人事評価シートの作り方|業績・能力・情意の項目設計と職種別の記入例、書けない欄が出る原因
期末に配った評価シート。返ってきた自己評価の欄には「特になし」「目標どおり」の2行しか書かれていない。上司の欄も似た状態で、面談は5分で終わる。翌年、シートの様式を作り直す。
人事評価シートは、様式そのものが原因で機能しなくなることは、実はあまりありません。埋まらない欄が出るのは、シートより手前にある制度の側に理由があります。
評価シートは、等級と評価と報酬のつながりを1枚に写したもの。幹が決まっていなければ、様式をいくら整えても書く材料が出てきません。
この記事では、人事評価シートの役割と3つの評価項目を整理したうえで、作る前に決めておくこと、項目設計の4手順、職種別の記入例、記入欄が埋まらない原因を順に説明します。
記事の最後には、自社の評価シートの項目案を作るプロンプトを掲載しました。等級定義と職種を貼り付ければ、業績と能力と情意の項目案が記入例つきで出るので、様式づくりの下書きとしてお使いください。
人事評価シートとは評価の根拠を残す書式
人事評価シートとは、評価の対象期間に何をどこまで達成したかを、評価者と被評価者の双方が記録し、点数の根拠を残すための書式です。点数をつけることが目的ではなく、点数の理由を後から説明できる状態にすることが目的にあたります。
シートが果たす役割は3つ。評価の材料をそろえること、評価者の判断を記録に残すこと、面談で本人に伝える内容を用意することです。
3つのうち、抜けやすいのは2つ目。点数だけが残り、なぜその点数なのかが残っていない会社は珍しくありません。
人事評価シートの3つの評価項目
評価項目は、業績と能力と情意の3つに分けるのが一般的です。何を見るのかがそれぞれ違います。
| 項目 | 何を評価するか | 具体例 |
|---|---|---|
| 業績評価 | 期間内に出した成果 | 売上、契約件数、新規顧客数、原価低減額、納期の遵守率 |
| 能力評価 | 成果を出すために発揮した力 | 企画提案力、交渉力、スケジュール管理、専門知識 |
| 情意評価 | 仕事への取り組み姿勢 | 責任感、積極性、協調性、規律性 |
3つの配分は等級で変えます。上位等級ほど業績の比重を上げ、初級等級では能力と情意を厚くする。担っている役割が違うため、同じ配分では説明がつかないためです。
情意評価は、扱いを誤ると印象評価になります。行動の事実で書けない情意の項目は、配分を下げるか、能力評価の項目に言い換えたほうが運用は持ちます。
人事評価シートを作る前に決める3つのこと
様式に手をつける前に、制度の側で決めておくことが3つあります。ここが空いたままだと、項目を並べても評価者が判断できません。
- 等級ごとの役割定義 この等級では何を任せるのか。業績と能力の項目は、ここから降ろす
- 評価の期間と回数 半期か通期か。目標の設定と振り返りをいつ行うか
- 評価結果の反映先 昇給、賞与、昇格のどれにどう反映するか。反映の幅も決める
3つ目の反映先が決まっていないと、評価は儀式になる。差がついても処遇が動かないなら、評価者が悩む理由がなくなるためです。
この3つを1つずつ順番に合意していくと、時間がかかります。リデザインワークの人事制度設計支援でも、従来は等級から評価、報酬へと順に合意を取り、6か月から1年をかけていました。
順に進める理由は、巻き戻しの費用にあります。報酬の段階で「やはり等級をこうしたい」と出ても、戻すと修正の工数と費用がかかるため、実務上は戻れない。
いまはAIで3つの制度の幹を先に作り、最終形と運用上の懸念をまとめて見られるようにしています。変数を変えた複数の案を同時に比べられるため、役員と現場社員へのインタビューを含めて2か月から3か月で作り切り、残りの時間を運用の議論に回せます。
制度全体の設計の考え方は人事評価制度の設計方法で扱っています。
人事評価シートを作る4つの手順
幹が決まったら、様式に落とします。手順は次の4つ。
- 等級ごとの役割定義から、業績と能力の項目を降ろす。定義に無い項目をシートに足さない
- 職種ごとに業績の指標を置き換える。能力と情意は全社で共通、業績だけ職種別にすると管理が軽くなる
