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人事評価制度の見直し|タイミング・進め方・範囲の決め方と、作り直しても不満が減らない原因

「社員アンケートで、評価への不満が一番多かった。制度を見直してほしい」。経営からこう頼まれたものの、どこから手をつければよいのか決めかねている人事担当者の方は少なくありません。

不満があること自体は、珍しいことではありません。アデコ株式会社が2018年に20代から60代の有職者1,532人に聞いた調査では、勤務先の人事評価制度に不満を持つ人は62.3%。不満の理由で最も多かったのは「評価基準が不明確」の62.8%でした。

ただし、不満が多いからといって制度を作り直しても、同じ不満が残ることが多い。不満の原因の多くは、制度の設計ではなく運用にあるためです。

この記事を読み終えると、自社の見直しが運用の手直しで済むのか、評価制度を作り直すのか、等級と報酬まで変えるのかを判断でき、経営に出す見直しの計画を組めるようになります。見直すタイミングのサイン、原因の判定表、範囲の決め方、進め方6ステップ、作り直しても不満が減らない3つの原因の順に説明します。

記事の最後には、社員アンケートの自由記述から不満の原因を仕分けるプロンプトを掲載しました。匿名化した回答を貼り付ければ、基準・評価者・処遇・制度の設計のどこに不満が集まっているかが、件数つきで分かる。

社員の不満の中身から先に確かめたい場合は、不満を基準・評価者・処遇の3つに分けて整理した人事評価への不満が出る理由が参考になります。

人事評価制度の見直しとは等級・評価・報酬とその運用を点検し直すこと

手順に入る前に、見直す対象の範囲を確認します。人事評価制度という言葉は、評価シートだけを指して使われることもあれば、等級や給与の決め方まで含めて使われることもあるためです。

人事評価制度の見直しとは、等級・評価・報酬の3つの仕組みとその運用が、今の事業と社員に合っているかを点検し、合っていない箇所を作り直すことです。

仕組み 決めていること 合っていないときに社員から出る声
等級制度 社員の格付けと、各等級に求める役割 何をすれば上がるのか分からない
評価制度 何をどの基準で評価するか 評価の理由が分からない。上司によって違う
報酬制度 等級と評価を給与や賞与にどう反映するか 頑張っても給与が変わらない

3つはつながっているため、1つだけを変えると、残り2つとの対応が崩れる。3つを一から組み立てる考え方は、人事評価制度の設計方法で詳しく扱っています。

人事評価制度を見直すタイミングは5つのサインで判断する

では、いつ見直すべきなのか。「定期的に見直す」と決めておくだけでは、動くきっかけになりません。社内で次のサインが出ていれば、見直しの時期に来ていると判断できます。

サイン 社内で起きていること 確かめる数字
1 評価への納得度が下がった 社員アンケートで評価の項目が最も低い 評価に関する設問の肯定回答率
2 評価が昇給や賞与にどう効くか説明できない 評価と処遇の対応表がない 評価ごとの昇給率の分布
3 評価の付け方が評価者によって違う 部門間の調整に毎期時間がかかる 評価者ごとのA・B・Cの割合
4 事業や組織が変わった 新しい職種や役割が等級の定義にない 等級の定義と実際の役割の違い
5 人件費の見通しが変わった 昇給の原資が事業計画と合わない 5年後の人件費の試算

1つ目のサインが、見直しの起点になった例があります。リデザインワークの人事制度設計支援へのご相談で、ある物流業の人事担当者から伺った話です。

全社アンケートで、評価に対する納得度が非常に低い結果が出た。従来の制度は評価基準が曖昧で、給与が上がる仕組みも社員から見えていなかった。そこで、仕事の難易度に応じて格付けする職務等級へ移行することになりました。

5つ目のサインは、人事より先に経営から出てくる。あるサービス業の人事部長から伺った例では、5年後に人件費が40億円増えるという試算が出ました。この増加が利益を圧迫し、新規事業へ回す予算を削るため、評価の対象期間を過去4期の合計から直近2期に短くし、人材を早く見極められる形に変えています。

制度を全面的に作り直さず、評価制度の中の1項目を変えるだけで、経営の課題に対応した例です。見直しの範囲は、サインの種類によって大きく変わる。

作り直す前に不満の原因が運用と設計のどちらにあるかを判定する

サインが出ていても、すぐに制度を作り直すのは早計です。人事評価制度への不満の多くは、制度の設計ではなく運用から出ているためです。

人事部門に聞いた調査にも、同じ傾向が表れています。日本の人事部『人事白書2025』は、会員企業の人事担当者に評価・報酬制度の課題を聞いた調査です(2025年3月実施・6,139社)。上位3つは次のとおり。

