管理部門の業務量を測る3つの手順
比率で位置を確かめたら、次は業務量から必要な人数を出します。確かめるのは、どの業務で月に何時間足りないのか。
- 部門ごとに業務を棚卸しし、月間の時間を出す 「月の件数×1件あたりの時間」で計算する。件数は会計や経費精算のシステムに残る実績から数え、来期に増える業務(上場の準備など)は別の行に足す
- 定型の作業のうち、システムやAIへ移せる時間を差し引く 判断の条件が決まっていて例外が少ない作業(入力・照合・一次確認・要約)を選び、移せる割合を小さめに置く
- 残る時間を1人が働ける時間で割り、必要人数と採用の要否を決める 1人の時間は、所定労働時間から会議・研修・休暇を差し引いて置く
業務の洗い出し方は、業務棚卸しとはで詳しく扱っています。
下の表は、経理担当3人の会社が増員を申請された場面の試算で、実在の会社の数字ではない。1人の時間は月140時間と置きました。
| 業務 | 今の月間の時間 | システムやAIへ移す作業と割合 | 移した後の時間 |
|---|---|---|---|
| 請求書の受領と入力 | 60時間(400件×9分) | 読み取りと入力を5割 | 30時間 |
| 経費精算の確認 | 30時間(450件×4分) | 規程との照合を4割 | 18時間 |
| 入金の消し込み | 30時間(300件×6分) | 入金と請求の突き合わせを5割 | 15時間 |
| 支払データの作成と照合 | 50時間(250件×12分) | 請求書との照合を3割 | 35時間 |
| 仕訳の確認と修正 | 70時間 | 勘定科目の候補出しを2割 | 56時間 |
| 月次決算と報告資料 | 150時間 | 差異の説明文の下書きを1割 | 135時間 |
| 社内からの問い合わせ | 30時間(180件×10分) | 回答案の作成を4割 | 18時間 |
| 例外の判断と承認 | 50時間 | 移さない | 50時間 |
| 合計 | 470時間 | 357時間 | |
| 必要人数(合計÷140時間) | 3.4人 | 2.6人 |
今の470時間は、3人で働ける420時間を50時間上回っており、増員の申請には根拠がある。ただし1人増やせば処理できる時間は560時間になり、90時間分の人件費が余ります。
移せる113時間を差し引くと357時間に下がり、3人のまま63時間の余裕が残る。決算の集中する月だけ不足するなら、期間を限った派遣や外部委託で補うほうが費用に見合います。
担当が1人しかいない業務(連結決算や税務申告など)は、時間とは別に、退職時に引き継げるかの問題として洗い出しておく。残業が特定の人に偏っているだけなら、担当の組み替えで足ります。
管理部門の増員とAI活用の費用は3年間の総額で比べる
不足する時間が分かったら、補い方の費用を比べる。増員は人件費が毎年続き、AI活用は最初の構築費が大きいため、同じ期間の総額で比べます。
採用費は方法で変わる。マイナビの中途採用状況調査2026年版(2025年実績)(2025年12月調査)では、管理・事務職の転職サイトの求人広告費が、採用者1人あたり平均32.0万円(中央値10.0万円)でした。
試算では、経験者を人材紹介で採用し、手数料を想定年収の30%と置いた。人件費も年収だけでは足りません。厚生労働省の令和3年就労条件総合調査では、社会保険料の会社負担など給与以外の費用が労働費用の18.0%を占めており、年収400万円なら会社の負担は年に約490万円になります。
| 項目 | 1人を増員する | AI活用で業務を減らす |
|---|---|---|
| 最初にかかる費用 | 採用費120万円 | 構築費300万円(仮定。業務の洗い出し・判断のルール化・設定と試験運用) |
| 毎年かかる費用 | 人件費約490万円 | 運用費60万円(利用料と保守を月5万円と仮定) |
| 3年間の総額 | 約1,590万円 | 480万円 |
| 補える時間 | 月140時間。どの業務にも充てられる | 月113時間。対象の業務に限られる |
見落とされやすいのは、人は1人単位でしか増やせない点です。不足が月50時間でも、採用すれば140時間分の人件費を払うことになる。不足が1人分に満たないうちは、AI活用や外部委託で時間単位に補うほうが費用に合います。
AI活用の費用は対象の業務の数や既存システムとの連携で変わり、内訳は生成AI導入の費用相場で整理している。
来期の予算にAI活用を載せる前に押さえる費用の相場と、業務を金額の単位にまとめてROIを試算する方法を整理したのが、資料『DXやAIによる業務効率化の費用とROI』です。
なお、管理部門の業務量と必要人数の見積もりは、リデザインワークのAX支援でも無料でご相談を承っています。
管理部門を少人数で回す会社は外部委託・シェアードサービス・AIを使い分ける
