在籍証明書の発行を効率化する方法|在職・雇用・就労証明書の違いと、依頼の受付から送付までの手順
人事のメールに、証明書の依頼が続けて届く。「保育園の申込で就労証明書をお願いします。区の様式を添付します」「住宅ローンの審査で在籍証明書が必要です。来週までにいただけますか」。
様式は提出先ごとに違い、就労証明書には月ごとの勤務日数と時間まで書く欄がある。担当者は人事システムで入社日を、勤怠システムで勤務時間を確認し、前回作ったファイルを開いて書き換える。慣れた担当者が休むと、その週の発行は止まります。
依頼される証明書のうち、国が様式まで定めているのが、保育所の申込に使う就労証明書です。こども家庭庁の保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)は、令和8年4月1日時点の保育所等の定員や待機児童の状況をまとめた資料です。保育所等を利用する児童の数は265万人でした。
保護者の就労を理由に保育の認定を申請する場合、申請書には原則として国が定めた様式の就労証明書を添えます(子ども・子育て支援法施行規則)。社員の子どもが保育所を申し込むたびに、勤務先の人事には就労証明書の依頼が届きます。
この記事を読み終えると、在籍証明書や就労証明書の依頼を受け付けた時点で必要な情報を集め、テンプレートへの差し込みとAIの確認で、作成から送付までを担当者に頼らず進める手順を自社で組めます。
証明書の違い、発行に時間がかかる3つの原因、受付から送付までの手順、様式と台帳、AIの確認、本人確認と個人情報の順に説明する。
記事の後半には、作成した証明書と依頼の内容、人事データの抜粋を貼り付けると、記載の食い違いと空欄、提出先の指定との差を一覧にするAIへの指示文を載せました。
証明書の依頼を人事への問い合わせ全体の中でどう位置づけるかは、人事への問い合わせを減らす方法で整理しています。
在籍証明書・在職証明書・雇用証明書・就労証明書の違い
効率化の手順に入る前に、依頼される証明書の名前と中身を整理します。名前が違っても中身が同じものと、国が様式を決めているものが混ざっているためです。
| 証明書の名前 | 主な提出先と用途 | 様式を決めるもの | 会社の対応 |
|---|---|---|---|
| 在籍証明書・在職証明書 | 住宅ローンや賃貸住宅の審査、転職先への提出など | 提出先の指定。指定がなければ会社の様式 | 社内の規程と運用で決める |
| 雇用証明書 | ビザの申請など海外向けの提出 | 提出先の指定。英文を求められることがある | 社内の規程と運用で決める |
| 就労証明書 | 保育所等の利用申込(市区町村) | 国の標準的な様式(子ども・子育て支援法施行規則の様式第一号) | 市区町村の様式に合わせて作成する |
| 退職証明書 | 退職者の転職先など | 会社の様式。記載は本人が請求した事項に限る | 請求があれば遅滞なく交付(労働基準法第22条) |
在籍証明書・在職証明書・雇用証明書の3つは、その会社に雇用されていることを証明する点で中身は同じです。違いは提出先が求める記載項目に表れるため、名前より先に、提出先の様式があるかどうかを確認します。
退職した人から在職中の証明を求められた場合は、労働基準法第22条の退職証明書として扱います。同条は、退職の場合に使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由について本人が請求したときは、遅滞なく交付するよう定めている。
就労証明書は国の標準的な様式が原則になった
4つのうち、就労証明書だけは国が様式を定めています。こども家庭庁の令和6年10月15日付け事務連絡によると、標準的な様式の原則使用を定めた内閣府令が令和6年9月30日に公布、施行されました。
ただし、すべての自治体がすぐに切り替えたわけではない。こども家庭庁の就労証明書のページには、令和6年10月1日時点で、令和7年4月入所分から標準的な様式を活用していない自治体の一覧が載っています。
一覧を数えると290市区町村で、うち26市区町村は活用する予定はないと回答していた。標準的な様式と自治体の独自様式の両方に対応できる準備が必要です。
標準的な様式の項目は、業種・雇用期間・雇用の形態・就労時間・就労実績・育児休業の取得など19あります。人事が手間を取られやすいのは就労実績の欄で、月ごとの日数と時間を書き、日数には有給休暇を、時間数には休憩と残業の時間を含めます。
欄外には、就労先の事業者に無断で作成または改変すると刑法上の罪に問われる場合がある、という注意書きもある。社員本人に記入させて会社が押印する運用は避けます。
在籍証明書の発行に時間がかかる3つの原因
証明書の種類を整理しても、1枚を作るのに時間がかかる状況は変わりません。発行に時間がかかる原因は、大きく3つあります。
