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サーベイ結果の開示範囲|経営・管理職・社員に見せる粒度の決め方と、評価への流用を防ぐ権限設定

サーベイの速報を部長会に出した翌日、ある部長から「ほかの部の点数も一覧で見せてほしい。うちだけ低いなら理由を知りたい」と連絡が来た。同じ週に、社員からは「結果は私たちにも見せてもらえるんですか」と聞かれている。誰にどこまで見せるかを決めないまま実施していたことに、ここで気づく。

結果を現場に返すかどうかで、社員がサーベイをどう受け止めるかは大きく変わる。組織サーベイを利用する会社の従業員と人事、合わせて396人に聞いた調査に、その差が表れています。

株式会社スタメンが2024年10月に実施した調査(日本の人事部の掲載記事)では、結果が現場に開示されている群で満足していると答えた人は81.1%、開示されていない群では50.6%でした。

差は30.5ポイントあります。それでも同じ調査では、回答者の約半数が、結果は現場に開示されていないと答えていた。開示に踏み切れない理由として考えられるのは、部署どうしで比べられることや、管理職の評価に使われることへの心配です。

この心配は、開示範囲を実施の前に決めておけば小さくできる。

この記事を読み終えると、経営・管理職・社員のそれぞれに、どの集計単位まで結果を見せるかを決め、閲覧権限の設定と社員への案内文まで用意できます。開示範囲の意味、決めずに実施すると起きる3つのこと、閲覧者ごとの一覧、比較と評価への流用を防ぐルール、閲覧権限の設定手順、社員への案内文の順に説明する。

記事の後半には、部署の階層と人数を貼り付けると、閲覧者ごとの開示範囲の表と社員への案内文の下書きが出るAIへの指示文を載せました。開示範囲を回答前に伝えていないと、回答が当たり障りのない内容に偏る理由は、エンゲージメントサーベイが意味ないと言われる理由で扱っています。

サーベイ結果の開示範囲とは閲覧者ごとに見せる集計単位を決めたもの

冒頭の部長と社員の問いに答えるには、開示範囲という言葉の中身を先に決めておく必要があります。

サーベイ結果の開示範囲とは、集計した結果を、誰に、どの集計単位まで、いつ見せるかを実施の前に決めた取り決めです。公開範囲とも呼ばれます。決める項目は閲覧者と集計単位の2つ。閲覧者は経営・人事・本部長と部長・課長・社員の5者で、集計単位は次の5段階に分かれます。

集計単位 例 分かること 開示するときの注意
全社 全社平均・設問別の結果 会社全体の傾向 部署ごとの差は見えない
本部・部 本部別の平均と前回比 事業ごとの差 本部長どうしの比較が起きやすい
部署(課) 課別の平均と前回比 職場で取り組む課題 人数が少ないと回答者が推測される
属性別 階層・勤続年数・雇用区分ごとの平均 組織の構造による差 部署と掛け合わせると人数が減る
自由記述 原文・分類した要約 点数の理由 書きぶりから書いた人が推測される

集計単位が細かいほど、職場で取り組む課題は具体的になります。その代わり、部署どうしで比べられやすくなり、回答者も推測されやすくなる。開示範囲を決めるとは、この2つを比べながら、閲覧者ごとにどの単位まで見せるかを選ぶことです。

回答者が推測されない人数の下限や自由記述の原文の扱いは、匿名性の問題として別に決めます。部署と階層を掛け合わせたときの人数の下限は、サーベイのクロス集計で扱っている。

サーベイ結果の開示範囲を決めずに実施すると起きる3つのこと

開示範囲を決めないまま実施すると、結果が出てから、見せる相手と粒度をその都度判断することになります。そこで起きることは大きく3つあります。

1. 社員に結果が返らず何に使われたか分からなくなる

1つ目は、社員に何も返らないことです。範囲が決まっていなければ、迷った場面では見せない判断が選ばれやすい。経営への報告が終わった時点で、結果の扱いも終わってしまいます。

社員はそれを見ている。

先のスタメンの調査で、サーベイに満足していない理由として最も多かったのは「調査結果が人事施策や働く環境の改善に反映されていないと思うから」の42.4%、次いで「何に利用されているか不透明だから」の26.0%でした。結果と取り組みを社員に返さないことが、そのままサーベイへの不満になっています。

2. 部署別スコアの一覧が管理職の順位表として読まれる

2つ目は、管理職どうしの比較です。冒頭の部長に求められるまま、全部署の数字を並べた表を部長会に配ったとします。

管理職が最初に見るのは、自部署の課題より他部署と比べた順位になる。営業と管理部門のように業務も人数も違う部署が同じ表に並ぶため、低い部署の管理職は、原因を考えるより、低い理由の説明を用意することに時間を使います。

