業務棚卸しの粒度の決め方|27項目で業務の7割をカバーした実例と書き出す範囲の基準
「とりあえず全部書き出してください」。業務棚卸しをそう始めた結果、3週間たっても終わらない。AX支援の相談で、この止まり方をよく見かけます。
全部書き出そうとすると終わらない。業務は分解しようと思えば、いくらでも細かくできるためです。請求書の処理という1つの業務も、受領・内容の確認・システム入力・承認依頼・保管と分けられ、さらに各工程が分かれていきます。
終わらせるには、どこで止めるかを先に決める。この記事では、書き出す範囲を決める3つの基準と、実際に何項目書けば足りたのかの実例、そして粒度をそろえるためのプロンプトまで扱います。
そもそもの進め方から確認したい場合は、業務棚卸しをAIで進めるで、音声入力で分解する手順を扱っています。
記事の後半には、書き出した項目の粒度をそろえるプロンプトを載せました。バラバラの粒度で書かれた一覧を貼り付ければ、同じ水準に整理し直した表が出てくるので、複数の担当者から集めたあとの突き合わせにお使いください。
全部書き出そうとすると終わらない
止まる原因は、担当者の作業量ではありません。終わりの条件が決まっていないことにあります。
書き出す側は「細かく書いたほうが良いのだろう」と考えます。一方で依頼する側は、何項目あれば十分なのかを示していない。そのため作業は、担当者が疲れた時点か、締切が来た時点で止まります。
この止まり方には2つの損があります。途中で止まると、書けている部分と書けていない部分が混ざる。そして、粒度が担当者ごとに違うため、集めたあとに比べられません。
27項目で業務の7割をカバーできた
では、どこまで書けば足りるのか。実例を1つ。
リデザインワークのAX支援で、給与計算の業務を棚卸ししたときのことです。当初は全95項目を洗い出す想定でした。ところが進めていくと、27項目を定義した時点で、全業務のおよそ7割をカバーしていました。
残った68項目は、頻度の低い例外処理。年に1度しか起きない手続きや、特定の条件が重なったときだけ発生する対応でした。実務担当者が整理を進めた結果、最終的な項目数は50から60程度に精査される見通しになりました。
ここから言えることが2つあります。
- 業務の大半は、少数の項目に集中している。全体の3割の項目で、7割の作業量を占めていた
- 残りは書く価値が薄い。年1回の手続きを書き出しても、自動化の対象にはならず、読み返されることもない
先に全体像を作りたいなら、上位3割で止めてよい。そこから先は、必要になった時点で足します。
書き出す範囲を決める3つの基準
では、何を書いて何を書かないのか。3つの基準で仕分けます。上から順に当てます。
| 基準 | 書く | 書かない |
|---|---|---|
| 頻度 | 毎日・毎週・毎月あるもの | 年1回以下のもの |
| 時間 | 1回あたり10分を超えるもの | 数分で終わるもの |
| 担当 | 複数人が同じことをしているもの | 1人しか関わらない例外対応 |
3つのうち2つに当てはまれば書く、1つなら保留、というくらいの粗さで足ります。判定に時間をかけると、それ自体が棚卸しの工数になります。
頻度の低い業務を後回しにしてよい理由
年1回の業務を書かないことには、抵抗を感じる方が多いはず。抜けが出るように見えるためです。
ただし、棚卸しの目的は業務のマニュアルを作ることではありません。どこにAIを入れるか、どこを減らすかを決めるための材料を作ることです。年1回の業務を自動化しても、浮く時間は年に数時間。着手の対象にはなりません。
漏れが気になる場合は、項目を書かずに「年次の例外あり」と1行だけ残す。存在は記録され、作業量は増えません。
粒度がそろっていないと比べられない
範囲が決まっても、もう1つ問題が残ります。担当者によって書く細かさが違うことです。
同じ請求書の処理でも、Aさんは「請求書処理」と1行で書き、Bさんは工程ごとに5行で書く。この状態で集めると、どちらが重い業務なのかが分かりません。
そろえる方法は1つ。1項目あたりの所要時間を、5分から60分の範囲に収めることです。
- 60分を超える項目は、工程で分けて2つ以上にする
- 5分を下回る項目は、前後の作業とまとめて1つにする
時間を基準にすると、業務の性質が違っても同じ粒度に落ちる。「工程で分ける」「作業で分ける」のような言葉の基準より、担当者間でぶれません。
業務を5つの観点で分解し、AIに任せる範囲と人が確認する範囲まで決める手順をまとめたのが資料『業務棚卸しフレームワーク』です。

資料をダウンロード ↗
粒度をそろえるプロンプト
複数の担当者から集めた一覧を、そのまま貼り付けて使います。
あなたは業務改善の専門家です。以下は複数の担当者が書き出した業務の一覧で、
書き方の細かさがそろっていません。
[ここに業務の一覧を貼り付ける]
次の3点を出してください。
1. 1項目あたりの所要時間が5分から60分に収まるよう、分割と統合をした一覧。
分割したものには「分割」、まとめたものには「統合」と印を付ける
2. 頻度が年1回以下と推定される項目を別枠にし、「例外処理」として分ける
3. 同じ業務を別の名前で書いていると思われる組み合わせを指摘
所要時間が書かれていない項目は、推定せず「未記入」としてください。
出てきた分割と統合は、あくまで候補。所要時間の実感は担当者が持っているため、確定の前に本人へ確認します。
3番の重複指摘は、複数部署から集めたときに効きます。同じ作業を部署ごとに違う名前で呼んでいることが多く、統合すると項目数は2割ほど減る。
どこまで書き出すかを、手元の業務に合わせて決める
リデザインワークのAX支援では、棚卸しの設計について無料でご相談を承っています。対象の業務と関わる人数をお聞きして、最初に書き出す範囲をご一緒に決めます。
棚卸しは網羅ではなく着手の順番を決める作業
業務棚卸しを終わらせる作業は、業務をすべて記録する作業とは別物です。全部書こうとするから終わらない。
頻度と時間と担当の3基準で上位3割に絞り、1項目5分から60分の粒度でそろえる。これだけで、着手する業務を選ぶ材料としては足ります。残りは必要になった時点で足せます。
書き出したあとの仕分けは省人化と省力化の違いで、着手順の決め方まで扱っています。





