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人事評価への不満が出る理由|基準の非開示・評価者のばらつき・処遇との断絶と直す手順

「なぜあの人が昇格したのか、誰も説明できないんです」。人事制度の相談でお会いした担当者から、評価の話を始めて10分ほどでこの一言が出てきました。制度の設計に問題があるという話ではありません。運用の結果として、本人にも周囲にも理由が見えなくなっていた。

人事評価への不満は、多くの会社で毎年同じ時期に噴き出します。評価面談の直後に退職の申し出が重なる。そんな経験をお持ちの人事担当の方は少なくないはずです。

そして、不満が出るたびに評価制度そのものを疑い、等級を刻み直したり評価項目を入れ替えたりする。ところが翌年も同じ不満が出ます。手を入れる場所が違うためです。

この記事では、人事評価への不満を基準・評価者・処遇の3つに分けたうえで、制度を作り直しても減らない理由を説明し、運用だけで直す手順まで扱います。

なお、評価制度そのものの組み立て方から確認したい場合は、人事評価制度のつくり方で等級と評価と報酬のつなぎ方を扱っています。

記事の最後には、自社の不満がこの3つのどれに当たるかを判定するチェックリストを載せました。10項目に答えると、直す場所が制度側か運用側かに分かれるので、次の打ち手を決める材料としてお使いください。

人事評価への不満は基準・評価者・処遇の3つに分かれる

打ち手の話に入る前に、不満の中身を分けておきます。「評価に納得できない」という一言には、性質の違う3つの不満が混ざっているためです。混ざったまま対策を打つと、どれにも効きません。

不満1 評価基準が本人に開示されていない

最も多いのがこれです。評価項目は人事の手元にあり、評価者も見ている。ところが被評価者本人には、自分が何で評価されるのかが具体的に渡っていません。

期末に結果だけが伝えられるため、本人には点数の根拠が分かりません。この状態では、どれだけ精緻な基準を作っても納得は生まれない。基準は開示されて初めて機能します。

不満2 評価者によって評価の付け方が違う

同じ基準でも、当てる人によって結果が変わります。リデザインワークの人事制度設計支援では、次の偏りをよく見かけます。

  • 全員が標準のB評価以上で、下振れの評価を一人も付けない評価者
  • 逆に、上振れの評価を部下の大半に付ける評価者
  • 期初の目標を見ずに、直近3か月の印象で付ける評価者

人事は部門間の割合を合わせるために調整を入れます。ところが調整後の結果は、評価者が本人に説明した内容と食い違う。説明と結果がずれた時点で、本人の納得は失われます。

不満3 評価が昇給や昇格にどう反映されるか分からない

3つ目は、評価そのものではなく、評価の結果がどこへ反映されるのかが分からない場合。評価はAだったのに昇給額が去年と同じ、というのが典型です。

評価と等級と報酬が、社内で別々の表として管理されていると起こります。本人からは、評価が何に効いたのかを追えない。

制度を作り直しても不満が減らない理由

3つを並べると、制度の設計に原因があるのは3つ目だけだと分かります。1つ目と2つ目は、同じ制度のまま運用のしかたで起きている。

にもかかわらず、不満が出ると制度の改定が検討されます。評価項目を減らす、等級を増やす、目標管理の様式を変える。いずれも1つ目と2つ目には効きません。開示されていない基準は、項目を減らしても開示されないためです。

制度改定には半年から1年かかります。その間、不満の大半を占める1つ目と2つ目は手つかずのまま残る。これが、改定した翌年も同じ不満が出る理由です。

制度を変えずに運用だけで直す3つの手順

では、運用は何から直すのか。順番があります。基準を開示し、評価者の付け方を合わせ、処遇とつなぐ。この順でなければ効きません。

やること 外れる不満 かかる期間
1 評価基準を被評価者へ期初に開示する 基準の非開示 2週間
2 評価者の付け方を分布で見せて合わせる 評価者のばらつき 1評価期間
3 評価と昇給の対応表を公開する 処遇との断絶 3か月

手順1 評価基準を期初に本人へ渡す

まず、評価シートを期初に本人へ配ります。期末ではなく期初。何で評価されるかを知ったうえで期間を過ごすことが条件です。

このとき、項目名だけを渡しても足りません。必要なのは、項目ごとに「この水準ならB、この水準ならA」と書き下した記述。記述が抽象的だと、結局は評価者の解釈に戻ってしまう。