3. 部署のスコアが管理職の評価や目標に使われる

3つ目は、評価への流用です。部署のスコアを上げることを、管理職の目標に入れる会社もあります。ただ、その場合に起きやすいことがある。

部署のスコアは、部下の回答で決まります。評価に入ると、管理職にとっては職場の課題を直すより、回答を変えてもらうほうが早い手段になります。実施の前に「いい点で頼む」と声をかける、低い点の理由を部下に問いただす、といった行動です。部下も、上司の評価に響くと分かれば点を甘くつけるでしょう。

その結果、スコアは上がっても課題は残り、翌年からは結果が職場の実態を表さなくなる。「ある尺度が目標となったとき、それは良い尺度ではなくなる」と表現される、グッドハートの法則として知られる現象です。

同じ心配は、労働安全衛生法にもとづくストレスチェックでも示されています。厚生労働省のストレスチェック指針は、集団ごとの分析結果をその集団の管理者等にとって「評価等につながり得る情報」とし、事業場内で制限なく共有してはならないとしています。

エンゲージメントサーベイに同じ定めはありませんが、部署単位の結果が管理職の評価につながりうる点は変わりません。

経営・管理職・社員に見せるサーベイ結果の範囲と粒度の一覧

3つのことを防ぐには、閲覧者ごとに、見せる集計単位と見せない情報を実施の前に決めておきます。目安は次のとおり。

閲覧者 見せる集計単位 見せない情報 結果を見て決めること
経営(社長・役員) 全社・本部別・属性別の結果と前回比 課ごとの順位 全社で取り組む課題と予算
人事(事務局) すべての集計単位と自由記述の原文 回答者個人を特定する情報 分析の方法と報告の内容
本部長・部長 自部門と配下の部署、全社平均 他部門の部署別の数字 部門の課題と支援の配分
課長(現場の管理職) 自部署と全社平均、前回比、分類した自由記述 他部署の数字 職場で話し合う課題
社員 全社の結果、自部署の結果(話し合いの場で) 他部署の数字 自分たちで取り組む課題

経営に課ごとの順位を見せないのは、順位を見ると、低い課の管理職への指示が先に出やすいためです。経営が決めるのは、全社で取り組む課題と、どの本部への支援を厚くするか。そのための材料は本部単位と属性別の結果で足ります。

課長には、自部署の数字に全社平均と前回の数字を添えて見せます。他部署の数字がなくても、自部署が全社と比べてどうか、前回から動いたかは読める。社員には全社の結果を共有し、自部署の結果は課長との話し合いの場で一緒に見る形がとれます。

経営に見せる範囲を決めても、報告が数字の読み上げで終わると、全社の課題も予算も決まりません。経営会議で議論を起こすための準備の手順と、報告会の型を整理したのが、資料『経営の期待を超えるサーベイ報告会のポイント』です。

経営の期待を超えるサーベイ報告会のポイント
お役立ち資料|エンゲージメントサーベイ

経営の期待を超えるサーベイ報告会のポイント

分析はやり切ったのに、報告会は聞き置くだけで終わる。足りないのは精度ではなく、経営がいま知りたい論点から組み立てることです。人事責任者が経営会議で議論を起こすために必ず押さえるべき準備プロセスと、報告会の型を解説します。

資料をダウンロード

なお、サーベイ結果を誰にどこまで開示するかの整理は、リデザインワークのサーベイ活用支援でも無料でご相談を承っています。

管理職どうしの比較と評価への流用を防ぐ4つのルール

閲覧者ごとの範囲を決めても、運用を続けるうちに範囲は少しずつ広がります。部長会で一覧を求められる、評価の時期に数字を参照される、といった場面に備えて、次の4つを実施要領に書いておきます。

  1. 他部署と並べた一覧は経営と人事だけが見る 部長会で一覧を求められたら、本部単位の数字と全社平均で答える
  2. 管理職には順位でなく前回比と全社平均との差で示す 部署の数字を並べた順位表は作らない
  3. 部署のスコアを管理職の評価や目標に入れない 実施要領と社員への案内文の両方に書く
  4. 評価で確認するのはスコアでなく結果を受けた取り組み 部下と結果を話し合ったか、決めた取り組みを実行したかを確認する

ルール1と2は、2つ目に挙げた管理職どうしの比較を防ぎます。ルール3と4は、3つ目の評価への流用を防ぐもの。

4つ目のルールがあると、評価に使わないことと、結果を放置しないことを両立できます。スコアを評価から外すと、管理職が結果を受け取っても何もしなくなるのでは、という心配が出る。そこで点数ではなく、結果を受けた行動を確認の対象にします。

残る1つ目の、社員に結果が返らないことは、後で扱う社員への案内文で防ぎます。低い部署を責めずに原因を構造から読む分析の手順は、サーベイの決定木分析で扱っている。

サーベイ結果の閲覧権限は組織図と役職の人事データから設定する

ルールを決めたら、閲覧権限の設定に移る。ツールで画面を見せる場合も、表計算のファイルを配る場合も、手順は同じです。

  1. 閲覧者の一覧を出す 実施時点の組織図と、閲覧者の氏名・役職・所属を人事データから出す
  2. 閲覧者ごとに見られる組織を決める 自部署のみ、配下を含む、全社のどれかを割り当てる
  3. 例外の扱いを決める 兼務している管理職、組織長が空席の部署、異動した直後の管理職
  4. 閲覧者の立場で確認する 権限を設定した後、閲覧者として画面やファイルを開き、他部署の数字が見えないかを確かめる
  5. 組織変更のたびに更新する 異動と組織変更のたびに権限を直し、直した人と日付を記録する

