Microsoft AIエージェントとは|Copilot Studioで作る手順と使いどころ
Copilotを配ってしばらく経つと、次に出てくるのが「同じ質問に毎回答えるのをやめたい」という声です。有給の繰越、住所変更の手続き、育児休業の申請期限。人事に来る質問の多くは、答えが規程に書いてあります。
ここで登場するのがAIエージェントです。ただし、この言葉も指すものが広く、社内で会話が噛み合わないことがあります。自律的に判断して動く仕組みを想像する人と、社内文書に答えるチャットを想像する人が混ざるからです。
そこでこの記事では、Microsoftの環境で使えるAIエージェントとは何かをCopilotとの違いから整理し、Copilot Studioで作る5つの手順、向いている業務の見分け方、失敗する原因までを扱います。
記事の後半には、最初に作る1体を選ぶための判断表と、社内に残すものの一覧を載せました。着手する業務を決める材料としてお使いください。
Microsoft AIエージェントとCopilotの違い
まず言葉を整理します。Microsoftの環境で「AIエージェント」と呼ばれるのは、特定の業務のために作られた、自社の資料に答える仕組みです。
| Microsoft 365 Copilot | AIエージェント(Copilot Studio) | |
|---|---|---|
| 使う人 | 個人が自分の作業に使う | 部署や全社の人が同じ窓口を使う |
| 参照する範囲 | 本人がアクセスできる全体 | 作成時に指定した資料だけ |
| 答え方 | 質問ごとに毎回変わる | 決めた手順と範囲で一定 |
| 用意するもの | ライセンスの割り当て | 参照する資料と、答えられないときの動き |
| 残るもの | 個人の使い方の工夫 | 組織で共有される仕組み |
もっとも大きな違いは、最後の行です。Copilotの使い方は個人の中に残りますが、エージェントは組織に残ります。担当者が異動しても、同じ品質で答えが返る状態になります。
なお、Copilot Studioは別のライセンスで、使った分だけの従量課金です。Microsoft 365 Copilotとは契約が別になる点に注意してください。
AIエージェントに向いている業務の見分け方
すべての業務に作る必要はありません。向いているのは、質問が多く、答えが文書で決まっている業務です。
| 答えが文書で決まっている | 判断や交渉が要る | |
|---|---|---|
| 質問が多い | 最初に作る。人事の制度問い合わせが代表例 | 材料を集める工程だけを任せる |
| 質問が少ない | 手が空いたときに作る | 作らない |
左上に入るのは、人事なら年末調整の手続き、休暇の申請方法、経費精算のルール、社内システムの使い方あたりです。
逆に、右上に作ろうとすると失敗します。「この場合は評価に影響しますか」のような質問は、規程に書かれていない判断を含みます。答えられないまま返答すると、間違った回答が権威を持って広まります。
線引きの考え方は人事のAI活用はどこまで任せるかで、工程ごとの表として整理しています。
Copilot StudioでAIエージェントを作る5つの手順
作る流れは次のとおりです。ノーコードで作れるため、情報システム部門でなくても進められます。
- 対象の質問を集める。過去半年に人事へ来た問い合わせを、メールやチャットから50件ほど書き出します。ここが設計の材料になります。
- 参照させる資料を1か所にそろえる。就業規則、育児介護休業規程、社内マニュアル、過去の回答例。最新版だけを残すことが要点です。
- 答えられる範囲と、答えないことを決める。指定した資料の中だけで答えること、書かれていないことは推測しないこと。この2つを最初に設定します。
- 答えられなかったときの動きを決める。担当者へつなぐか、問い合わせフォームへ誘導するか。無理に答えさせないことが品質を保ちます。
- 答えられなかった質問を記録する。次の改善の材料になります。
5番が、この仕組みでもっとも価値のある部分です。エージェントが答えられなかった質問の一覧は、そのまま社内規程の分かりにくい箇所の一覧になります。
問い合わせを減らす作業と、規程を整える作業が、ここでつながります。
AIエージェントを作るときに最初に決める3つの設定
手順の3番と4番を、具体的な設定として書いておきます。
- 参照範囲を限定する。社内の全ファイルを対象にすると、古い版や下書きが混ざります。フォルダ単位で指定してください。
- 推測を禁じる。「資料に記載がない場合は、記載がないと答える」と設定します。ここを空けると、それらしい回答が生成されます。
- 回答に出典を付ける。どの規程の何条を根拠にしたかを表示させます。利用者が自分で確認でき、間違いにも気づけます。
3番は、人事の領域では必須と考えてください。根拠が示されない回答は、後から確認する手間が回答を読む手間を上回ります。
利用のルールそのものをどう決めるかは、生成AI導入ガイドラインの作り方にまとめています。
AIエージェントが失敗する3つの原因
作ったのに使われない、という状態にも決まった原因があります。
- 参照する資料が整理されていない。同じ規程の版が複数のフォルダにあると、どれを根拠にしたのかが不安定になります。作る前に整理する工程が要ります。
- 入口が分かりにくい。Teamsのどこから呼び出すのかが伝わっていないと、結局はこれまでどおり人事へメールが来ます。既存の問い合わせ窓口の案内文に並べて置いてください。
- 答えられなかった質問を放置している。記録を取っていても見直さなければ、精度は上がりません。月に1回、答えられなかった質問を見る時間を決めておきます。
1番は、エージェントに限らずAI活用全体に効きます。リデザインワークのAX支援でも、精度の相談を受けた場合に最初に確認するのは参照先の状態です。
最初に作る1体をどう選ぶか
いきなり複数を作らないでください。判断の材料は、次の3つです。
| 確認すること | 望ましい状態 |
|---|---|
| 月の問い合わせ件数 | 30件以上ある |
| 答えの根拠 | 1つの文書に書かれている |
| 現在の対応時間 | 1件あたり10分以上かかっている |
3つとも当てはまる業務が、最初の1体です。人事なら、年末調整か休暇の申請あたりが現実的な入口になります。
作った後に社内へ残すものは3つです。参照させた資料の一覧、答えられなかった質問の記録、そして答えられる範囲の設定内容。この3つがあれば、2体目からは自力で作れます。
導入前に迷いやすい2つの論点
Copilotのライセンスがあれば追加費用なしで作れるのか。Copilot Studioは別ライセンスで、使った分だけの従量課金です。試作の段階では大きな金額になりませんが、全社で常用する前に費用の見込みを確認してください。生成AI全体の費用構造は生成AI導入の費用にまとめています。
情報システム部門に頼まないと作れないのか。ノーコードで作れるため、業務を知っている人事の担当者が作るほうが実態に合います。ただし参照先のフォルダ権限は情報システム部門の確認が要るため、権限だけは先に相談してください。
AIエージェントは組織に残る仕組みになる
Copilotの使い方は個人の中で終わりますが、エージェントは組織に残ります。うまく答えられる人の頭の中にあった手順を、誰でも同じ品質で呼び出せる形にするのがこの仕組みです。
そのために必要なのは、高度な設定ではなく、参照させる資料の整理と、答えないことの決定です。この2つが済んでいれば、作る工程そのものは短く終わります。
業務別の使いどころはCopilotの使い方に、導入から定着までの全体像は生成AI導入の進め方にまとめています。
どの業務から着手し、浮いた工数をどこへ向けるかまで含めて整理したのが、資料『AX戦略を考えるときに抑えるべき6つの考え方』です。

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まずは過去半年の問い合わせを50件書き出してみてください。答えが1つの文書に書かれている質問が半分を超えるなら、作る価値があります。





