コクヨ株式会社
(左)経営企画本部 経営企画室付 土屋 貴紀さん
(中)ヒューマン&カルチャー本部 本部長 小野 公輔さん
(右)コーポレートコミュニケーション室 室長 下地 寛也さん
土屋さん:
市場の変化や働き方、学び方の多様化に伴って、弊社の事業環境も大きく変化しています。従来どおりのやり方や既存事業の改善のみでは変化に対応できず、さらなる成長を目指すことが難しい環境でした。特に課題だったのは、新規事業をはじめとする成長へのチャレンジにダイナミックな投資ができておらず、また、人材の育成や配置も追いついていなかったことです。
組織風土自体を抜本的に変えようという声があがりつつも、既存事業のしがらみがあったり事業によって温度感が違ったりしていました。先進的な事業がある一方、保守的な事業もあり、全体にまとまりがない状況でした。
この状況を変えるために、2020年の7月頃に次世代の幹部メンバーを30人ほど集め、中長期の戦略とビジョンを描こうという『CCC※12030プロジェクト』が立ち上がりました。
※1・・・CCCとは「Change・Challenge・Create」を意味する頭文字。
(写真:土屋さん)
(写真:小野さん)
土屋さん:
成長するためには既存事業を伸ばすことも必要ですが、新しい事業を生み出していくことも必要です。では、どのように会社を運営していくことが望ましいのか。ヒントを得るために、とある大手の他社さまが参考にならないか調べたりしました。どのような活力があるからあのように成長を遂げているのか、新事業を数多く生み出すことで会社の運営はどう変わるのかーーーー。
そこで出た草案が、「事業を木の1本1本に見立てて、お客さまのニーズを捉えたさまざまな事業が育っているような状態を目指せないか」という発想です。事業を木に見立てるという発想から議論をスタートして、最終的には「森を育てるような会社になる」という概念でまとめていく形になりました。
小野さん:
今回のプロジェクトメンバーは、コクヨで20年前後、仕事をしてきた経験はあるものの、社内での経験だけで、これからのコクヨの姿を描けるとは思っていません。また、社内のメンバーだけで議論するとなかなか発想も広がりません。
そこで出たのが、以前の仕事でコクヨと接点があった「林(Redesign Work代表:林 宏昌)さんに相談してみるのがいいんじゃないか?」という意見です。林さんには第三者の視点で指摘いただくという役割を期待して、今回のコンサルティング依頼に至りました。
土屋さん:
森を育てるような会社になる、そのために最初に実施したのは、2020年7月、林さんを交えて行った1泊2日のキックオフ合宿です。
まずは、組織風土を変えていくためにも、土台となる企業理念の刷新や弊社の強みの再認識。この2つを議論の末に定義し、明文化しました。
そのうえで、目下の課題であった、成長戦略とグループ運営改革の策定に取組みました。
(写真:下地さん)
下地さん:
成長戦略を立案するうえで、林さんには「世の中の先端企業の取り組みや挑戦レベルはこれくらいですよ」というご指摘をかなりいただきました。そこで初めて、「弊社は全然足りていない」という感覚や他社とのギャップを持てたと感じています。
土屋さん:
プロジェクト自体は、弊社にとって初めて「10年ぐらいの長期視点でプランを立てよう」という挑戦だったこともあり、緻密な議論を重ねました。議論では、「本質はどうなのだろう」とディープダイブするプロセスをかなり重要視しました。
メンバー間で「なぜ?本当に?」と掘り下げる工程に時間をかけ、一見、終わったと感じることももう一度疑って、違う角度から問いを出して「やっぱり違う」ということをまた見つけて……という風に進めていきました。
林さんにはかなり無理をお願いしていたのかもしれないのですが、その場で議論の中身を聞いていただき、その直後に高い視座からコメントをいただいていました。
プロジェクト推進の成果として、2021年2月に長期ビジョンCCC2030の策定をし、対外的な発表を行いました。また、2021年12月には、2024年12月期までの中期経営計画を発表しました。
2030年売上5,000億円実現に向けた成長戦略では、すでに中期経営計画として、2024年12月期までに売上3,600億円を目指して動き出しています。
オフィスのリニューアルや文具のEC展開といった既存事業のバリューアップと拡大、併せて新規事業については、協業で15の事業の立ち上げを目指しています。
出典:日本経済新聞『コクヨ、24年12月期に営業益4割増 新中計』
2030年売上5,000億円を実現するための成長戦略を立案。既存事業のバリューアップと拡大を図るとともに、新規ニーズの事業化も進める。
ヒト・モノ・カネ・情報からなる資産をグループ全体で有効活用するための改革。
(写真:左から 土屋さん 小野さん 下地さん)
下地さん:
林さんは「宿題を渡す」というより、とにかく「全員の視座を高める」ことを言ってくださいます。成果物を出していくというよりも、議論を深めていくというようなプロセスでした。
経験したことがある人は「ここが大事なポイントだ」と言えるけれども、経験していない人にはどこが大事なポイントかが分からない。メンバーだけだと、的外れなことを大事だと思って話してしまうこともありますが、林さんが修正してくださる。
経験したことがあるから気づけるようなことをいっていただけるというのが、一番価値のあるところだったと思います。
土屋さん:
林さんのコメント力のすごいところは、短いなかに具体例が伴っていてとても分かりやすい点です。
小野さん:
私たちが物事を考えるときは、「コクヨのなかだけでなく世の中基準で見たらどうですか」とおっしゃっていたことを覚えています。
また、議論の際も、私たちがリアリティを持って今とのギャップを感じながら議論できるようにリードしていただいたと思います。
土屋さん:
ミーティングにはCEOとCSOが参加しており、それなりの人数で議論をしてきたのですが、やはり経営陣とのコミュニケーションになるとそこで閉じてしまいがちです。林さんにそこを壊していただいたというのも大きかったと思っています。
小野さん:
今回行っているグループ運営改革により、人材に対する考え方についてもあらため、その過程で『20%チャレンジ制度』という制度が生まれました。
社内の“複業”を支援する制度で、具体的には、自分の業務を80%ぐらいに効率化して、浮いた20%をほかの業務に充てるという取組みです。
これまでは、基本的に事業部間をまたぐ異動は無かったのですが、「世の中の変化に合わせて変わるために人の成長を大事にしようとしているのに、社員が自律的に挑戦する機会が少ない固定的な環境や仕組みだけでよいのか?」という論点があがったのです。「新しい事業を生み出そうとしているのだから、もっとチャレンジの機会を作っていきたい」と。
(写真:左から 土屋さん 弊社林 小野さん 下地さん)
20%チャレンジ制度の制定により、例えば営業の人がマーケティングの仕事をしてみたり、採用の仕事をしてみたりといったことができるようになりました。部署が求人を出して、希望者が手を挙げて挑戦するという流れなのですがとても好評です。今は2ターム目くらいなのですが、毎年50~60人くらいが手を挙げてくれています。
就職活動をしている学生さんからこの制度について質問されることもあり、採用にもよい効果が出始めています。
小野さん:
今回のプロジェクトでは、世の中が変わっていくことに合わせて事業や運営の在り方を変えていくという考え方の軸をみんなで決めていったように思います。
このプロジェクトで一連を体感したことによって、常に世の中に合わせて、変えていく必要があれば変わっていける集団になる準備運動ができたのではないかと感じます。
土屋さん:
変わっていくのは一部の積極的な社員だけだ、とならないことも重要だと考えています。
今は計画を練りあげている段階ですが、「森を育てるような会社になる」というやや抽象的だった概念が具体的になりつつあります。これからはワークスタイルとライフスタイルを提案する会社に変わっていくというメッセージを強く出して、全社員を巻き込んで変革を進めていきたいです。
また、新しい取り組みにチャレンジしようにも、なかなか異動が難しい場合もあるため、その点を解決できるとプロジェクトが加速するのではと思っています。
土屋さん:
林さんのコンサルティングは、視座の高い発言を的確にいただけることが一番の価値だと思います。次に活力です。また、実際にアクセラレーションプログラムにもお呼びいただきとても助かりました。
今後については、今まさに進行中ですが、新規事業をどう立ち上げていくのかについてご支援をいただければと思います。
小野さん:
初めて議論するテーマの場合は抽象的になりがちですが、「要はこういうことではないか?」とポイントを示唆していただけたことが助かりました。
また、外の視点やレベル感を議論のなかに提供していただけたのもとてもありがたかったです。
今後はコクヨという場所を使ってどんどん楽しく仕事をして、自分のキャリアを広げたり、挑戦できる組織にしていきたいです。林さんのご経験やアイデアを掛け合わせながら進めていけたらと思います。
下地さん:
林さんは経験されたコンサルタントだということがポイントだと思います。コンサルタントのなかにはセールスが上手でも事例を提示できない方もいらっしゃいます。一方、林さんのコンサルティングは、林さん自身が経験しているからこそ理屈ではなく地に足の着いた納得感あります。
今後はプロジェクトもより具体的な内容になってくると思いますので、進めるうえでの思考シミュレーションや、その時間の圧縮、思考の幅の広がりなどをサポートしていただければと思います。
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