不足する時間を補う方法は、増員とAI活用に限らない。少人数で回している会社は、外部委託とシェアードサービスを加えた3つを使い分けています。
| 方法 | 向いている業務 | 社内に残る業務 |
|---|---|---|
| 外部委託 | 給与計算・記帳・社会保険の手続きなど、手順が決まっていて件数の多い業務 | 委託先から戻った結果の確認・例外の判断 |
| シェアードサービス | グループ会社ごとに重複している経理や人事の処理 | 各社に固有の判断・現場との調整 |
| AI | 全件の一次確認・照合・要約・問い合わせの回答案など、判断の条件が決まっている作業 | 例外と重要事項の判断・承認 |
外部委託で見落とされやすいのは、社内に残る確認の作業です。リデザインワークのAX支援(AIを前提に業務の進め方を見直す支援)で担当した例では、給与計算を委託していながら、戻った結果を約100項目にわたり人手でダブルチェックし、月約150時間かかっていた。
確認の基準を判定ルール表にまとめ、例外だけを人が確認するようにしたところ、月3〜5時間規模まで圧縮できました。委託しても、確認の作業が社内に残れば人数は減りません。進め方は給与計算・年末調整のAI活用で扱っています。
シェアードサービスは、グループ会社の管理業務を1か所に集める方法。集めるだけでは人数が減らない理由は、シェアードサービスとはで整理しました。
AIは、全件を人が確認していた作業で効果が出る。リデザインワークが多店舗の運営を支援した例では、全件の一次確認と日報の要約をAIに任せ、経営層は例外と重要事項だけを確認する体制にしました。人事部門の発令に関わる業務でも、判定を仕組み化し、年約2,000時間の削減を見据えた体制を作っています。
3つの例に共通するのは、人が判断する範囲を例外に限った点です。浮いた時間の使い道は、決算の早期化や予算と実績の差の分析など、先に決めておく。リデザインワークのAX支援でも、定型業務をAIで減らし、浮いた人と時間を事業に効く仕事へ再投資するところまでを設計しています。
管理部門の適正人数をAIで見積もる指示文
業務量を測る3つの手順は、AIに下書きさせると早く進む。部門ごとの業務一覧を貼り付けると、月間の時間、システムやAIへ移せる時間、必要人数を表で返す指示文です。ChatGPT・Claude・Microsoft Copilotなど、社内で使える生成AIに貼り付けてください。
あなたは管理部門の業務量を見積もる担当者です。
下に貼り付けた業務一覧から、部門ごとの必要人数を見積もってください。
# 前提
・1人が担当業務に充てられる時間は月140時間とする
・現在の人数:経理3人、人事2人、総務2人(自社の人数に書き換える)
# 手順
1. 業務ごとに「月の件数×1件あたりの時間」で月間の時間を出す。件数のない業務は、月の合計時間をそのまま使う
2. 業務ごとに、判断の条件が決まっていて例外が少ない作業(入力・照合・一次確認・要約・定型の回答)を挙げ、システムやAIへ移せる割合を0〜6割の範囲で置く。置いた理由を1文で書く
3. 部門ごとに、現在の月間の時間と、移した後の月間の時間を合計する
4. 合計を140時間で割り、必要人数を小数第1位まで出す
5. 現在の人数と比べ、足りない時間または余る時間を示す
# 出力
・表1:業務名|部門|月間の時間|移せる作業|移せる割合|移した後の時間|割合の理由
・表2:部門|現在の人数|現在の月間の時間|移した後の月間の時間|必要人数(現在)|必要人数(移した後)|足りない時間または余る時間
・担当者が1人しかいない業務があれば、表2の下に一覧で示す
・件数や時間が書かれていない業務は推測で埋めず、「要確認」として質問を3つまで返す
# 業務一覧
(ここに「業務名・部門・担当者の人数・月の件数・1件あたりの時間」を1行ずつ貼り付ける)
社員の氏名や給与の金額は貼り付けないでください。業務名・部門・件数・1件あたりの時間だけで見積もれます。AIが置く割合は推測なので、担当者と1業務ずつ確かめてから使います。
管理部門の適正人数は比率でなく業務量から決める
管理部門の人数比率は、調査の中央値で10〜12%程度ですが、会社ごとの差は2倍以上あります。比率で分かるのは、中央値から自社がどれだけ離れているかまで。増員の要否は、業務量からシステムやAIへ移せる時間を差し引いた残りで決まります。
増員の申請を受けたら、管理本部長が部門ごとの業務一覧と月間の時間を出し、経営会議で、不足する時間を採用・外部委託・AI活用のどれで補うかを決める。1人の増員は、試算では3年で約1,590万円の判断です。この順番を踏めば、その判断を数字で説明できます。
人数を減らすのか、工数を減らすのかを社内に説明するときの言葉の使い分けは、省人化と省力化の違いで整理しています。






