2050年に向けた「サステナビリティ・ビジョン」と現在との「間」を描く長期ビジョンを策定
大きな変化を乗り越えていくための土台ができた

大王製紙株式会社 

(左)経営企画本部 経営企画部 経営企画課 課長 酒井 雅貴さん
(中)経営企画本部 経営企画部 経営企画課 チーフ 平井 友樹さん
(右)サステナビリティ推進本部 サステナビリティ推進部 部長 飯島 恵一さん

長期ビジョン策定前の課題

大きな変化を乗り越える新たな長期ビジョンが必要

酒井さん:

もともと、2026年度には「売上高8,000億〜1兆円・営業利益率10パーセント」を目指していましたが、ウクライナ情勢や原燃料の高騰、為替変動といった外部環境の影響で、収益構造が大きく変わってしまいました。

紙・板紙事業は現在の稼ぎ頭ですが、新聞用紙やコピー用紙といったメディア用途の需要が減少している現状を目の当たりにしながら、改めて「自分たちは10年後、本当はどこに行きたいのか」を描き、長期ビジョンを作り直す必要があると考えていました。

(写真:酒井さん)

(写真:飯島さん)

飯島さん:

「売上高8,000億〜1兆円・営業利益率10パーセント」という目標は2026年度末までの達成を目指し10年前に立てたもので、これまで長期ビジョンとして機能していました。しかし、現時点で残すところ数年しかなく、もはや〝長期〟ビジョンとは言えない状態でした。そのため、「これから10年後に何をしているのか」、「どういう姿が我々にとってベストなのか」を描くべきだという危機感がありました。

一方で、サステナビリティ推進部では「サステナビリティ・ビジョン」を作っていました。これは2050年あるいはそれ以上先の未来を見据えていこうというものです。しかし、その遠い未来と現在の取り組みをつなぐ「間」の部分が欠けており、その中間的なビジョンを新たに作りたいとも考えていました。

酒井さん:

長期ビジョンの策定に関しては、2022年頃から議論を重ねていました。社内でチームを組んで進めようと試みたものの、なかなか進展せず、最終的に第三者的な視点を持つ外部の専門家に入ってもらう必要があると判断しました。

まずは、他の企業がどのような長期ビジョンを描いているのかを、サステナビリティとの統合方法も含めて20〜30社ほど調査しました。そのなかで、コクヨ株式会社さんは弊社と複数の共通点があり、比較的親和性が高いのではないかと考えました。コクヨさんの長期ビジョンや統合レポートなどを読み進めるなかで、構造の整理、変革の規模、ビジョンの統合的なまとまりに感銘を受け、「これをどのように作り上げたのだろう」と調べたところRedesign Workさんの公式サイトにたどり着き、問い合わせをするに至りました。

飯島さん:

当時、社内に設置しているサステナビリティ委員会では「大王製紙の強み」を考える方向からアプローチしながらも、明確な答えを出せずにいました。コアとなる強みがなければ10年後の方向性も見えないだろうと話していたところ、経営企画部でも同様の課題に取り組んでいることがわかりました。

そこで、まずは大きな視点で長期ビジョンを策定するのが適切だろうと判断し、一緒に進めることになりました。

(写真:飯島さん)

酒井さん:

経営企画部でも、2026年度までの目標とサステナビリティ推進部が掲げていた「サスナビリティ・ビジョン」のリンクが弱いと感じていました。だからこそ、一緒に新しい長期ビジョンを考えようという発想に至り、長期ビジョン策定の事務局はサステナビリティ推進部と経営企画部が部を跨いで担うことになりました。

長期ビジョン策定の効果

2050年と今の「間」を描くことで、議論する土台ができた

飯島さん:

私はサステナビリティ推進部として統合レポートを作成していますが、その過程で非常に苦労してきました。弊社は収益を大事にするあまり、「社会課題解決」と「財務価値向上」、あるいは「短期」と「長期」を統合して語るのが難しい状況でした。

しかし、長期ビジョンが完成してからは、統合レポートの作成がスムーズになりました。時間軸で見ると、最も遠くにサステナビリティ・ビジョンがあり、中ほどに長期ビジョン、さらに手前に中期事業計画が位置します。今回の統合レポートは長期ビジョンを大きなテーマとしてベースに据え、一連の流れで作成しました。将来のビジョンと今との「間」の部分を描きたいのに描けないという課題も解決でき、本当に良かったです。

 

(写真:飯島さん)

(写真:平井さん)

平井さん:

4月の営業全体会議で社長が長期ビジョンについてスピーチする場面があり、その録画を従業員に配信して感想を求めるアンケートを実施しました。会社が目指す方向性には様々な意見がありましたが、好意的な反応のなかで最も多かったのは「2035年の姿が分かって良かった」という声です。意見のなかに「この会社が将来的にどこへ向かっているのか分からなかったので、示してくれて良かったです」という声もあり、取り組んで本当に良かったと素直に思いました。

否定的な意見のなかにも、いろいろな現場の声を率直に聞くことができ、見えていなかった課題が浮かび上がってきました。これはこれでやった甲斐があった、長期ビジョンを作り発表して良かったと思います。出てきた課題を解決することが今後の課題ですね。

酒井さん:

ステークホルダーの反応をみても、本当に必要な取り組みだったと思っています。長期ビジョンを作ることによって「議論するための土台」ができました。この土台があるからこそ、今後どうアクションするのか、あるいはゴール自体を見直すべきかといった議論が可能になりました。次の課題が見えたことも含めて、大きな前進だと認識しています。

