サーベイ結果の管理職へのフィードバック|渡す順番と面談の手順、点数で責められたと感じさせない方法
サーベイの結果が出た翌週、人事担当者は管理職40人に部署別のレポートを送った。2週間後に管理画面で閲覧の記録を見ると、開いた管理職は12人。開いた1人の課長からは、「うちの課の点数が低いのは分かりました。これは私の評価に関係するんですか」と返信が届いていました。
結果を開かない管理職が多いのは、この会社に限った話ではありません。あるコンサルティング会社の営業担当者から、リデザインワークは次のように聞いています。
複数の顧客企業の人事から、同じ相談を受けている。サーベイを実施しても、現場の管理職が結果にアクセスする割合は3割程度にとどまり、行動の変化につながっていない。
管理職が結果を使わなければ、回答した社員から見ても、結果は何にも使われていないことになる。バヅクリ株式会社が2022年11月に、会社員2,200名を対象にエンゲージメントサーベイツールについて行った調査があります。
定期的に利用・回答した経験があり、不満を感じたことがある330名に不満の中身を複数回答で聞いたところ、最多は「回答した結果が何に活かされているかわからない」で60.6%でした。部署の結果を部下と話すのは、多くの会社で管理職です。管理職に結果が届かなければ、この不満は残り続ける。
この記事を読み終えると、部署の結果を管理職に渡す順番、最初の面談で何をどの順に話すか、管理職が部下と話すときに使う1枚の資料の中身を決められます。管理職が結果を使わない3つの理由、渡す順番、面談の手順、1枚の資料、部下との話し合い、渡した後の確認の順に説明する。
記事の後半には、部署の集計とその部署が追っている事業の数字を貼り付けると、管理職向けの1枚の下書きと部下に聞く問いの案が出るAIへの指示文を載せました。
全社の結果を社員全員に返す工程は、エンゲージメントサーベイの分析方法の6ステップで扱っています。この記事は、その前に管理職へ部署の結果を渡す工程を扱います。
サーベイ結果を管理職に渡しても使われない3つの理由
レポートが開かれない、開かれても職場の行動が変わらない。管理職の意欲の問題に見えますが、原因の多くは渡し方にあり、大きく3つに分かれる。
理由1 部署の点数が管理職への評価に見える
1つ目は、結果の受け取り方です。部署別のスコアが一覧で届くと、管理職はそれを自分への評価として読みます。全社平均より低い数字があれば、最初に考えるのは「誰がどう答えたのか」「この数字は正しいのか」になる。
しかし部署のスコアには、管理職の関わり方だけでなく、業務量・人の入れ替わり・担当する事業の繁閑が混ざっています。管理職個人の評価として渡すと、自分では変えられない要因まで責められていると受け取られる。
評価として受け取った管理職は、次に何をするかより先に、数字が正しいかどうかの議論を始めます。冒頭の課長の返信は、その最初の反応です。
理由2 結果が人事の言葉で書かれ事業の数字とつながらない
2つ目は、結果を書く言葉です。コンサルティング会社の営業担当者からは、次の話も聞いています。
現場のマネージャーが関心を持つのは短期の事業数字だが、従来のサーベイは人事の長期的な論点に終始している。両者の言語が違うため、結果が現場の当事者意識につながらない。
たとえば「心理的安全性のスコアが3.1」と渡されても、課長は今月の受注や納期とどう関係するのかが分からない。「会議で反対意見を言いにくいと答えた部下が多い」と書けば、仕様の確認漏れが後工程で見つかった先月の手戻りと結びつけて考えられます。
理由3 レポートを送るだけで読む時間と相談する相手がない
3つ目は、渡す経路です。管理画面のURLをメールで送ると、管理職はそれを期限のない連絡として受け取る。月末の数字の締めや部下の対応が先に来るため、レポートは後回しになります。
開いたとしても、どの数字から手をつけるかを相談する相手がいません。冒頭の3割という数字も、管理職の関心だけでなく、送り方の問題として見直す余地があります。
