勤怠締めのチェック項目一覧|打刻漏れ・残業上限・有給5日を給与計算の前に確認する手順
締め日の翌朝、勤怠システムには打刻漏れのアラートが30件ほど残っている。給与計算の担当者には、2日後の正午までに確定データを渡す約束です。上長に催促して承認を終え、期限どおりに渡した。翌月になって、ある社員の時間外労働と休日労働の合計が、協定で決めた時間を超えていたと分かりました。
勤怠の締めで見落とした誤りは、後から給与の未払いとして表れる。厚生労働省は、賃金不払が疑われる事業場への監督指導(立入調査)の結果を公表しています。令和6年の結果では、全国の労働基準監督署が取り扱った賃金不払事案が22,354件、金額は172億1,113万円でした。
同じ資料の是正事例には、タイムカードで出退勤を記録しながら、残業代は自己申告で払っていた事業場が出てきます。申告がタイムカードより最大2時間少ない労働者が複数いた。記録が2つあっても、締めの時点で突き合わせなければ差は残ります。
この記事を読み終えると、自社の勤怠締めのチェック項目を一覧にし、項目ごとに誰がいつ確認するか、どれをシステムの判定に任せるかを決められます。項目の一覧、見落としの原因、機械と人の分担、締めの日程の順に説明する。
記事の最後には、勤怠データの列名と36協定の時間を貼り付けると、確認が必要な社員を抽出する条件と表計算の数式の下書きが出るAIへの指示文を載せました。締めた後の給与計算の確認まで減らしたい場合は、給与計算・年末調整のAI活用で全体を整理しています。
勤怠の締めとは給与計算の前に労働時間と休暇を確定させる作業
勤怠の締めとは、締め日までの出退勤・休憩・時間外労働・休暇の記録を点検して誤りを直し、給与計算に使う数字として確定させる作業です。
締めのチェックには、目的の違う2種類の確認が混ざっている。1つは、割増賃金や欠勤控除を正しく計算するための確認。もう1つは、労働時間の上限や有給休暇の取得義務を守れているかの確認です。
前者の誤りは翌月の差額精算で直せる。後者は、上限を超えた分の労働がすでに行われているため、締めで見つけても取り消せません。この違いが、後で説明する締めの日程に関わってきます。
勤怠の締めでチェックする項目一覧
2種類の確認を、記録の区分ごとに並べると次の表になります。判定の条件は例で、36協定の時間や社内の基準は自社の協定書と就業規則に置き換えてください。
| 区分 | チェック項目 | 判定の条件(例) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 打刻 | 打刻漏れ | 出勤か退勤の片方がない日 | 労働時間の把握のガイドライン |
| 打刻 | 打刻と残業申請の差 | 退勤の打刻と申請の終了時刻が30分以上違う日 | 同ガイドライン |
| 打刻 | 打刻の修正 | 理由と承認者の記録がない修正 | 社内の規程 |
| 休憩 | 休憩時間の不足 | 労働6時間超で45分未満、8時間超で1時間未満 | 労働基準法第34条 |
| 時間外 | 法定外の時間外労働 | 1日8時間または週40時間を超えた時間 | 同法第32条 |
| 時間外 | 36協定の時間 | 協定の1日・1か月・1年の時間を超えた社員と近づいた社員 | 同法第36条 |
| 時間外 | 特別条項の回数 | 月45時間を超えた月が協定の回数を超える社員 | 同法第36条第5項 |
| 時間外 | 時間外と休日労働の合計 | 当月で100時間以上 | 同法第36条第6項 |
| 時間外 | 複数月の平均 | 直近2〜6か月のいずれかの平均が80時間超 | 同法第36条第6項 |
| 時間外 | 月60時間を超えた時間 | 割増率5割以上で計算する時間の有無 | 同法第37条第1項 |
| 時間外 | 長時間労働者への通知 | 週40時間を超えた時間が月80時間超の社員 | 労働安全衛生規則第52条の2 |
| 休日 | 法定休日と所定休日の区分 | 法定休日の労働時間を分けて集計 | 労働基準法第35条 |
| 休日 | 休日労働の回数 | 協定の回数を超えた社員 | 同法第36条 |
| 深夜 | 深夜労働 | 午後10時から午前5時までの労働時間 | 同法第37条第4項 |
| 休暇 | 年次有給休暇の年5日 | 付与日数10日以上で、基準日から1年以内に5日へ届かない見込みの社員 | 同法第39条第7項 |