原因1 依頼の時点で提出先の様式と必要な項目が分からない
1つ目は、依頼の受け方です。依頼がメールやチャット、口頭で届くと、様式の添付がなかったり、年収を書く必要があるかが分からなかったりする。そのたびに本人へ確認の連絡を入れ、返事を待つ日数がかかります。
原因2 記載する情報が人事・勤怠・給与のシステムに分かれている
2つ目は、情報の出どころです。入社日と雇用形態は人事システム、就労実績は勤怠システム、年収は給与システムにある。担当者は3つの画面を開いて値を書き写すため、1枚ごとに転記の時間と書き間違いの余地が生まれます。
原因3 証明書ごとの作り方と確認の基準が担当者の頭の中にある
3つ目は、作り方が文書になっていないことです。様式ごとのファイルが共有フォルダに散らばり、前回のファイルを複製して書き換える作り方が続いている。
この作り方では、前の社員の情報が一部だけ残った証明書が出ていくことがあります。どの項目を何と照らして確認するかも担当者ごとに違うため、確認の時間は短くならない。
在籍証明書の発行を効率化する6つの手順
3つの原因には、受付・作成・確認の3か所で手を打ちます。依頼から送付までを6つの手順に分け、それぞれの担当とやり方を決める。
| 手順 | やること | 担当 | 外す原因 |
|---|---|---|---|
| 1. 受付 | 社内の依頼フォームで、証明書の種類・提出先・様式の添付・必要な項目・受け取り方法・期限を受け取る | 依頼した社員 | 原因1 |
| 2. 台帳への記録 | 受付番号を付けて発行台帳に記録する | 人事 | 原因3 |
| 3. 作成 | 社員番号を入れてテンプレートに人事データを差し込む | 人事 | 原因2 |
| 4. 確認 | AIの補助で食い違いと空欄を一覧にし、人が最終確認する | 人事 | 原因3 |
| 5. 承認 | 発行者が内容を承認し、会社の印または電子印を付ける | 発行の責任者 | ― |
| 6. 送付 | 本人に渡し、控えを保存して台帳に送付日を記録する | 人事 | ― |
受付のフォームは、社内のアカウントでログインして使う形にしておくと、依頼者が本人かどうかの確認も同時に済みます。証明書の依頼を問い合わせの窓口と分けて受ける考え方は、総務のAI活用でも扱っている。
作成と確認は、受付と台帳を整えてから手を付けます。作成だけをAIや帳票の機能に任せても、受付で情報が集まらなければ、AIに渡す前の確認と、出てきた証明書の見直しが新しい仕事として増えるからです。
業務を道具に移す前に押さえておきたい、手戻りを生まない業務の切り分け方を整理したのが、資料『AIによる業務効率化が進まない理由 ~業務設計編~』です。
なお、在籍証明書や就労証明書の発行手順の見直しは、リデザインワークのAX支援でも無料でご相談を承っています。
在籍証明書の様式を3種類に絞り発行台帳で管理する
6つの手順のうち、作成と確認を速くするのは様式と台帳の準備です。最初に、会社が自分で持つ様式を3種類に絞ります。
- 自社の在籍証明書(和文)
- 自社の在籍証明書(英文)
- 就労証明書の標準的な様式
提出先が独自の様式を指定している場合は、受付のフォームで添付してもらう。自社の様式は、使う項目を下の表から選んで1枚にまとめます。
次に、証明書の項目ごとに、値をどのシステムから取るかを決めた対応表を作る。この表があれば、新しい様式が来ても、項目を当てはめるだけで作成できます。
| 証明書の項目 | 値を取るシステム | 確認すること |
|---|---|---|
| 氏名・生年月日 | 人事システム | 旧姓の併記の希望 |
| 入社年月日・雇用期間 | 人事システム | 有期の場合は契約の終了日 |
| 雇用の形態 | 人事システム | 様式の選択肢との対応 |
| 所属・役職・勤務地 | 人事システム | 就労証明書では就労先の事業所の名称と住所 |
| 就労時間 | 就業規則と勤務区分 | 固定の勤務か変則の勤務か |
| 就労実績(月ごとの日数と時間) | 勤怠システム | 有給休暇を日数に、休憩と残業を時間数に含める |
| 育児休業の期間 | 人事システムの休業の記録 | 予定と取得済みの区別 |
| 年収・給与 | 給与システム | 本人が依頼した場合だけ記載する |
発行台帳には、受付番号・受付日・社員番号・証明書の種類・提出先・使った様式・作成者・確認者・発行日・送付方法・送付日を残します。
台帳があると、同じ社員から同じ様式の依頼が来たときに前回の控えを参照できる。受付日と送付日の差を集計すれば、効率化の前後で何日短くなったかも示せます。
在籍証明書はテンプレートへの差し込みとAIの確認で作成時間を短くする
様式と対応表が整えば、作成は差し込みで済みます。表計算ソフトや文書作成ソフトの差し込みの機能、または人事システムの帳票の機能で、社員番号を入れると対応表に沿って値が入る状態にする。