| 理由 | 管理職の反応 | 直す工程 |
|---|---|---|
| 1. 部署の点数が評価に見える | 数字が正しいかの議論から始める | 面談の最初に使い道を伝える |
| 2. 人事の言葉で書かれている | 自部署の仕事と結びつかない | 管理職向けの1枚を事業の数字で書く |
| 3. 送るだけで話す場がない | 開かない、相談先がない | 渡す順番と面談の日程を決める |
以下では、3つ目の渡す順番から扱う。場が決まらないと、面談も1枚の資料も使う機会がないためです。
部署の点数が低い項目にそのまま施策を当てるのではなく、そう感じさせている職場の構造から組織課題を立てる方法を、支援事例とあわせて整理したのが、資料『現場が動き出す組織課題の見つけ方』です。
サーベイ結果を管理職に渡す順番は経営から部長・課長・社員へ
3つの理由のうち、送るだけで話す場がない理由3は、渡す順番と面談の日程を先に決めると外せます。次の表は、集計が終わってから部署で話し合うまでの順番の目安です。
| 順番 | 渡す相手 | 渡すもの | 時期の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 経営会議 | 全社の結論と施策の提案 | 集計の完了から2〜3週間 |
| 2 | 部長 | 部の結果と、配下の課の傾向 | 経営会議の翌週 |
| 3 | 課長などの管理職 | 部署の1枚と30分の面談 | 部長への説明の翌週 |
| 4 | 全社員 | 全社の結果と会社として行う施策 | 経営会議から1か月以内 |
| 5 | 各部署の部下 | 部署の結果と話し合いの場 | 管理職との面談から2週間以内 |
この順番には、決めごとが3つあります。
- 管理職には全社員より先に渡す 部下が全社の結果を見て質問してきたとき、上司が自部署の結果を知らないと答えられない
- 部長を課長より先にする 課長が相談する相手を部長にするため。ただし部長には、配下の課を並べて比べる使い方をしないよう先に伝える
- 送付のメールは面談の案内として送る 送る時点で30分の面談の候補日を入れ、レポートはその面談で一緒に読む
どの粒度まで誰に結果を見せるかは、回答前に社員へ伝えた範囲を超えないようにする。回答前に伝えていないと本音が書かれにくくなる点は、エンゲージメントサーベイが意味ないと言われる理由で扱っています。
サーベイ結果を管理職と読む30分の面談手順
日程が決まったら、面談の中身を決めます。理由1の、部署の点数が評価に見える問題は、面談の最初の数分で使い道を伝えることで対処する。
- 使い道を伝える(3分) 「この結果は、課長の評価にも、課どうしの比較にも使いません。課の中で次に何を変えるかを一緒に決めるために使います」と最初に伝える
- 管理職の見立てを先に聞く(5分) データを見せる前に「この半年で、課でうまくいったことと困ったことは何でしたか」と聞く
- 強みを1つ示す(5分) 全社より肯定率が高い設問を1つ示し、どんな取り組みが効いていると思うかを聞く
- 気になる点を1つ示す(7分) 前回から下がった、または全社より低い設問を1つに絞り、回答者何人分の変化かを添える
- 理由を一緒に考える(5分) 「この設問に低く答えた人は、どんな場面を思い浮かべていると思いますか」と聞く
- 次の一手を1つ決める(5分) 部下と話し合う日と、話し合いで使う問いを決める
肯定率は、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人の割合を指します。2番目で管理職の見立てを先に聞くのは、データを見る前に、自分の言葉で課の状況を話してもらうためです。
先に話した見立てがあれば、データは見立てが合っているかを確かめる材料になり、評価の通知としては読まれにくい。4番目で気になる点を1つに絞るのも、評価として読まれないためです。課題を3つ並べると、管理職は全部に反論するか、全部を引き受けて手をつけられなくなる。