| 休暇 | 休暇の申請と勤怠の区分 | 有給の申請があるのに欠勤になっている日 | 社内の規程 |
| 休暇 | 欠勤・遅刻・早退 | 控除の対象となる時間と理由 | 就業規則と賃金規程 |
| その他 | 月の途中の入社・退職・異動 | 日割りの期間と所属の切り替え日 | 社内の規程 |
| その他 | 管理監督者の労働時間 | 管理職の在社時間の記録の有無 | 労働安全衛生法第66条の8の3 |
36協定とは、時間外労働や休日労働をさせるために、労働者の過半数で組織する労働組合か過半数を代表する者と書面で結び、労働基準監督署に届け出る協定を指す。
上限は労働基準法第36条にあり、原則は月45時間・年360時間です。特別条項を結んでも、時間外労働は年720時間以内、月45時間を超えられるのは年6か月までとなります。
表の中で見落としやすいのは、休日労働の扱いです。厚生労働省の時間外労働の上限規制 わかりやすい解説は、月45時間・年360時間には休日労働を含まないと明記している。一方、月100時間未満と平均80時間以内は休日労働を含みます。
同じ資料は、時間外44時間と休日労働56時間で合計が月100時間以上になれば法律違反になる例を挙げています。時間外労働だけを対象にしたアラートでは、時間外44時間の社員は一覧に出てきません。
年5日の有給休暇にも数え方の注意がある。厚生労働省の解説によると、対象は新たに付与された日数が10日以上の労働者で、管理監督者とパートタイム労働者も含みます。時間単位で取った分は、5日から差し引けません。
管理職の勤怠を締めの対象から外している会社もあります。ただ、厚生労働省 労働基準局の資料は、労働時間の状況の把握の対象に管理監督者を含めている。在社時間の記録は管理職の分も必要です。
勤怠の締めで見落としが起きる3つの原因
チェック項目が一覧になっていても、見落としは起きる。担当者の注意力の問題として片付けられがちですが、多くは集計の設定と確認の手順に原因があります。原因は大きく3つで、休日の区分、確認する期間の長さ、2つの記録の突き合わせです。
原因1 法定休日と所定休日の区分が勤怠の集計と合っていない
1つ目は休日の区分です。労働基準法第35条が求める休日は毎週1回、または4週で4日。会社が定める休日のうち、この法定の休日にあたる日の労働だけが、法律上の休日労働になります。
前出の時間外労働の上限規制の解説は、土日を休日とし日曜を法定休日とする会社の例を挙げている。土曜日の労働は法定休日労働に当たらず、月曜から土曜までの労働が40時間を超えた分は時間外労働になります。
土日の出勤をまとめて休日出勤として集計すると、割増率(休日3割5分、時間外2割5分)も、上限の計算に入れる区分もずれる。冒頭の是正事例でも、週40時間を超えた時間外労働の割増賃金が払われていませんでした。
対策は、就業規則で定めた法定休日の曜日を、勤怠システムの休日の区分と照合することです。照合はシステムの導入時と、規程や勤務の形を変えたときに行います。
原因2 当月の数字だけで複数月の上限を判定している
2つ目は確認する期間の短さです。締めは月単位で行うため、画面に出るのは当月の数字になる。ところが、2〜6か月の平均80時間、特別条項の回数、年720時間は、前の月までの数字がないと判定できません。
仮に当月の時間外と休日労働が70時間の社員がいるとします。当月だけ見れば、100時間未満の基準は満たしている。前月が95時間なら、2か月の平均は82.5時間で80時間を超えます。
対策は、社員ごとに直近6か月の時間外と休日労働の合計、年度内に月45時間を超えた回数、年度の時間外労働の累計を並べた累計表を作り、締めのたびに当月分を足すことです。
原因3 打刻と残業申請を別々に承認している
3つ目は、2つの記録を突き合わせる担当がいないことです。上長は残業申請を承認し、勤怠担当は打刻漏れを点検する。打刻と申請の差は、どちらの確認項目にも入っていません。
厚生労働省の労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインは、自己申告の時間と入退場記録やパソコンの使用時間に著しい乖離があれば、実態を調べて補正するよう求めている。