手順2 評価者ごとの評価分布を本人に見せて偏りをなくす

次に、評価者ごとの評価分布を一覧にします。人事が調整して整えるのではなく、評価者本人に自分の分布を見せる。

自分だけが全員にB以上を付けていると分かれば、多くの評価者は次の期から変えます。人事が調整で数字を動かすのは、あくまで事後の帳尻合わせに過ぎません。付け方そのものを合わせたほうが、本人への説明と確定した評価がずれない。

手順3 評価と昇給の対応表を公開する

最後に、評価が処遇のどこに効くのかを1枚にします。評価Aなら昇給率は何パーセント、2期連続のAなら昇格の候補に入る。この対応が見えた時点で、3つ目の不満は解消する。

昇格は営業成績とマネジメント適性を分けて判断する

手順3まで進めると、次に昇格の基準が論点になります。ここで起きるのが、基準を満たしていない人材の昇格です。

リデザインワークが人事制度の設計でご一緒したある大手企業では、評価基準が社内で共有されないまま運用され、基準を満たしていない人材が昇格する事態が起きていました。スキルの情報も部門ごとに分断され、全社で見比べられる状態になっていなかった。

この会社で効いたのは、昇格の判断軸を2つに分けることでした。実績を上げる能力と、組織を率いる能力は別の軸です。営業成績が高い人が、そのままマネジメントに向いているとは限りません。

見るもの 使う場面
実績 担当領域での成果と再現性 等級内の昇給
統率 目標の分解と権限委譲と育成 管理職への昇格

2軸に分けると、実績は高いが統率の経験がない人材を、昇給で報いつつ昇格は見送る判断ができます。1軸のままでは、報いる手段が昇格しかない。

なお、昇格と昇進は社内で混同されがちです。違いは昇格と昇進の違いで整理しました。

評価の設計から運用の定着までを、AIでどこまで効率化できるかを整理したのが資料『AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか』です。

AIで人事評価制度の構築はどこまで効率化できるか
資料をダウンロード

自社の不満が基準・評価者・処遇のどれかを判定する10項目

最後に、手元で判定できるチェックリストを置きます。当てはまる項目にチェックを入れてください。

1つ目 基準の非開示

  • 評価シートを本人が見るのは期末である
  • 項目ごとの水準の記述が「積極的に取り組む」のような抽象的な文言である
  • 評価の理由を本人へ書面で渡していない

2つ目 評価者のばらつき

  • 評価者ごとの分布を一覧で見たことがない
  • 人事が部門間の割合を調整している
  • 評価者が本人へ伝えた内容と、確定した評価が変わることがある

3つ目 処遇との断絶

  • 評価と昇給率の対応表が社内に公開されていない
  • 昇格の要件が等級定義以外に書かれていない
  • 2期連続で高評価だった人の処遇が、そうでない人と変わらない
  • 実績と統率を分けずに昇格を判断している

1つ目と2つ目に3つ以上当てはまる場合、制度の改定より先に運用を直したほうが早く効きます。改定は3つ目のチェックが多いときの選択肢です。

直す場所が制度か運用かを、実際の評価データで切り分ける

リデザインワークの人事制度設計支援では、評価の運用についても無料でご相談を承っています。現在の評価シートと評価者ごとの分布をお聞きして、先に手を入れる箇所をご一緒に決めます。

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不満を減らすのは制度の精緻さではなく基準の開示

人事評価への不満を減らす作業は、制度を精緻にする作業とは別物です。精緻にするほど説明が要る項目は増え、開示されなければ不満はむしろ増えます。

期初に基準を渡し、評価者の付け方をそろえ、結果が処遇のどこへつながるかを見せる。この3つは、いずれも制度を変えずに今期から始められます。

リデザインワーク 編集部

リデザインワークは、仕組みを変え、行動を変え、企業成長と多様な個人の活躍が同時実現できる企業づくりを、HRコンサルタントとAIプロダクトで支援する会社です。経営戦略と一貫した人事戦略を描くだけでなく、それが現場に定着し行動が変わるまで伴走する中で得た知見やノウハウを発信しています。

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