順位 評価・報酬制度の課題 回答の割合
1 評価者による基準や運用のばらつきがある 67.7%
2 評価者のスキルが不足している 51.0%
3 評価結果に基づく従業員へのフィードバックが適切に提供されていない 42.4%

上位3つはいずれも、制度を作ったあとの運用の課題です。運用が原因の不満は、制度を新しくしても消えない。評価者が同じ付け方を続ければ、新しい評価シートでも同じばらつきが出るからです。

判定に使うのが次の表。社員アンケートの自由記述と、評価者ごとの評価の分布を並べて照らし合わせると、原因が運用と設計のどちらにあるかが決まります。

社員から出ている声 原因 見直す範囲
何で評価されるのか分からない 運用 基準が本人に渡っていない 運用の手直し
上司によって評価が違う 運用 評価者の付け方が統一されていない 運用の手直し
評価が給与にどう効くのか分からない 運用 評価と昇給の対応表を公開していない 運用の手直し
評価項目が今の仕事と合っていない 設計 評価制度 評価制度の見直し
頑張っても評価の差が給与に出ない 設計 報酬制度 3制度の見直し
管理職にならないと給与が上がらない 設計 等級制度 3制度の見直し

表の上3行に当てはまるなら、制度は作り直さずに運用から直します。直し方は人事評価への不満が出る理由で、基準の開示・評価者ごとの分布の共有・昇給の対応表の公開の3つの手順に分けて説明しています。

一方、下3行に当てはまる場合は、運用を直しても解消しない。制度の設計そのものが、今の事業や社員の働き方と合っていないためです。ここで初めて、どこまで作り直すかを決めることになります。

見直す範囲は運用・評価制度・3制度の3段階で決める

原因が設計にあると分かったら、次は作り直す範囲です。範囲は次の3段階から選ぶ。

範囲 変えるもの 期間の目安 向いている状態
運用の手直し 基準の開示・評価者間の付け方の統一・対応表の公開 1評価期間(半年前後) 評価項目は今の仕事に合っている
評価制度の見直し 評価項目・評価の手法・評価の対象期間 3か月から6か月 等級と報酬は今の事業に合っている
3制度の見直し 等級・評価・報酬のすべて 半年から1年 役割の定義や給与の決め方が事業と合わない

範囲は広いほど良いわけではありません。3制度をまとめて見直すと、等級・評価・報酬を順に合意しながら進めることになり、期間も費用もかかります。前出のサービス業の例のように、評価の対象期間だけを変えて経営の課題に対応できることもある。

範囲を決めたら、経営に出す計画に「なぜこの範囲なのか」を1行で書いておきます。進める途中で「ついでに等級も」と範囲が広がるのを防ぐ狙いがある。

評価制度を見直すときに検討する手法

範囲が評価制度の見直しと決まったら、評価の手法を選びます。手法は範囲を決めたあとに選ぶもので、見直しの出発点にはしない。主な手法と注意点は次のとおりです。

手法 評価するもの 向いている場面 注意点
MBO(目標管理) 期初に決めた目標の達成度 数値の目標を置きやすい職種が多い 目標の難易度が人によって違うと不公平になる
OKR 挑戦的な目標と主要な成果 変化の速い事業・部門をまたぐ目標 報酬と直結させると挑戦的な目標を立てなくなる
コンピテンシー評価 成果を出す人に共通する行動 求める行動を具体的に示したい 職種ごとに行動の記述を作る手間がかかる
360度評価 上司以外の同僚や部下からの評価 育成とフィードバックに使いたい 処遇に使うと当たり障りのない回答になる
バリュー評価 行動指針の体現度 理念の浸透を重視する 行動指針が抽象的だと評価が割れる

目標管理の進め方はMBOとはで、行動の書き方はコンピテンシー評価で扱っています。

人事評価制度の見直しの進め方は6ステップ

範囲と手法が決まれば、進め方は共通。3制度の見直しを例に、6つのステップで示します。運用の手直しであれば、ステップ4の設計を飛ばして進めればよい。

  1. 現状を数字で把握する 評価者ごとの評価の分布、評価と昇給の対応、社員アンケートの評価の項目を集める。管理職と社員への聞き取りもここで行う
  2. 原因と範囲を決める 上の判定表で、運用と設計のどちらを直すかを決める
  3. 経営と方針を決める 何を評価し、何に報いるかを経営の言葉で決める。事業計画の数字と人件費の見通しもここで確かめる
  4. 制度を設計する 等級・評価・報酬の順に設計し、社員一人ひとりの新旧の給与を試算する。給与が下がる人の人数と金額を先に出す
  5. 評価者と社員へ説明する 制度の中身より先に、見直す理由を説明する
  6. 移行して1評価期間後に点検する ステップ1と同じ数字を取り直し、見直しの前と比べる