2番目の、閲覧者ごとに見られる組織の割り当ては、ルールの種類を増やすほど、異動のたびの設定し直しが重くなります。

リデザインワークがサーベイの閲覧範囲を設計する際は、管理職が見る範囲を「その組織と配下」の1つのルールにしています。全社を見る人には最上位の組織を、複数の部署を見る人には部署を複数割り当てれば足りる。

表計算のファイルで配る場合は、部署ごとにファイルを分け、全部署の集計表は添付しない。メールで転送されると、決めた範囲の外へ数字が広がるからです。

ツールを乗り換えるときにも、組織ごとに管理職が見られる範囲を設定できるかは確認する点の1つになります。比べる観点はエンゲージメントサーベイの乗り換えで整理しています。

社員にサーベイ結果の開示範囲を伝える案内文の例

開示範囲は、決めただけでは社員に伝わらない。1つ目に挙げた、何に使われたか分からないという不満を防ぐには、回答の前と結果が出た後の2回、文面で伝えます。

回答の前に、配信の案内と回答画面の冒頭へ載せる文面の例です。

今回のサーベイの結果は、次の範囲で開示します。
・社員の皆さん:全社の結果を社内ポータルで、所属部署の結果を部署の話し合いの場で共有します
・課長:所属部署の結果と全社平均を見ます。他の部署の結果は見ません
・本部長と部長:所属部門と配下の部署の結果を見ます
・経営:全社と本部ごとの結果を見ます
・人事:分析のためにすべての集計を扱いますが、回答者が分かる形では誰にも共有しません
部署ごとの結果は、管理職の評価には使いません。

結果が出た後は、全社で分かったこと、会社として取り組むこと、部署で話し合う日程の3つを伝えます。回答した記憶が新しいうちに出すほど、回答した内容と結果のつながりが社員に伝わりやすい。

結果を社員に返す工程の全体は、エンゲージメントサーベイの分析方法のステップ5で扱っています。

サーベイ結果の開示範囲と案内文をAIに下書きさせる指示文

閲覧者ごとの一覧と案内文は、組織の階層と人数があればAIに下書きさせられます。氏名や回答の中身は貼り付けず、部署名と人数、実施の目的だけを使ってください。

あなたは人事部門でエンゲージメントサーベイの運用を設計する担当者です。
次の【組織】と【実施の目的】をもとに、サーベイ結果の開示範囲を設計してください。

【組織】
(本部・部・課の階層と、各組織の対象人数を貼り付け。氏名は入れない)

【実施の目的】
(例)全社の課題を経営会議で決める。各部署で話し合う課題を1つ決める

【閲覧の設定でできること】
(例)組織ごとに閲覧者を割り当てられる。自由記述は人事だけが原文を見られる

【出力】
1. 経営・人事・本部長と部長・課長・社員の5者について、
   見せる集計単位・見せない情報・結果を見て決めることを表にする
2. 対象人数が少なく、上位の組織と合わせて集計する候補の部署を挙げる
3. 部署どうしの比較と、管理職の評価への流用を防ぐルールを4つ書く
4. 社員への案内文を2つ書く(回答前に載せる文面・結果を共有するときの文面)
5. 部長から「全部署の一覧を見せてほしい」と頼まれたときの回答例を書く

【注意】
・【組織】と【実施の目的】に書かれていないことを推測で補わない
・人数の下限など、社内で決める数値は空欄にして「要確認」と書く

5番目の、部長への回答例は、冒頭の場面のように一覧を求められたときにそのまま使えます。断るだけで終えず、本部単位の数字と全社平均なら出せることを添えると、部長の知りたいことにも答えられる。

2番目で挙がった、上位の組織と合わせて集計する候補の部署は、閲覧者を上位の組織に割り当て直すかどうかを決めてから権限を設定します。

サーベイ結果の開示範囲は回答の前に決めて社員に伝える

開示範囲を決める目的は、見せない情報を増やすことではありません。結果を受け取った人が、それを使って何を決めるのかをはっきりさせることにあります。経営は全社の課題を、課長は職場で話し合う課題を、社員は自分たちで取り組む課題を決める。それぞれに必要な粒度だけを渡します。

まずは今回の閲覧者を書き出し、一覧の表の5行を埋めてください。部長から一覧を求められる前に表ができていれば、冒頭の場面で迷わずに答えられます。部署ごとの結果を受け取った管理職が、何から取り組むかを決める手順は、従業員エンゲージメント向上の施策で扱っています。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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