同じガイドラインは、申告できる時間外労働に上限を設けるなど適正な申告を妨げる措置を禁じ、36協定の時間を守っているように記録する慣習がないかの確認も求めている。申請の時間が毎月同じ数字に集まる部署は、打刻と並べて点検する対象になる。
対策は、打刻と申請の差が一定以上の日を毎月抽出し、本人に理由を書いてもらい、上長が確認する手順を締めに入れることです。冒頭の是正事例の事業場も、差があれば管理者が日々その理由を確認することにしました。
| 原因 | 起きる見落とし | 対策 |
|---|---|---|
| 休日の区分が集計と合っていない | 割増率の誤り・週40時間超の漏れ | 法定休日の曜日と勤怠システムの区分を照合する |
| 当月の数字だけで判定している | 平均80時間・特別条項の回数・年720時間の超過 | 直近6か月と年度の累計表を締めのたびに更新する |
| 打刻と申請を別々に承認している | 申告されない時間外労働 | 差が一定以上の日を抽出し、理由を本人と上長で確認する |
3つの対策は、どれも確認の条件を書き出して機械の判定に移す作業にあたる。判定を移した後に残る差し戻しの連絡や例外の判断まで含めて、手戻りを生まない業務の切り分け方を整理したのが、資料『AIによる業務効率化が進まない理由 ~業務設計編~』です。
なお、勤怠の締めのチェック項目の仕分けは、リデザインワークのAX支援でも無料でご相談を承っています。
勤怠チェックの効率化は機械の判定とAIの補助と人の確認に分ける
原因への対策が決まったら、一覧の項目を担当ごとに分けます。2人で同じ項目を見直す方法の限界はダブルチェックは無駄かで扱っているので、ここでは勤怠の項目に絞って分け方を示す。
機械の判定 条件を数字と日付で書ける項目。勤怠システムのアラートか表計算の関数で判定し、条件に合わない社員だけを一覧に出す。
AIの補助 文章を読む、または書く項目。申請理由や備考欄の読み取りと、本人への確認依頼の下書きを生成AIが行う。
人の確認 規程や前例だけでは決まらない判断を伴う項目。労働時間に当たるかどうか、特別条項を使うかどうかは人が決めます。
| 区分 | 勤怠のチェック項目 | 担当 |
|---|---|---|
| 機械の判定 | 打刻漏れ・休憩時間の不足・深夜労働の時間 | 勤怠システム |
| 機械の判定 | 法定外の時間外労働・36協定の各上限・平均80時間・月60時間超 | 勤怠システムと累計表 |
| 機械の判定 | 打刻と申請の差の抽出・年5日の取得の進み具合 | 勤怠システムと表計算 |
| AIの補助 | 申請理由と備考欄から、確認が必要な日の候補を挙げる | 勤怠担当が結果を確認 |
| AIの補助 | 差が出た社員への確認依頼と、上長への月中の連絡文の下書き | 勤怠担当が送信 |
| 人の確認 | 打刻と申請の差の理由が、労働時間に当たるかの判断 | 上長と勤怠担当 |
| 人の確認 | 特別条項を使うかの判断と手続き | 上長と人事 |
| 人の確認 | 年5日に届かない社員の時季指定(本人の意見を聴く) | 上長と人事 |
| 人の確認 | 月80時間を超えた社員への通知と面接指導の案内 | 人事と産業保健の担当 |
労働時間に当たるかどうかの判断は、AIに任せません。前出のガイドラインは、労働時間かどうかは就業規則などの定めにかかわらず、使用者の指揮命令下に置かれていたと評価できるかで客観的に決まるとしています。
判断は個別具体的に行うとされ、着用が義務付けられた服装への着替えや、参加が義務付けられた研修の時間も例に挙がっている。AIに任せるのは、判断が必要な日を見つけて、本人に聞く文面を作るところまでです。
労務の業務全体でAIに任せる範囲は、労務業務のAI活用で層に分けて整理しています。
リデザインワークのAX支援では、確認項目ごとに照合する2つのデータと差し戻す条件を1行ずつ書いた判定ルール表を先に作り、それから表計算や社内のシステムで判定させます。条件が表になっていれば、担当者が替わっても同じ基準で締めを続けられる。
勤怠の締めは本人・上長・勤怠担当の順番で進め月の途中にも上限を確認する
項目の分担が決まったら、確認する順番と日程を決めます。36協定の上限は、締めの日だけでなく月の途中にも確認が必要です。最初に説明したとおり、超えた時間は締めで見つけても取り消せない。
