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コンピテンシーレベルの決め方|5段階の書き分けと、評価者が判定に迷わない行動記述

評価会議で毎年もめるのは、いつも同じ場所です。「この行動はレベル3ですか、4ですか」。定義を読み上げても、読み上げるほど両方に読める。結局は、去年の点数を基準にして落ち着く。

コンピテンシーの項目そのものは、他社の事例や雛形を参考にすれば数週間で形になります。ところが、レベルの段階を書く作業だけは雛形が使えません。

理由は、段階の記述が自社の等級と対になっていないと機能しないからです。レベルは行動の名前ではなく、その行動をどこまで自分で回せるかの度合いを表します。

この記事では、コンピテンシーレベルの意味と一般的な5段階を整理したうえで、そのまま使うと判定が割れる理由、等級との対応づけ、書き分けに使う3つの変数を順に説明します。

記事の最後には、レベルの記述を書き分けるプロンプトを掲載しました。手元の項目を貼り付ければ、等級ごとの行動記述の案が5段階で出るので、定義づくりの下書きとしてお使いください。

コンピテンシーレベルとは行動の発揮度を段階で表した基準

コンピテンシーレベルとは、成果につながる行動をどこまで発揮できているかを段階で示した基準です。同じ「課題を設定する」という行動でも、指示を受けてから動く人と、自分で課題を見つけて周囲を巻き込む人では、到達している段階が違います。

コンピテンシーそのものの意味と、能力やスキルとの違いはコンピテンシーとはで整理しています。項目を作る段階と、段階を書く段階では、必要な作業がまったく違います。

段階を置く目的は、点数をつけることではありません。何ができるようになれば次の等級なのかを、本人に説明できるようにすることにあります。

コンピテンシーの5段階レベルは受動行動から始まる

実務でよく使われるのは、行動の主体性で分けた5段階。まず一般的な区分を確認します。

レベル 名称 行動の中身
1 受動行動 上司や先輩から具体的な指示を受けて動く
2 通常行動 担当業務を指示を待たずにこなすが改善の提案はしない
3 能動行動 目的を理解し自分の判断で課題に取り組む
4 創造行動 現状を変えるための新しい方法を考えて実行する
5 パラダイム転換行動 前提そのものを変える案を出し周囲を巻き込んで実現する

この5段階は、多くの人事向けメディアや研修会社が同じ形で紹介しています。共通の枠組みがあること自体は、社内の説明を楽にします。

問題は、この5つをそのまま評価基準として配ったときに起きる。

コンピテンシーレベルをそのまま配ると判定が割れる

一般的な5段階は、行動の主体性という1つの軸だけで作られています。実務の行動は、主体性だけでは並びません。

たとえば、若手が自分の判断で新しい資料の作り方を提案した場合。主体性で見れば創造行動ですが、対象は自分の担当業務の範囲に収まっています。一方で、部長が全社の業務プロセスを組み替えた場合も同じ創造行動になる。

同じ段階に、影響の範囲がまったく違う行動が同居する。評価者が迷うのは基準を読んでいないからではなく、1つの軸では区別できない行動を、1つの段階に入れるよう求められているためです。

もう一つの割れ方は、記述に程度を表す言葉しかない場合に起きます。「十分に発揮している」「おおむね発揮している」という書き分けは、判定の材料を評価者の記憶に委ねることになる。

コンピテンシーレベルは等級に対応させて決める

軸を増やす前に、レベルと等級の対応を決めます。ここが決まっていないと、レベル4が誰にとってのレベル4なのかが定まりません。

等級の層 期待するレベル 判定の考え方
初級(入社1年から3年) レベル2が標準 レベル3が出れば昇格の候補
中堅(担当者の中心) レベル3が標準 レベル2が続けば要因を確認する
上級(主任から係長) レベル4が標準 レベル3は据え置き
管理職 レベル4から5 レベル5は全社への影響で判定する