また、長期ビジョン策定に「会社として取り組んだ」ということが重要です。長期ビジョン策定に動き出さなければアンケートも取っていませんし、従業員の率直な意見や課題意識も分からないままでした。課題が明らかになれば、それに対してアクションを起こすことができます。つまり、すべてが動きだしたということであり、策定する意味は非常に大きかったと強く感じています。

飯島さん:

この取り組みの効果は、これから徐々に現れてくるのではないかと思います。日々の経営の意思決定にも少なからず影響があるでしょう。例えば、投資計画を検討する際に、さまざまな意見が出たとしても、長期ビジョンで「海外」と「新規事業」を重視する方針が示されているため、それに沿った判断ができるはずです。

やはり長期ビジョンの「使い方」が重要です。社員一人ひとりがそれをどう活用し、〝自分ごと〟として取り入れるかが鍵になります。今後の議論のなかで、長期ビジョンがその効力を発揮していくことを期待しています。

今後の構想

長期ビジョンを広く落とし込み、行動変容につなげていく

(写真:酒井さん)

酒井さん:

長期ビジョン策定にあたって、議論に直接関与したメンバーとそうでないメンバーの間では、納得感や浸透度に差が生じます。今後の課題は、どうやって全社的にビジョンを共有し、足並みを揃えていくかが鍵だと考えています。具体的な構想としては、社長のタウンホールミーティングや、経営企画部が現場へ赴いて説明する機会を設けるなど、社内広報活動を強化することが挙げられます。同時に、取締役や経営陣、経営企画部内でも、長期ビジョンの解像度をさらに上げ、全員が活用できるよう努めます。
また、長期ビジョンを普段の行動変容にどう反映させるかも、今後の重要な課題です。長期ビジョンを実現するために、日々の意思決定や投資計画をどう変えていくかといった具体的なテーマで接続・推進議論を進めていきたいと考えています。

Redesign Work社に依頼した決め手

型にとらわれない、自社に寄り添う形のアプローチ

(写真:酒井さん)

酒井さん:

Redesign Workさんの他に2社、候補として検討しました。最終的な決め手はシンプルにフィーリングで、林さん(Redesign Work代表:林 宏昌)と翠さん(Redesign Work シニアコンサルタント:翠 早奈英)の明るさと話しやすさが非常に大きかったです。

連携を密にする必要があるため、素直に「話したい」と感じられる相手が良いと思いました。

飯島さん:

もちろん、規模や実績などは一通り拝見しました。ただ、最終的にはやはり「弊社に合う感じで進めてくれるか/カスタマイズできるか」がポイントでした。他の2社はそれぞれにテンプレートを持たれている印象がありました。

それに当てはめて手順どおりにやっていくのが良いかとも思いましたが、弊社の場合はテンプレートに沿って機械的に作るよりも、意見を聞いたうえで寄り添う形で進めてもらう方が合っていると考えました。

 

酒井さん:

弊社は全てを任せきりにせず、自分たちも議論に参加して決めたいという主体的な感覚を常に持っているため、Redesign Workさんのアプローチが適しているだろうと話していました。

 

平井さん:

もし「テンプレート通りに進めましょう」という進め方だったら、結局まとまりがなかったと思います。弊社はいわゆる〝コンサル〟的なものには抵抗感を示す人が少なくありません。

Redesign Workさんでなければ、話し合いの雰囲気も大きく違っていたはずです。

(写真:平井さん)

 飯島さん:

お二人にお任せすれば、テンプレート型の〝コンサル〟や教科書的な進め方ではなく、より受け入れられやすい進め方が可能だと感じました。人柄に加えて、林さんと翠さんのキャリアにも説得力がありました。

プロジェクト期間は当初は7カ月くらいと見込んで昨年3〜9月で契約させていただいたものの、終わったのは今年の4月でした。長期ビジョンの策定自体にかかった時間は1年ほどで、それをどう発表するか、どうコンテンツに落とし込むかというところに2〜3カ月かかりました。

リデザインワーク社に感じられた価値。

(写真:左から 平井さん 酒井さん 飯島さん)

酒井さん:

今回は多様なバックグラウンドの社員が参加していたため、意見を集約するのが難しい場面もありました。社内の誰かがまとめようとしても、異なる立場から全く違う意見が出るため、うまくいかないことが多かったです。

第三者の立場から整理や論点設定をしてもらったことで、意見をスムーズに集約できたと思います。

飯島さん:

最初のフェーズからばらばらの意見が飛び交って、一体これをどうまとめるのだろうと心配になりました。しかし、上手にファシリテートしていただいたおかげで、良いポイントから議論を始めることができました。本当にファシリテートが巧みで、学びの多い経験でした。

 

酒井さん:

議論に参加して素朴な質問をしてくれたことも、実はとても助かりました。誰かが話している時に「その○○って何ですか?」と何度も聞いてくれました。私たちはつい知っている前提で話を進めがちですが、10年20年経つと、そういった基本的なことは聞きにくくなってしまいます。質問してくださったおかげで、私たちも勉強になりましたし、第三者の方に入ってもらうことの良さを改めて実感しました。

 

飯島さん:

愛媛県にある当社の三島工場を一緒に訪れた際も、分からないことがあれば積極的に質問してくれて、その順応性の高さには本当に感心しました。また、お二人の引き出しの多さにも驚きました。キャリアがコンサルティングに活かされていて、単なる知見ではなく、実際の経験に基づいたアドバイスをいただけて、非常にありがたいですし、大きな価値を感じました。

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