反対に、人事が面談で言わないことも決めておきます。他の課との比較、全社での順位、「低いですね」という評価の言葉の3つです。話が「誰が低く答えたのか」に向かったら、匿名の回答を推測しないことを伝えて、5番目の問いに戻す。
回答者が少ない部署では、1人の回答で肯定率が大きく動きます。集計に使う人数の下限はサーベイのクロス集計で扱っている。点数の低い管理職の評価に結果を使うと翌年から回答が実態を表さなくなる点も、先に紹介した意味ないと言われる理由の記事で取り上げています。
管理職が使う資料はサーベイの言葉を事業の数字に直した1枚にする
面談で話した内容は、管理職が後から見返せる1枚の資料にして渡します。理由2の、人事の言葉と事業の数字のずれは、この1枚で直す。
| 欄 | 書く中身 | 記入例 |
|---|---|---|
| 部署の強み | 全社より肯定率が高い設問を1つ | 「仕事の進め方を自分で決められる」が全社より高い |
| 気になる点 | 前回から下がった設問を1つと、回答者何人分の変化か | 「会議で反対意見を言いやすい」が前回から下がった(回答者3人分) |
| 事業の数字とのつながり | 気になる点が影響しうる業務の数字(仮説として書く) | 仕様の確認漏れによる手戻りの件数 |
| 部下に聞く問い | 話し合いで使う問いを2つ | 「反対意見を言いにくかった会議はどれでしたか」 |
| 人事が手伝えること | 人事が用意できる支援 | 話し合いの進行役・他部署の取り組みの例 |
3つ目の事業の数字とのつながりは、因果を断定する欄ではありません。管理職が自部署の仕事と結びつけて考えるための仮説の欄で、当たっているかどうかは部下との話し合いで確かめます。
設問の言葉を管理職の仕事の言葉に直すときは、次のように、職場で起きていることとして書く。
| サーベイの言葉 | 管理職の仕事の言葉に直した例 |
|---|---|
| 心理的安全性が低い | 会議で反対意見や悪い報告が出にくく、問題が見つかるのが遅れる |
| 成長実感が低い | 同じ仕事を任せ続けていて、次の担当を任せられる人が育っていない |
| 業務負荷が高い | 残業や休日出勤が一部の人に集中している |
| 上司との関係の設問が低い | 1on1や面談が予定どおりに行われていない |
右の列は、管理職が毎月の会議で見ている数字や出来事に近い言葉です。管理職の仕事を、業務の管理と、人の成長や意欲に関わる仕事に分けて見る考え方は、ピープルマネジメントとはで扱っています。
管理職が部下と結果を話し合う場は人事が進め方を用意する
1枚の資料ができたら、管理職が部下と結果を話し合う場に移ります。部下に結果を返したときに職場が変わるかどうかを左右するのは、資料の出来よりも、話し合う場があるかどうかです。
この考え方は、組織開発の分野でも整理されています。中原淳氏の『サーベイ・フィードバック入門』の要約は、サーベイ・フィードバックを「見える化」「ガチ対話」「未来づくり」の3ステップで説明している。
2つ目のガチ対話は、フィードバック・ミーティングを開いて行う対話の工程にあたる。同じ要約は、見える化だけでは効果が上がらず、データに現場の人間が向き合い対話してこそ現場が変わる、と説明しています。
人事が用意するのは、レポートの見た目より、管理職が部下と話し合うための進め方です。
- 目的と約束事を伝える(5分) 誰が答えたかを探さない・評価に使わない・話した内容を個人名つきで外に出さない
- 1枚を一緒に見る(10分) 強みと気になる点を管理職が読み上げる
- 感じたことを話す(20分) 部下に聞く問いを2つ使い、全員が1回は話す
- 次にやることを1つ決める(10分) 誰が・何を・いつまでに行うかを書く
- 確認の日を決める(5分) 1か月後の朝会などで、進み具合を確認する日を決める
最初の1回は、人事か社外の進行役が同席し、2回目からは管理職が進めます。ただし、気になる点が上司との関係の設問である場合、管理職本人が進行すると部下は話しにくい。その回は人事が進行し、管理職には最後の10分だけ加わってもらう方法もある。
