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AI時代の人事評価制度の設計方法|等級-評価-報酬の幹を決め、手戻り少ないスリムな設計を

「今度こそ納得感のある評価にしよう」。そう言って制度を作り直した1年後、また同じ不満が出てくる。評価が甘い上司と辛い上司がいる。何をすれば上がるのか分からない。がんばっても給与が変わらない。

制度の作り直しは、たいてい正しい手順で進んでいます。等級を定義し、評価項目を決め、評価シートを作り、説明会を開く。手順書どおりです。

それでも不満が戻ってくるのは、3つの制度がつながっていないか、運用の側が変わっていないかのどちらかです。評価制度だけを作り直しても、等級の定義が曖昧なままなら評価の基準は決まらず、報酬に反映されないなら評価の意味は伝わりません。

この記事では、人事評価制度が何でできているのかを整理したうえで、作る前に決めておく経営の論点、設計の6ステップ、3つがつながっていないときに起きること、そして運用で壊れる箇所までを扱います。

記事の後半には、自社の等級定義と評価項目を貼り付けて、つながっていない箇所を洗い出させるプロンプトを載せました。設計に入る前の現状確認にお使いください。

人事評価制度とは等級と評価と報酬の3つでできている

作り方に入る前に、何を作るのかを確認します。人事評価制度と呼ばれるものは、実際には3つの制度の組み合わせです。

制度 決めること 答える問い
等級制度 社員をどの基準で格付けするか この会社では、何ができる人が上位なのか
評価制度 何をどう評価するか その基準に、いまどれだけ届いているのか
報酬制度 評価をどう処遇に反映するか 届いたら、何がどれだけ変わるのか

この3つは順番に依存しています。等級で「何ができる人が上位か」が決まっていなければ、評価の基準は書けません。評価で「どれだけ届いたか」が出なければ、報酬に反映する根拠がありません。

評価制度だけを単独で作り直す相談は多いのですが、リデザインワークの人事制度設計支援で現状を確認すると、詰まっているのは等級の定義であることがほとんどです。

人事評価制度を作る前に決める経営の論点

3つの制度を作る前に、さらに手前で決めることがあります。制度から作り始めると、必ず途中で止まります。

止まる理由は単純で、等級の定義を書こうとした瞬間に「うちは何ができる人を上に置くのか」という問いに突き当たるからです。この問いは人事だけでは決められません。

順番は、経営から降ろします。

  1. 事業がこれから何をするのか。新規事業に人を出すのか、既存事業の生産性を上げるのか。
  2. そのために、どんな組織になる必要があるのか。専門性を深めるのか、幅広く動ける人を増やすのか。
  3. だから、何ができる人を上位に置くのか。ここではじめて等級の定義が書けます。

この3段の因果が通っていない制度は、説明のときに必ず詰まります。なぜこの評価項目なのかと聞かれて、他社もそうしているから、と答えることになるためです。

逆にここが通っていれば、細部の議論は速く進みます。判断に迷ったとき、事業がこれから何をするのかに戻れば答えが出るからです。

人事評価制度の作り方は6ステップ

経営の論点が決まったら、設計に入ります。全体では6つのステップです。

  1. 現状を確認する。いまの等級定義・評価項目・給与テーブルを1枚に並べ、つながっていない箇所を洗い出します。
  2. 等級を定義する。各等級で「何ができる状態か」を行動で書きます。役職名や在籍年数で定義しません。
  3. 評価項目を決める。等級ごとの期待から逆算して項目を決めます。全等級で同じ項目にすると、上位等級の評価が甘くなります。
  4. 報酬への反映を決める。評価の結果が、昇給・賞与・昇格のどれにどう効くかを数字で決めます。
  5. 運用のルールを決める。目標設定と評価の時期、評価者の範囲、調整会議の進め方、本人への伝え方まで決めます。
  6. 評価者を訓練する。制度の説明ではなく、実際のケースで評価をつける演習をします。

手戻りが起きやすいのは3番です。評価項目を先に決めてから等級に戻ると、項目と等級の対応が合わなくなります。2番を飛ばして3番に入らないでください。

評価項目そのものの考え方はコンピテンシー評価とはで、評価と処遇の関係は人事考課とはで詳しく扱っています。

等級と評価と報酬がつながっていないと起きること

3つの制度は、どこが切れているかによって出てくる症状が変わります。不満の内容から、どこを直すべきかを逆算できます。

現場から出てくる声 切れている箇所 直す場所
評価者によって評価が違う 等級の定義が行動で書かれていない 等級定義
何をすれば上がるのか分からない 等級の期待と評価項目が対応していない 評価項目
がんばっても給与が変わらない 評価が報酬に反映される幅が小さい 報酬制度
評価は高いのに昇格しない 昇格の判断基準が評価と別にある 昇格要件
上司が評価を説明できない 評価者への訓練が説明会で終わっている 運用

最初の2つは、どちらも等級側の問題です。評価がばらつくとき、評価者の目線合わせをするのが一般的な対処ですが、そもそも基準が行動で書かれていなければ、目線は合いません。