- 記入欄に、書く内容の指示を入れる。「何を、どれだけ、どのように」の3点を欄の見出しに書く
- 点数の欄の隣に、根拠を書く欄を必ず置く。根拠欄のないシートは、翌期に振り返る材料が残らない
4つのうち、実務で最も効くのは3番目です。空欄に「自己評価」とだけ書かれたシートは、書き方が人によって変わり、集まった内容を比べられません。
欄の見出しを「担当した業務と、達成した数量と、工夫した点」に変えるだけで、記入の質はそろう。
人事評価シートの職種別の項目と記入例
業績の項目は職種で置き換えます。よくある4職種の例を挙げます。
| 職種 | 業績の指標の例 | 記入例 |
|---|---|---|
| 営業 | 売上、新規顧客数、既存顧客の継続率 | 売上目標1億円に対し1億2000万円を達成。新規は8社で目標比160% |
| 事務 | 処理件数、処理時間、誤りの発生率 | 月次の請求処理を定型化し、処理時間を月20時間削減。誤りは0件 |
| 技術 | 納期の遵守率、不具合の発生率、原価 | 担当3案件すべてを納期内に完了。リリース後の不具合は2件で前年から半減 |
| 管理職 | チームの目標達成率、部下の育成、要員計画 | チーム目標を105%で達成。担当2名を上位等級へ昇格させた |
記入例に共通するのは、数量と対象期間が入っていること。「頑張った」「貢献した」で終わる記述は、評価者が点数に変換できません。
成果が数字で出にくい職種では、業績の代わりにプロセスの項目を置きます。事務職の「処理時間の削減」は、その置き換えにあたります。
人事評価シートの記入欄が埋まらない2つの原因
様式を直しても埋まらない場合、原因は2つのどちらか。順に確認します。
原因1 期初に目標が具体的に決まっていない
期末に書けないシートは、たいてい期初の設定に戻ります。「顧客満足度の向上」のような目標は、期末に達成したかどうかを本人も判定できません。
目標の立て方は人事考課のやり方やMBOとはで扱っています。期初の30分が、期末の2時間を減らします。
原因2 期中の記録が残っていない
もう一つは、記録の問題です。半年前の行動を期末にまとめて思い出す作業は、誰にとっても難しい。
記憶に頼ると、直近1か月の出来事だけが書かれます。1on1の記録や日報を月1回だけ振り返る運用にすると、材料は自然にたまる。行動の事実で評価する進め方はコンピテンシー評価の運用でも整理しています。
人事評価シートの項目案を作るプロンプト
等級定義から項目を降ろす作業は、AIに下書きさせると速くなります。次の指示文をそのまま貼り付けて使えます。
あなたは人事制度設計のコンサルタントです。
以下の情報をもとに、人事評価シートの項目案を作成してください。
【等級と役割定義】
(対象の等級の定義文をそのまま貼り付け)
【対象の職種と主な業務】
(職種名と、日常業務を5つほど貼り付け)
【評価の期間と反映先】
(例: 半期評価、賞与と昇給に反映)
出力の条件:
1. 業績・能力・情意の3区分で項目案を作り、区分ごとの配点も提案してください。
配点は等級の役割に合わせ、根拠を1行で添えてください。
2. 業績の項目は、この職種で測れる指標に置き換えてください。
数字で測れない業務は、プロセスの指標に置き換えてください。
3. 各項目に、被評価者が記入する欄の見出しを
「何を、どれだけ、どのように」の形で作成してください。
4. 各項目について、良い記入例と、評価者が点数に変換できない悪い記入例を
1つずつ挙げてください。
出てきた項目案は、そのまま配らずに1部署で試してください。項目数が多すぎる場合は、記入に30分を超えるかどうかで判断します。
なお、人事評価シートの設計や評価制度の見直しは、リデザインワークの人事制度設計支援でも無料でご相談を承っています。
人事評価シートは根拠が残った分だけ使える
評価シートの様式を毎年作り直している会社は、たいてい原因を様式に求めています。実際に効くのは、期初の目標設定と、期中の記録と、反映先の3つ。
様式はその3つを写す紙にすぎません。
来期のシートに手を入れる前に、今期のシートを10枚だけ読み返してみてください。根拠の欄が埋まっていないなら、直すのは欄の並びではなく、期中の運用のほうになります。