ステップ4で下がる人を先に数えるのは、移行措置(給与が下がる人の差額を数年かけて段階的に減らす経過措置)の費用を、設計の段階で経営と合意しておくためです。等級の決め方は等級制度の作り方で、評価基準の書き方は人事考課のやり方で扱っています。

設計の工程のうち、どこまでをAIに任せられるかと、浮いた時間と費用を何に使うかまで整理したのが、資料『AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか』です。

AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか
お役立ち資料|人事評価制度

AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか

制度改定に費用と半年をかけたのに、出てきたのはどこかで見たことのある制度だった。AIに何を任せ、どこから人が引き取るかを決めないまま渡しているからです。人事責任者が押さえるべきAIに任せられる範囲と、浮いた原資の置き場所まで解説します。

資料をダウンロード

自社の不満が運用と設計のどちらから来ているかは、評価の分布と社員の声を並べると判定できます。

リデザインワークの人事制度設計支援では、見直しの範囲について無料でご相談を承っています。現在の評価制度と社員アンケートの結果をお聞きして、見直す範囲と進め方まで一緒に決めます。

無料で相談する

作り直しても不満が減らない3つの原因

手順どおりに進めても、見直しのあとに同じ不満が残る会社があります。原因は大きく3つある。

原因1 手法の導入が目的になり不満の原因を確かめていない

OKRや360度評価といった新しい手法の導入から見直しを始めると、運用が原因の不満はそのまま残る。評価者の付け方が統一されていなければ、手法を変えても評価はばらつくからです。

手法ごとの注意点もあります。たとえば360度評価を処遇に使うと、回答者が本音を書かなくなる。理由は360度評価が意味ない・時代遅れと言われる理由で整理しました。

原因2 現場への説明より先に新しい制度が動き出す

2つ目は、導入の順序の問題です。ある建設業の人事担当者から伺った例では、新しい人事制度で、人材育成の期間を6年前倒しすることが求められました。ところが、現場への説明と納得を得る場を設けないまま制度が先に動き出し、現場の士気が下がっています。

失敗の原因は制度の中身ではなく、導入の順序でした。進め方のステップ5で、制度の中身より先に見直す理由を説明するのはこのためです。

原因3 評価者の準備が制度の切り替えに間に合わない

3つ目は、新しい制度で評価する評価者の準備。前出の人事白書2025でも、評価・報酬制度の課題の2番目は「評価者のスキルが不足している」の51.0%でした。新しい評価項目を理解しないまま最初の評価を迎えると、評価者は旧制度の感覚で点を付けてしまう。

防ぐには、切り替えの前に試行評価を行います。評価者に、同じ部下を旧制度と新制度の両方で評価してもらい、付け方の違いを人事と確かめる方法です。1回の試行で、基準の解釈がずれている項目がはっきりする。

不満の原因を仕分けるプロンプト

判定表を使うには、社員の声がどこに集まっているかを数える必要があります。自由記述が数百件あると手作業では難しいため、生成AIに仕分けさせる。貼り付ける前に、氏名・部署名など個人を特定できる情報は必ず削除してください。

あなたは人事制度の見直しを支援する担当者です。
以下は、社員アンケートで「人事評価」について書かれた自由記述です(匿名化済み)。

各回答を、次の4つのどれに当たるかで分類してください。
1. 評価基準が本人に伝わっていない
2. 評価者によって付け方が違う
3. 評価が昇給や賞与にどう反映されるか分からない
4. 評価項目や等級・給与の仕組みそのものが仕事と合っていない

出力は次の形にしてください。
- 分類ごとの件数と、全体に占める割合
- 分類ごとに、代表的な回答を3つずつ(原文のまま)
- 1から3の合計が過半数なら「運用の手直しが先」、4が最も多ければ「制度の設計から見直す」と判定し、理由を2文で

# 自由記述
(ここに貼り付ける)

分類の1から3は運用、4は設計の不満にあたります。件数が出れば、制度を作り直す前に運用を直すのか、設計から見直すのかを、経営に数字で説明できます。

人事評価制度の見直しは作り直す範囲の判断で決まる

見直しで最初に決めるのは、新しい手法ではなく、どこまで作り直すかです。社員の不満を運用と設計に分けて数えれば、範囲は決まります。運用が原因なら制度はそのままにして運用を直し、設計が原因なら等級・評価・報酬のどこまで変えるかを経営と決める。

そのうえで、見直す理由を制度より先に現場へ説明します。この順序を守ると、作り直した制度で同じ不満が繰り返されるのを防げます。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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