話し合いが、低く答えた人を探す方向に進むと、次回の回答で本音が書かれなくなります。低いスコアの原因を、部署や個人の名指しでなく条件で探す方法は、サーベイの決定木分析で解説しています。
エンゲージメントサーベイのフィードバックは閲覧率と話し合いの実施率で確かめる
話し合いまで進んだかどうかは、渡した後に人事が確かめないと分かりません。冒頭の3割は閲覧の数字でした。閲覧率だけを追うと、開いたかどうかの確認で終わる。
| 指標 | 測り方 | 確認する時期 |
|---|---|---|
| 閲覧率 | レポートを開いた管理職の割合(管理画面の記録) | 送付から2週間 |
| 面談の実施率 | 人事との面談を終えた管理職の割合 | 送付から3週間 |
| 話し合いの実施率 | 部下との話し合いを行った部署の割合 | 面談から1か月 |
| 次の一手の記録率 | 決めた行動を記録した部署の割合 | 面談から1か月 |
| 気になる点の変化 | 1枚に書いた設問の肯定率 | 次回のサーベイ |
話し合いの実施率まで測ると、結果が部署の行動に変わったかどうかが分かります。話し合いが行われていない部署には、督促のメールではなく、人事が進行役として入る日程を提案する。
毎月のパルスサーベイで結果を返し続ける場合は、返し方が続くかどうかで運用の成否が決まります。設問より返し方から直す順番は、パルスサーベイが意味ないと言われる理由で扱っています。
管理職向けの1枚と部下への問いをAIで作る指示文
1枚の資料の下書きは、部署の集計と、その部署の仕事の情報があればAIに作らせられます。貼り付けるのは集計済みの数字だけにして、自由記述の原文や社員の氏名は入れないでください。
あなたは人事部門で、エンゲージメントサーベイの部署別の結果を管理職に渡す担当者です。
次の【部署の集計】と【部署の仕事】から、課長に渡す1枚の資料の下書きを作ってください。
【部署の集計】
(設問ごとの肯定率、全社の肯定率、前回の肯定率、回答者数を貼り付け)
【部署の仕事】
・部署の役割:(例)法人向けの見積もりと受注処理
・今期の目標と追っている数字:(例)見積もりを回答するまでの日数、受注件数
・最近の出来事:(例)担当者2名の異動、繁忙期
【出力】
1. 部署の強み:全社より肯定率が高い設問を1つ選び、考えられる理由を1文で書く
2. 気になる点:前回から下がった、または全社より低い設問を1つ選び、回答者何人分の変化かを書く
3. 事業の数字とのつながり:気になる点が影響しうる業務の数字を2つ挙げる。因果は断定せず仮説として書く
4. 言い換え:気になる点の設問を、課長の仕事の言葉で1文に直す
5. 部下に聞く問い:話し合いで使う問いを2つ。答えた人が特定されない聞き方にする
6. 面談の冒頭で人事が伝える文:評価と比較に使わないことを含めて2文で書く
【注意】
・回答者が5名未満の設問の差は使わない
・誰が答えたかを推測させる書き方をしない
・他部署との比較や順位を書かない
・集計にない数字を作らない
3番の仮説は、面談で課長に「当たっていそうか」を聞く材料に使ってください。外れていれば、課長の見立てで書き直せば足ります。5番の問いは、部下との話し合いの3番目の工程でそのまま使えます。
なお、管理職への結果の渡し方と面談の進め方は、リデザインワークのサーベイ活用支援でも無料でご相談を承っています。
サーベイ結果は面談と話し合いの日程まで決めて管理職に渡す
管理職に結果を渡す仕事は、レポートを送った時点では終わりません。管理職が数字を自分への評価として読まず、自部署の仕事の言葉で理解し、部下と話す日が決まって初めて、結果が職場で使われます。
次に部署別の結果を送るときは、レポートのURLより先に、30分の面談の候補日をメールに書いてください。部下の育成を管理職の役割としてどう定めるかは、管理職の役割定義で扱っています。






