中途採用のAI活用|スカウト文と面接評価の質を落とさずに速くする線引きと指示文
スカウト文を1日30通送る。1通あたり10分から30分かかると言われる作業で、候補者のプロフィールを読み、自社の求人との接点を探し、文面を組み立てます。返信率は数パーセント。
生成AIを使えば、この作業は数十秒で下書きまで出ます。ところが実際に使い始めた会社から聞くのは、速くなった話だけではありません。
AIが書いた文面は、読む側にも分かります。候補者の経歴に触れているようで、実は誰にでも当てはまる文になっている。返信率が下がったという声も出ています。
この記事では、中途採用でAIが効く工程を整理したうえで、スカウト文の質を落とさない使い方、面接評価をそろえる使い方、そしてAIの出力をどこまで採用してよいかの基準の決め方を順に説明します。
記事の最後には、候補者ごとに接点を書き分けるスカウト文のプロンプトを掲載しました。求人要件と職務経歴を貼り付ければ、どの経験がどの業務に効くかまで書かれた下書きが出るので、そのまま送るのではなく手直しの土台としてお使いください。
中途採用でAIが効くのは繰り返しが多い3工程
中途採用は、新卒と比べて1人あたりの手間が大きく、母集団の規模は小さい仕事です。効くのは量産ではなく、1件ごとの読み込みと書き分けにあたります。
| 工程 | 効く理由 | 削れる時間の目安 |
|---|---|---|
| スカウト文の作成 | 1通ごとにプロフィールを読んで書き分けるため | 1通10分から30分が数分に |
| 書類の読み込み | 職務経歴書が長く、要件との突き合わせに時間がかかる | 1件5分から10分が1分程度に |
| 面接評価の記録 | 面接後の記入が後回しになり記憶が薄れる | 面接1件15分の記入が5分程度に |
3つに共通するのは、判断そのものではなく、判断の前の読み込みと文章化に時間がかかっている点です。
読む時間を削り、決める時間を残す。これが中途採用でのAI活用の基本になります。
中途採用のスカウト文はAIに書かせると見抜かれる
まず、うまくいかない使い方から見ていきます。職務経歴を貼り付けて「魅力的なスカウト文を書いて」と指示すると、次のような文面が出ます。
- 貴殿のこれまでのご経験は、弊社が求める人物像と非常に合致しております
- 幅広い業務に携わってこられた点に、強く魅力を感じました
どちらも、経歴を読んでいなくても書ける文です。候補者は同じ形式のスカウトを毎週何通も受け取っているため、読んだ瞬間に一括送信だと判断します。
差がつくのは、経歴のどの部分が、自社のどの業務に効くのかを名指しで書けているかどうか。「幅広い業務」ではなく「請求管理の月次締めを1人で回していた経験が、いま立ち上げ中の経理チームで効きます」と書けるかにかかっています。
そのためには、AIに渡す材料を増やす必要があります。求人票だけでなく、配属先の状況、いま困っていること、入社後3か月で任せる仕事まで渡す。材料を渡さずに文章力だけを求めると、一般論しか出てきません。
中途採用の面接評価はAIで表現をそろえる
面接評価でAIが効くのは、評価そのものではなく記録の書き方です。
同じ候補者を見ても、面接官によって書く分量も観点も違います。ある面接官は具体的な発言を残し、別の面接官は印象だけを2行書く。この差が、比較のときに効いてきます。
面接のメモを渡して、決めた観点ごとに事実を並べ直させると、記録の粒度がそろいます。評価点そのものは面接官がつけますが、判断の材料になる事実の記述は、AIで形をそろえられます。
| AIに渡すもの | 出力させるもの |
|---|---|
| 面接のメモ、文字起こし | 評価観点ごとに、候補者が話した事実を抜き出した一覧 |
| 求人要件 | 要件のうち、確認できた項目と確認できていない項目 |
| 前回の面接記録 | 次の面接で確認すべき論点 |
3つ目が意外に効く。一次面接で確認しきれなかった論点を洗い出させると、二次面接の準備時間が短くなります。
中途採用でAIの出力を採用してよい基準を決める
ここまでの使い方には、共通する前提があります。出てきたものをどこまで信じて使うかの基準です。
リデザインワークのAX支援では、Copilotについて「間違っていたら怖いので、結局は自分で書き直している」という声を繰り返しいただきます。これは慎重さの問題ではなく、どこまで合っていれば使ってよいのかの基準が社内で決まっていない状態です。
基準がないと、担当者は全文を読み直すことになる。読み直すなら最初から自分で書いたほうが速いため、AIを使う意味がなくなります。
採用の場面なら、基準は工程ごとに決められる。
- スカウト文 事実の誤りがないことを確認する。表現の好みは直さない
- 書類の要約 要件との突き合わせ結果だけを原本で確認する。経歴の記述は確認しない
- 面接記録 候補者の発言として書かれた部分だけを確認する。要約の言い回しは直さない
- 評価コメントの下書き 記録にない内容が混ざっていないかを確認する
確認する範囲を決めることが、基準を決めるということです。全部を確認する運用は、基準がないのと同じになります。
なお、Copilotなど既存の環境で人事業務をどこまで軽くできるかはCopilotの使い方で扱っています。
候補者ごとに接点を書き分けるスカウト文のプロンプト
材料を渡す形にすると、出てくる文面が変わる。次の指示文をそのまま貼り付けて使えます。
あなたは中途採用のスカウトを担当するリクルーターです。
以下の情報をもとに、候補者1名へのスカウト文を作成してください。
【求人の要件】
(募集ポジション、必須要件、歓迎要件を貼り付け)
【配属先のいまの状況】
(チームの人数、いま困っていること、入社後3か月で任せる仕事を記入)
【候補者の職務経歴】
(職務経歴書の内容を貼り付け)
出力の条件:
1. 候補者の経歴のうち、配属先のいまの状況に直接効く経験を2つ特定し、
それぞれ「どの経験が、どの業務に、なぜ効くのか」を本文に書いてください。
2. 「幅広い」「豊富な」「非常に」など、経歴を読まなくても書ける表現は使わないでください。
3. 本文は400字以内。件名は候補者の経験に触れた20字以内で作成してください。
4. 経歴から読み取れない内容は書かないでください。推測が必要な箇所は
本文には入れず、末尾に「確認が必要な点」として列挙してください。
最後の条件が効きます。推測を本文から追い出すと、担当者が確認するのは末尾の数行だけで済みます。
なお、採用業務のAI活用は、リデザインワークのAX支援でも無料でご相談を承っています。
中途採用のAI活用は渡す材料の量で決まる
中途採用でAIを使ってうまくいかない会社は、指示の書き方を工夫しようとしています。ところが実際に足りないのは、指示ではなく材料のほうです。
配属先の状況を渡していないから、当たり障りのない文面が出てくる。
求人票だけを渡して良い文面を求めるのは、経歴書だけを見て面接をするようなものです。新卒採用での工程の分け方は新卒採用のAI活用事例で扱っています。