3つ目も見落とされます。評価の差が昇給額で数千円にしかならない制度では、評価に納得しても行動は変わりません。反映の幅は、制度の思想がいちばん出る場所です。

AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか
無料ダウンロード|人事評価制度

AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか

制度改定に費用と半年をかけたのに、出てきたのはどこかで見たことのある制度だった。AIに何を任せ、どこから人が引き取るかを決めないまま渡しているからです。人事責任者が押さえるべきAIに任せられる範囲と、浮いた原資の置き場所まで解説します。

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評価手法は等級の高さで使い分ける

評価項目を決めるとき、どの手法を使うかで議論になります。代表的な3つは、向いている対象が違います。

手法 何を評価するか 向いている対象
目標管理(MBO) 期初に立てた目標の達成度 成果が数字で出る職種・上位等級
コンピテンシー評価 成果につながる行動の発揮度 成果が個人に帰属しにくい職種・中位等級
360度評価 周囲から見た行動の観察結果 管理職の育成用途

1つに絞る必要はありません。上位等級は目標管理の比重を上げ、下位等級は行動評価の比重を上げる、という配分が現実的です。上位ほど成果への責任が明確で、下位ほど行動の積み上げが評価対象になるためです。

360度評価を処遇に直結させるのは避けてください。評価される側が周囲との関係を優先するようになり、本来見たかった行動が観察できなくなります。育成の材料として本人に返す用途に限るのが安全です。

人事評価制度は運用で壊れる

制度が完成したあと、実際に不満が出るのはここからです。設計が正しくても、運用の3か所で壊れます。

一つ目は、目標設定の質です。期初に立てた目標が「業務を円滑に遂行する」のような書き方だと、期末に達成度を判定できません。目標設定の時点で、何がどうなっていたら達成なのかを数字か状態で書けているかを確認します。

二つ目は、評価者の負荷です。1人の管理職が20人を評価する体制では、丁寧な評価は物理的に不可能です。評価が甘くなるのは意識の問題ではなく、時間配分の結果です。評価者1人あたりの人数は、制度設計の段階で確認してください。

三つ目は、本人への伝え方です。評価結果だけを伝えて終わると、次に何をすればよいかが残りません。評価の根拠と、次の等級に上がるために足りていないことを、行動の言葉で伝える場が必要です。

この3つはいずれも制度の文書には現れません。だから制度を作り直しても同じ不満が戻ってきます。作り直すかどうかを判断する前に、運用のどこが壊れているのかを確認する価値があります。

現状のつながりを確認するプロンプト

設計に入る前に、いまの制度のどこが切れているかを洗い出します。手元の等級定義と評価項目を貼り付けて、AIに突き合わせさせると早く進みます。

あなたは人事制度の設計者です。以下は当社の等級定義と評価項目、報酬への反映ルールです。

1. 各等級の定義が、行動で書かれているか、役職名や在籍年数で書かれているかを判定してください。
2. 等級ごとの期待と、その等級に適用される評価項目が対応しているかを確認し、
   対応していない箇所を指摘してください。
3. 評価結果が報酬に反映される幅を確認し、評価の差が処遇の差として現れるかを判定してください。
4. 以上を踏まえ、最初に直すべき箇所を1つ挙げ、その理由を書いてください。

専門用語は使わず、経営会議でそのまま説明できる言葉で書いてください。

(ここに等級定義・評価項目・報酬ルールを貼り付け)

出てきた指摘は、そのまま採用するものではありません。現場の担当者が「これは意図してこうしている」と反応した箇所には、文書に書かれていない経緯があります。その確認をするために案を出させる、という使い方をしてください。

人事評価制度で判断に迷いやすい3つの論点

設計を進めると、社内で必ず議論になる点があります。

等級は何段階が適切か。社員数100人規模なら5段階から7段階です。段階を増やすと昇格の機会は増えますが、等級ごとの違いを行動で書き分けられなくなります。書き分けられる数が上限です。

評価は絶対評価か相対評価か。評価は絶対評価で行い、報酬への配分の段階で原資の制約を反映する形が扱いやすい形です。評価の時点で相対化すると、本人へのフィードバックができなくなります。

制度改定はどれくらいの周期で行うか。制度そのものは5年程度もちます。ただし等級の定義は、事業の方向が変わったときに見直しが必要です。周期ではなく、事業の節目で見直すものと考えてください。

人事評価制度は経営の言葉で説明できるかで決まる

人事評価制度が機能するかどうかは、精緻さでは決まりません。なぜこの基準なのかを、事業がこれから何をするのかという言葉で説明できるかで決まります。

説明できる制度は、細部に矛盾があっても運用の中で直っていきます。説明できない制度は、細部が整っていても現場で形だけになります。

制度と処遇の関係は人事考課とは、等級の考え方の違いはジョブ型雇用のメリットとデメリットで扱っています。

なお、自社の等級定義と評価項目のつながりの確認については、リデザインワークの人事制度設計支援でも無料でご相談を承っています。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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