前出の時間外労働の上限規制の解説も、日々と月々の時間外労働の累計を把握し、協定の1か月と1年の限度を超えないよう注意することを求めています。次の日程は、締め日から4営業日で給与担当へ渡す場合の目安です。
| 時期 | 担当 | やること |
|---|---|---|
| 月の途中(週1回) | 勤怠担当から上長へ | 時間外と休日労働の累計を送り、月45時間・80時間に近い社員を知らせる |
| 締め日の翌営業日 | 本人 | 打刻漏れの修正、打刻と申請の差の理由の記入、休暇の申請 |
| 2営業日目 | 上長 | 修正と申請の承認、差の理由の確認 |
| 3営業日目 | 勤怠担当 | 機械の判定で残った件の確認、累計表の更新、勤怠の確定 |
| 4営業日目 | 給与担当 | 確定データの受け取り、前月との差の点検 |
| 確定の後すぐ | 勤怠担当と人事 | 月80時間を超えた社員への通知、面接指導の案内 |
最後の行は、労働安全衛生規則第52条の2に基づく。週40時間を超えた時間の算定を毎月1回以上決まった期日に行い、月80時間を超えた労働者には、その時間に関する情報を速やかに通知することとされています。
本人と上長の確認が2営業日目までに終わらない部署が毎月同じなら、催促を増やすより、締め日の前に未承認の件数を上長へ送るほうが確定は早まります。月の途中の連絡と同じ文面にまとめれば、送る手間も増えない。
固定残業代を払っている会社でも、36協定の上限と長時間労働者への通知は実際に働いた時間数で判定するため、時間外労働の集計は締めの項目に残ります。固定残業代の要件と差額の扱いは、みなし残業を人事制度に組み込む方法で扱っています。
勤怠データからチェックの条件と数式を下書きするAIへの指示文
ここまでの一覧と分担を、自社の勤怠データに当てはめるための指示文です。貼り付けるのは列名と協定の時間だけで、社員の氏名や実際の打刻データは入れない。
あなたは勤怠管理と給与計算の前工程を担当する実務者です。
次の【勤怠データの列】と【自社の決まり】をもとに、
勤怠の締めで確認が必要な社員を抽出する条件を作ってください。
【勤怠データの列】
(例)社員番号、所属、日付、出勤打刻、退勤打刻、休憩時間、
残業申請の開始時刻、残業申請の終了時刻、勤務区分(出勤・休日・有給・欠勤)、備考
【自社の決まり】
・法定休日の曜日:(例)日曜
・36協定の時間:1日〇時間、1か月〇時間、1年〇時間
・特別条項:あり(1か月〇時間、1年〇時間、月45時間を超える回数は年〇回まで)
・有給休暇の基準日:(例)4月1日
・打刻と申請の差として確認する時間:(例)30分以上
【出力】
1. 次の項目ごとに、判定の条件と、Excelの数式または手順を表にしてください。
打刻漏れ、休憩時間の不足、1日8時間と週40時間を超えた時間、
36協定の1日・1か月・1年の時間、時間外と休日労働の合計100時間、
直近2〜6か月の平均80時間、特別条項の回数、月60時間を超えた時間、
深夜労働の時間、年5日の有給休暇の取得の進み具合、打刻と申請の差
2. 複数月の数字が必要な項目は、どの列を何か月分持てばよいかを書いてください。
3. 労働時間に当たるかどうかなど、人が判断する項目は表に入れず、
「人が確認する項目」として別に挙げてください。
4. 【自社の決まり】に書かれていない数値は推測で埋めず、
「確認が必要な点」として最後にまとめてください。
出てきた数式は、過去に修正が入った月の勤怠データの写しで試すと確かめやすくなります。修正が入った社員が抽出されれば、条件は意図どおりに設定できている。
「確認が必要な点」に出てきた項目は、36協定の協定書と就業規則で確かめる箇所の一覧として使えます。Excelの中でCopilotに数式を書かせる場合の指示の書き方は、CopilotのExcelでの使い方にまとめました。
勤怠の締めは条件を書き出した項目から機械の判定に移す
勤怠の締めを早くしようとすると、催促の回数を増やすか、確認する人を増やす案が先に出ます。どちらの案でも、休日の区分のずれ、複数月の上限、打刻と申請の差という3つの見落としは減らない。
減らせるのは、何と何を比べ、どの数字を超えたら確認するかを書き出せた項目です。まずは自社の36協定の協定書を開き、1日・1か月・1年の時間と特別条項の回数を、一覧の横に書き込んでみてください。担当者が経験で判断している基準を文書にする手順は、業務の標準化とはで扱っています。






