株式会社電通デジタル コーポレート部門 総務部長 飯野 将志さん
きっかけは2018年の秋頃ですね。当時、弊社では事業の成長とともに社員数がすごく増えており、「人が増えたらオフィスを増やす」といった対応を行っていました。
一方でその頃はオフィスの空室率が低いという状況もあり、次第に「床が足りない」という課題に直面する事態に。そこで、当時の副社長が「人が増えたらオフィスを増やす、このスパイラルから脱しよう」ということを掲げ、働き方そのものを変える取組みを立ち上げました。
とはいえ私自身、「働き方を変える」という取組みは経験が浅かったこともあり、社内でブレインストーミングを行った結果、外部の会社にコンサルティングを依頼しようという話になったのです。
コンサルティングを依頼するにあたっては、Redesign Workさんを含め6社にお話を伺ったのですが、Redesign Workさんへ依頼する決め手となったのは、林(Redesign Work代表:林 宏昌)さんの「あるべき会社の姿を定め、それを実現するためにはどういう働き方が必要か」という提案でした。
最終的にオフィスは変える予定ではあったものの、弊社の要望は「一度その課題は横において、まずはしっかりとあるべき姿を定めたい」。そこにマッチしたのが林さんだけでした。
もともと、ある情報メディアで林さんのインタビュー記事を読ませていただいたことがあったんです。記事のなかで、林さんは『働き方改革ならぬ「働き方開発」』と言われていて、当初から林さんの考え方に共感していたというのもあります。
出典:WORKSIGHT『働き方のリデザインで「忖度レス」を実現、イノベーション創出へ』
最初に議論して決めてしまうのではなく、いったん試してみる、間違っていたらまた試してみるーーーまさに開発手法です、というお話を実際に伺って、その場にいた全員が満場一致でRedesign Workさんに決めました。
取組みの開始は2019年2月。最初に行ったのはトップインタビューです。
2~4月の3ヶ月で、社長をはじめ各部門長以上に林さんにインタビューをしてもらい、根幹となる「私たちが目指す働き方」を模索しました。
そして、それを実現するためには何が必要なのか、何を試せばよいのかという開発のテーマとして候補に挙げられたのが、リモートワークの導入やクライアント常駐の拡大でした。このうち、弊社主導で進められるリモートワークの導入から試すことにしました。
「2020年の夏には全社員がリモートワークをできる状態をつくろう」というゴールを目指して、2019年の夏に1回目のリモートワークに向けたPoC(Proof of Concept:ポック/ピー・オー・シー)※1を実施。
当時はABW(Activity Based Working:エー・ビー・ダブリュー)※2という言葉の意味を知っている方がまだ少ない時期でしたので、社内で理解を得る・浸透させることへの苦労もありましたが、まずは「参加できる人だけで構わない」というスタンスにして、各部門にPoC参加者を出してもらいました。最初の母集団は約30名、管理職クラスが中心。2回目は、参加者の範囲を拡大して約180名での実施でした。
2回目のPoCが終わる直前に新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の流行が始まったのですが、2度のPoCにおいて、勤怠管理などの「制度」、VPN環境などの「IT」、シェアオフィス活用などの「オフィス」について、ある程度試していたため、コロナ対策としてリモートワークを基本とする業務体制へ移行することがスムーズに行えたのは大きかったです。そういう意味でも本当にやって良かったと思います。
※1・・・PoC:新しいアイデアや概念、プロジェクトなどが実現可能か検証すること
※2・・・ABW:仕事の内容によって時間や場所を選択できる働き方のこと
これまでの取組みを経て、弊社は目指す働き方を“Performance Based Working”と定めました。「組織パフォーマンスを最大化して目的を最短距離で達成する働き方」です。
ただし、これを実現するためにはマネジメントの成長が欠かせません。林さんとはマネジメントガイドラインや若手マネージャー向けガイドブックの作成、課題整理ワークショップの実施のほか、社内向けの事例紹介記事の作成なども行いました。このような取組みができたのも、働き方を変えることやマネジメントの重要性に気づき、備えることができたためです。今後はこれらをより良く回すために洗練させていきたいと考えています。
オフィスも、新しい働き方にフィットさせるために準備中です。設計は完了しており、年始(2022年1月)から、既存のオフィスをリノベーションした新しいオフィスの稼働を予定しています。
最近では、「ワーク・ライフ・バランス」ではなく「ワーク・イン・ライフ」というようになってきています。個々人が思い描くライフスタイルや、その一部であるワークスタイルがある一方で、会社が社員に求めるワークスタイルもあって然るべきで、ただ、その2つが完全に一致することはありません。ですが、会社が「制度」「IT」「オフィス」などにおいてより多くの選択肢を用意することで、一致させることはできなくても、理想のワークスタイルに少しでも近づけることできて、それが社員の健やかさや心地良さにつながり良い結果につながると考えています。
現在、リモートワーク・在宅勤務・オフィス勤務などの選択肢を増やすことができているので、あとは社員が自ら考え、選択できるかにかかっています。組織の采配のもと最適解を選択して、自身が「こういう風に働きたい」と考えるワークスタイルに合っていたら良いなと考えています。
林さんは、一人称が「僕ら」なので、「ワンチームで取り組んでいる」という実感がありました。このほか「すてき」「感謝」などのフレーズをよく使われていたことにも好感を持てました。
そういった部分も含めて「この人に頼んでよかった」と思えましたし、林さんとワンチームでプロジェクトを進行できたおかげで、今の電通デジタルがこのような状況にあると思います。本当に感謝しかないです。
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