差し込みにすると、原因2の転記の手間と書き間違いはなくなります。ただし、差し込みでは見つからない誤りが4つ残る。
- 提出先の様式が求める項目と、作成した証明書の項目が合っていない
- 空欄が残っている(育児休業の予定など、データにない項目)
- 依頼の内容と合っていない(英文の要否・旧姓の併記・部数)
- 期間が合っていない(雇用期間と就労実績の月、休業の期間)
この4つは、作成した証明書・依頼の内容・人事データの3つを並べて見比べる作業で、AIの補助が使えます。
確認作業を機械の判定・AIの補助・人の確認に分ける考え方は、ダブルチェックは無駄かで説明しています。人の確認に残すのは、依頼にない項目を書かない判断と、休職中や退職予定の社員の証明書の扱いです。
社員の氏名や生年月日を生成AIに入力してよいかは、会社の利用規程と契約しているサービスで決まります。入力してよい範囲の決め方は、人事部の生成AI導入で整理している。
在籍証明書の記載の食い違いと空欄を一覧にするAIへの指示文
次の指示文に、作成した証明書の内容・依頼の内容・人事データの抜粋を貼り付けると、食い違いと空欄、提出先の指定との差が表で出ます。
あなたは人事の証明書発行を確認する担当者です。
以下の3つを照らし合わせ、作成した証明書の誤りの候補を一覧にしてください。
証明書を書き直すことはせず、指摘だけを出してください。
【依頼の内容】
・証明書の種類:
・提出先:
・提出先の様式で求められている項目(様式の項目名を貼り付け):
・必要な項目(年収の要否、英文の要否、旧姓の併記など):
【人事データの抜粋】(氏名は記号に置き換えて入力)
・社員:Aさん
・入社年月日:
・雇用期間:
・雇用の形態:
・所属・役職・勤務地:
・所定の就労時間:
・就労実績(月ごとの勤務日数と時間):
・休業の記録:
【作成した証明書の内容】
(証明書の文面または各項目の値を貼り付け)
出力の条件:
1. 「項目」「証明書の記載」「人事データまたは依頼の内容」「指摘」の4列の表にしてください。
2. 指摘は次の4種類に分けてください。
提出先の様式との不一致・空欄・依頼の内容との不一致・期間の不整合
3. 依頼で求められていない項目(年収など)が記載されていれば、指摘に含めてください。
4. 人事データに無い値を推測で補わず、「人事データに無いため確認が必要」と書いてください。
5. 最後に、本人に確認すべき事項があれば質問の形でまとめてください。
3つ目の条件を入れているのは、依頼にない項目が記載されていないかを、人の確認の前に洗い出すためです。4つ目の条件は、AIが空欄をもっともらしい値で埋めることを防ぐ。
在籍証明書の発行で守る本人確認と個人情報の注意点
発行を速くすると、確認を省いた分だけ個人情報の扱いで誤りが起きやすくなります。速さと引き換えにしない注意点は3つある。
1つ目は、記載する項目を依頼の範囲に限ることです。証明書には氏名・住所・給与など個人情報が並ぶ。年収は本人が依頼した場合だけ記載し、テンプレートの既定値には入れません。
2つ目は、本人以外への回答と送付の扱いです。個人情報保護委員会のQ&A(Q7-12)は、退職した従業者の在籍状況や勤務状況が個人データになっている場合、第三者からの問い合わせに答えることは個人データの第三者提供に該当するとしています。
本人の同意がある場合や例外事由に当たる場合を除いて、提供はできない。
在職中の社員の在籍確認の電話も、本人に確認してから回答する運用にしておくと、担当者が判断に迷いません。提出先へ会社から直接送る場合は、本人からの依頼を台帳に記録しておきます。
依頼してきたのが本人かどうかは、社内のアカウントでログインした依頼フォームで確認する。家族が代わりに依頼してきた場合は、本人の了承を取ってから受け付け、その記録も台帳に残します。
3つ目は、就労証明書の作成者です。標準的な様式の欄外にあるとおり、事業者に無断で作成や改変をすると刑法上の罪に問われる場合がある。本人が記入した証明書に押印だけを求められた場合も、会社が人事データから作成し直して発行します。
在籍証明書の発行は受付の項目を決めるところから短くなる
在籍証明書の発行を速くしようとすると、作成をAIや帳票の機能に任せる話が先に出ます。しかし、時間がかかっている原因の1つ目は依頼の受け方にあり、作成の速さでは解消しません。
最初に決めるのは、受付のフォームで聞く項目です。証明書の種類・提出先・様式の添付・必要な項目・受け取り方法・期限の6つを依頼の時点で受け取れれば、確認の往復がなくなり、作成と確認を差し込みとAIに任せられる。
着手するなら、過去1年に発行した証明書をメールの履歴から書き出し、種類と提出先ごとの件数を数えるところからです。様式と手順を文書にする進め方は、業務の標準化とはで扱っています。