対応づけると、判定の会話そのものが変わる。「Aさんはレベル3か4か」ではなく「Aさんは中堅等級として標準に届いているか」という問いになるためです。

等級の定義そのものが行動で書けていない場合は、先にそちらを整えます。等級制度の作り方で手順を扱っています。

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コンピテンシーレベルの書き分けは3つの変数で作る

等級との対応が決まったら、記述を書き分けます。程度を表す言葉を使わずに段階を作るには、3つの変数を動かします。

  • 自律度 どこまで自分で判断して動くか。指示を受けて動く、方針を受けて自分で決める、方針そのものを立てる
  • 難易度 どれだけ前例のない仕事か。前例のある業務、条件が変わった業務、前例のない業務
  • 影響範囲 行動が届く範囲はどこまでか。自分の担当、チーム、部門、全社

3つのうち、1段階につき動かすのは1つか2つに絞ります。3つ同時に上げると、レベル間の差が大きくなりすぎて、中間に該当者がいなくなる。

書き分けの例を、課題設定という項目で示します。

レベル 自律度 影響範囲 記述
2 指示を受けて動く 自分の担当 上司が示した課題に対し、担当範囲の作業を計画して実行する
3 方針を受けて自分で決める 自分の担当 部門の方針から自分の担当の課題を特定し、優先順位をつけて実行する
4 方針を受けて自分で決める チームから部門 部門の課題を特定し、関係者を巻き込んで解決の手順を設計する
5 方針そのものを立てる 全社 全社の課題を提起し、他部門を含む合意を作って実行に移す

コンピテンシーレベルの記述は良い例と悪い例で確かめる

書き上げた記述が判定に使えるかは、2つの問いで確認できます。行動が観察できるか、そして期末に事実を挙げられるか。

悪い例 何が問題か 良い例
高いレベルで課題解決に取り組んでいる 高いの基準が人によって違う 前例のない案件で、関係部署と調整して解決策を実行した
主体性を十分に発揮している 十分の判定材料がない 上司の指示を待たず、担当業務の課題を月次で提起した
周囲によい影響を与えている 影響の範囲が特定できない 自分の手順を標準化し、チームの3名が同じ方法で作業できるようにした

良い例に共通するのは、期末に「いつ、どの案件で」と聞かれて答えられること。

答えられない記述は、評価会議で必ず解釈の議論になります。

コンピテンシーレベルの記述を書き分けるプロンプト

3つの変数を動かす作業は、AIに下書きさせると速くなります。次の指示文をそのまま貼り付けて使えます。

あなたは人事制度設計のコンサルタントです。
以下の条件で、コンピテンシー項目のレベル記述を作成してください。

【コンピテンシー項目】
(例: 課題設定、対人影響力、品質管理 など項目名と一言の説明)

【等級とレベルの対応】
(例: 初級=レベル2が標準、中堅=レベル3、上級=レベル4、管理職=レベル4から5)

【対象の職種と業務の例】
(担当している業務を3つほど具体的に貼り付け)

出力の条件:
1. レベル1から5の記述を、それぞれ60字程度で作成してください。
2. 各レベルで「自律度」「難易度」「影響範囲」の3変数がどう変わるかを表で示し、
   1段階につき動かす変数は1つか2つに収めてください。
3. 「十分に」「高いレベルで」「積極的に」など程度を表す言葉は使わず、
   観察できる行動だけで書いてください。
4. 各レベルについて、期末に評価者が確認する事実の例を1つずつ挙げてください。

出てきた記述は、そのまま配らずに現職者で当ててみてください。中堅等級の社員が全員レベル4に見えるなら、段階の幅が狭すぎます。

コンピテンシーレベルは判定できた分だけ運用できる

人事制度は設計2割、運用8割。リデザインワークの人事制度設計支援で見てきた範囲でも、レベル定義まで作り込んだ会社と、運用まで届いた会社は一致しません。

差がつくのは、記述の美しさではなく、期末に事実を挙げられるかどうか。

段階を5つ置いたのに、実際には3と4しか使われていない会社は珍しくありません。使われていない段階は、記述を直すか、段階そのものを減らす。評価者の目線をそろえる進め方はコンピテンシー評価の運用で扱っています。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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